東京電力エナジーパートナー、Amazon Connect Customerで「育てる」AIコンタクトセンターを構築――「クラウド電話」で音声系はユーザー主体の時代に羽ばたけ!ネットワークエンジニア(104)(1/2 ページ)

東京電力グループで電力・ガス小売に関する事業を担う東京電力エナジーパートナーは、カスタマーエクスペリエンス(CX)と業務効率の向上を図るため、クラウド型のAIコンタクトセンターを構築した。

» 2026年08月31日 05時00分 公開
[松田次博@IT]

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 かつてコンタクトセンターは「PBX」(Private Branch Exchange:構内交換機)を使ってオンプレミスで構築されるのが一般的で、数千席という大規模なものも運用されていた。しかし、ハードウェア依存の高いPBXベースのシステムは拡張性が乏しい。通話録音するにはそのための「箱」(サーバ)を追加し、録音した通話をテキスト化するにはさらに別の箱を追加する。機能を追加するたびに箱が増え、費用は著しく高く、機能は固定されていて進化しない。EOL(保守期限切れ)が来るたびに莫大(ばくだい)な費用をかけてシステムを更新せねばならない。

 そんなオンプレミス型の運用に苦労してきた企業はハードウェアに依存せず、EOLもなく、機能が進化し続けるクラウド型コンタクトセンターへ次々と移行している。クラウド型コンタクトセンターには生成AIが組み込まれており、急速に進化するその性能を生かすために、これまで以上に拡張性と柔軟性が求められている。

 2025年12月、東京電力エナジーパートナー(以下、TEPCO EP)は既存のオンプレミス型のシステムからクラウド型コンタクトセンターサービス「Amazon Connect Customer」を使ったAIコンタクトセンターに切り替えた。その目的や特徴を同社サービスソリューション事業部 副部長 今野拓也氏に取材させていただいた。

コンタクトセンターの発展計画

 TEPCO EPのコンタクトセンターは全国に20数カ所あり、ブースの数は2000席以上、オペレーターは3000人以上の規模だ。顧客との接点はデジタルチャネルの比率を高めているが、現在も電話が約40%を占めている。年間約600万件の電話を受けるコンタクトセンターは重要なチャネルだ。TEPCO EPではCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上と、オペレーターの生産性向上のために、図1の発展計画に沿ってコンタクトセンターの高度化を図っている。

画像 図1 コンタクトセンターの発展計画(TEPCO EP社発表資料より引用)

 2019年から2023年には数カ所のコンタクトセンターにAmazon Connect Customerを導入し、ボイスボットや音声テキスト化などの機能を使い、クラウド型コンタクトセンターのPoC(概念実証)と実運用展開を行った。

 2024年12月にはコンタクトセンターを革新するプロジェクト、「SEEDS」(Smart Engagement and Efficient Data System)のPhase1がスタートした。Phase1の目的はオンプレミスで運用していた18拠点のPBXが保守期限切れになるのを契機にクラウド型コンタクトセンターへ更改することと、業務効率化(オペレーターの応対後の処理負荷や管理者業務の軽減)のために生成AIを導入することだ。

 今野氏によると「クラウド型コンタクトセンターへの全面更改に向けてはAmazon Connect Customer以外のクラウド型コンタクトセンターも検討したが、数拠点でPoCから実際の運用実績を積んでいたこと、TEPCO EPにとって過不足なく機能がそろっていること、AI活用はじめ柔軟なカスタマイズができること、の3つの理由でAmazon Connect Customerを選択した」ということだ。

 Phase1では要件整理と設計開発を約10カ月、拠点導入を約3カ月で行い、2025年12月末に18拠点の切り替えが完了した。短期間で導入できたのはできるだけ標準機能を使いスクラッチ開発を最小限にしたこと、生成AIやオペレーター画面のチューニングは早期から実際に使いながら精度を高める方法を取ったことが効いている。Phase1で実現した機能については後述する。

 Phase2は2026年から検討が始まっており、「オペレーター自己完結化」を目的としている。「自己完結」とは顧客からの用件を「保留」したり、管理者にエスカレーションしたりすることなく受電したオペレーターが対応をスムーズに完結することだ。そのため、用件とオペレータースキルのミスマッチを引き起こしやすいIVR(Interactive Voice Response:自動音声による電話転送先の選択)を廃止し、エージェントAIが顧客の会話を理解して適切なオペレーターに受電させる。また、顧客とオペレーターの会話内容をリアルタイムに分析し、関連するナレッジや手続き情報を表示する。オペレーターの業務が効率化されるだけでなく、的確な対応を短時間で行うことでCXの向上が期待できる。

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