AI処理を担うサーバでは、消費電力の増大と同時により効率的に熱を取り除く手法が求められている。それはGPUのような大きな熱源だけではなく、周辺部品にも及び始めている。それを前提にした新たなSSDを、キオクシアが発表した。
AI(人工知能)の処理を担うサーバでは、並列計算性能の高い「GPU」やAI処理に特化した演算装置を搭載する。AIサーバの高性能化、高密度化に伴って消費電力は増加傾向にあり、それに応じて発熱量も増大している。
必要な電力をいかに確保するかも求められるが、それと同時に、発生する熱をいかに効率的に処理するかも大きな課題になっている。そこで、液体を媒体として熱を取り除く「液冷」技術が、特に熱を発するコンポーネントを中心に使われるようになっている。キオクシアが開発した「SSD」の新たなモデルも、そうした動きを反映したものだ。
キオクシアは2026年7月29日、データセンター向けのNVMe接続SSD「KIOXIA NX1シリーズ」を開発し、一部のハイパースケール顧客向けにサンプル出荷を開始したと発表した。これは同社が、米国で2026年8月4〜6日に開催された「FMS: the Future of Memory and Storage」で展示したものだ。
NX1シリーズは、同社のデータセンター向けSSD「KIOXIA XDシリーズ」の後継に当たる製品。ホストとの接続インタフェースには「PCIe 5.0」を採用する。
新シリーズの最大の特徴は、キオクシアのSSDとしては初めて「直接液冷」(DLC:Direct Liquid Cooling)に対応したことだと言える。直接液冷は、発熱する部品に「コールドプレート」と呼ばれる冷却部品を取り付け、その内部に冷却液を流して熱を取り除く。
NX1シリーズでは、「E1.S」フォームファクターのうち、厚さ9.5ミリのモデルがコールドプレートを使った直接液冷と空冷の両方に対応。厚さ15ミリのモデルは空冷のみに対応する。
SSDの液冷対応の先行例としては、企業向けSSDを手掛けるSolidigmが開発した製品がある。同社は2025年、PCIe 5.0対応のSSD「D7-PS1010」のE1.Sモデルをコールドプレートで直接冷却する仕組みを発表した。
こうした動きの背景にあるのが、AIサーバ全体で熱処理の設計を考えなければならなくなっていることだ。GPUやCPUといった大きな熱源だけでなく、SSDを含む周辺部品にも効率的な放熱が求められるようになっている。Solidigmは、AIサーバの高性能化と液冷化を受けて、SSDにも高性能化が求められ、さらに冷却方法の変更も迫られていると指摘している。
SSDの冷却に変化が求められている理由は2つ考えられる。一つは、GPUの処理性能が向上すれば、データ処理のボトルネックを生まないためにストレージにもより高い読み書き性能が求められ、性能向上に伴って消費電力や発熱も増えることだ。
もう一つは、GPUやCPUの液冷化によって、サーバ全体の冷却方式が変わりつつあることだ。GPUやCPUを液冷すれば、それらを冷やすためにファンで大量の空気を送り込む必要性は低下する。一方で空気の通り道を確保するという設計上の制約が小さくなる半面、GPUやCPUほどではないにせよ、SSDが発する熱をどう処理するかを別途考えなければならない。そうした中で浮上してきているのが、SSD自体もコールドプレートで直接冷却するという考え方だ。
AI処理を前提にしたストレージの高性能化という点では、実際、KIOXIA NX1シリーズにしても前世代からその性能は向上している。前世代の「KIOXIA XD8シリーズ」と比較して、KIOXIA NX1シリーズのシーケンシャルライト性能は最大約38%、ランダムライト性能は最大約20%向上した。独自開発の次世代コントローラーも搭載し、高性能化だけでなく電力効率の向上も図っている。
なおKIOXIA NX1シリーズのNAND型フラッシュメモリには、1つのメモリセルに3bitを格納する「TLC」(トリプルレベルセル)方式の第8世代3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」を採用している。容量は1.92TB(テラバイト)から15.36TBまでを用意する。
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