HDDは「古いほど壊れる」とも限らない? モデル別の監視で見えた“故障要因”長く使い続けるリスクをどう見る?

HDDは長く使うほど故障しやすくなるのか。Backblazeが34万台超のHDDを対象にした2026年第1四半期のドライブ統計を公開した。長期間使われているHDDから新たに導入された大容量HDDまで、その故障率を分析すると、HDDの故障要因を巡る興味深い実態が見えてきた。

» 2026年09月02日 11時00分 公開
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 クラウドストレージを提供するBackblazeは2026年7月9日(米国時間)、自社で運用するHDDを対象にした四半期レポート「Q1 2026 Drive Stats」を公開した。2026年3月末時点で34万台超のHDDを監視しており、長期間使われているHDDや、新たに投入されたHDDを含め、その故障状況を明らかにしている。

 分析データからは、HDDが「どれくらい古くなれば壊れるのか」といった使用期間と故障率の関係だけでなく、20TB以上など大容量化が進むHDDの故障状況や、故障と運用方法との関係も浮かび上がった。

「HDDは古いほど壊れる」とも限らない? モデル別の監視から分析

 2026年1月1日から3月31日を対象にした集計では、故障台数は1030台で、年間故障率(AFR:Annualized Failure Rate)は1.24%だった。前四半期からは上昇したものの、前年同期からは低下している。

 モデル別に見ると、HDDの使用期間が長くなれば一律に故障率が高くなる、という単純な結果にはなっていない。

 四半期中に故障が1台も発生しなかったのは3モデルあった。以下の通りだ。

  • HGST製「HMS5C4040BLE640」(4TB)
  • HGST製「HUH728080ALE600」(8TB)
  • Seagate製「ST16000NM002J」(16TB)

 このうちHMS5C4040BLE640の平均使用期間は106.1カ月(約8年10カ月)、HUH728080ALE600は93カ月(約7年9カ月)に達している。それでも2026年第1四半期には故障が発生しなかった。

 一方、比較的新しいHDDでも故障は発生している。例えばSeagate Technology製「ST16000NM000J」(16TB)は平均使用期間17カ月、稼働台数129台で、1台が故障したことでAFRは3.61%となった。ただし、Backblazeも指摘するように、稼働台数が少ないモデルでは1台の故障がAFRを大きく押し上げるため、単純な比較には注意が必要だ。

2026年第1四半期のHDDモデル別故障率
項目メーカー モデル 容量 台数 平均使用期間 ドライブ日数 故障数 AFR
HGST HMS5C4040BLE640 4TB 186台 106.1カ月 1万5858日 0台 0.00%
HGST HUH728080ALE600 8TB 1026台 93.0カ月 8万6921日 0台 0.00%
HGST HUH721212ALE600 12TB 2608台 75.4カ月 23万4350日 8台 1.25%
HGST HUH721212ALE604 12TB 1万3277台 56.5カ月 118万3774日 86台 2.65%
HGST HUH721212ALN604 12TB 9780台 80.9カ月 87万252日 95台 3.98%
Seagate ST8000DM002 8TB 8910台 112.3カ月 63万9473日 25台 1.43%
Seagate ST8000NM000A 8TB 247台 37.9カ月 2万1552日 1台 1.69%
Seagate ST8000NM0055 8TB 1万3232台 101.5カ月 117万6619日 39台 1.21%
Seagate ST10000NM0086 10TB 981台 98.3カ月 8万6667日 11台 4.63%
Seagate ST12000NM0007 12TB 983台 75.8カ月 8万7389日 11台 4.59%
Seagate ST12000NM0008 12TB 1万8650台 70.7カ月 166万4558日 129台 2.83%
Seagate ST12000NM000J 12TB 1087台 19.0カ月 9万6887日 1台 0.38%
Seagate ST12000NM001G 12TB 1万3216台 60.7カ月 118万5545日 33台 1.02%
Seagate ST14000NM000J 14TB 433台 16.2カ月 3万7258日 1台 0.98%
Seagate ST14000NM001G 14TB 1万519台 60.3カ月 94万4400日 21台 0.81%
Seagate ST14000NM0138 14TB 1251台 62.6カ月 11万1709日 15台 4.90%
Seagate ST16000NM000J 16TB 129台 17.0カ月 1万117日 1台 3.61%
Seagate ST16000NM001G 16TB 3万4729台 41.2カ月 309万8105日 44台 0.52%
Seagate ST16000NM002J 16TB 466台 38.8カ月 4万1931日 0台 0.00%
Seagate ST24000NM002H 24TB 9605台 9.3カ月 82万90日 74台 3.29%
Toshiba MG07ACA14TA 14TB 3万7263台 64.1カ月 334万3724日 94台 1.03%
Toshiba MG07ACA14TEY 14TB 996台 39.8カ月 8万8602日 5台 2.06%
Toshiba MG08ACA16TA 16TB 4万36台 30.7カ月 354万8250日 102台 1.05%
Toshiba MG08ACA16TE 16TB 6264台 48.9カ月 55万3878日 21台 1.38%
Toshiba MG08ACA16TEY 16TB 4885台 50.5カ月 43万5063日 26台 2.18%
Toshiba MG09ACA16TE 16TB 506台 6.6カ月 3万6988日 1台 0.99%
Toshiba MG10ACA20TE 20TB 2万451台 11.6カ月 166万5263日 42台 0.92%
Toshiba MG11ACA24TE 24TB 7203台 4.0カ月 49万5387日 3台 0.22%
WDC WUH721414ALE6L4 14TB 8640台 61.3カ月 77万6557日 7台 0.33%
WDC WUH721816ALE6L0 16TB 2994台 50.4カ月 26万7868日 24台 3.27%
WDC WUH721816ALE6L4 16TB 2万6801台 34.6カ月 240万2732日 64台 0.97%
WDC WUH722222ALE6L4 22TB 4万5638台 16.1カ月 399万2942日 42台 0.38%
WDC WUH722626ALE6L4 26TB 3604台 2.5カ月 18万2471日 4台 0.80%
合計 34万1263台 3020万3180日 1030台 1.24%
※集計期間は2026年1月1日〜3月31日。2026年3月31日時点で稼働台数が100台超、ドライブ日数が1万日超のHDDモデルを対象とした。

20TB超の大容量HDD、故障率は0.85%

 HDDの大容量化も進んでいる。Backblazeが前四半期に導入した1万220台のうち、9404台が20TBを超えるHDDだった。これらの大容量HDD群のAFRは0.85%で、2026年第1四半期の全体のAFRである1.24%を下回った。

2025年第1四半期〜2026年第1四半期のAFR(年間故障率)の推移 2025年第1四半期〜2026年第1四半期のAFR(年間故障率)の推移(出典:Backblaze)

 ただし、これらの大容量HDDは導入からの期間がまだ短い。現時点の数字だけを基に「大容量HDDほど故障しにくい」と判断することはできない。

生涯故障率は1.39% 長期データでも「使用期間=故障率」ではない

 運用開始からの全期間を対象とした「生涯AFR(年間故障率)」は1.39%だった。今回新たに生涯AFRの集計対象となったのは、Toshiba製「MG09ACA16TE」(16TB)、Western Digital(WDC)製「WUH722222ALE6L4」(22TB)、「WUH722626ALE6L4」(26TB)の3モデルだった。

 モデル別のデータを見ると、平均使用期間が長いほど生涯AFRが高くなるという単純な傾向にはなっていない。例えば、平均使用期間が約89カ月のHGST製8TBモデル「HUH728080ALE600」の生涯AFRは1.40%なのに対し、約54カ月のSeagate製14TBモデル「ST14000NM0138」は5%を超えている。一方、平均使用期間が60カ月前後に達するモデルでも、生涯AFRが1%を下回るものがある。

 HDDの故障率に関しては、使用期間だけではなく、モデルや運用条件など、他の要因も含めて見る必要がある。

Backblazeの生涯ハードドライブ故障率
メーカー モデル 容量 台数 平均使用期間 ドライブ日数 故障数 生涯AFR
HGST HUH728080ALE600 8TB 1026台 87.8カ月 325万2052日 125台 1.40%
HGST HUH721212ALE600 12TB 2608台 74.5カ月 611万5413日 104台 0.62%
HGST HUH721212ALE604 12TB 1万3277台 55.0カ月 2401万8962日 1114台 1.69%
HGST HUH721212ALN604 12TB 9780台 77.4カ月 2691万4795日 1678台 2.28%
Seagate ST8000DM002 8TB 8910台 105.5カ月 3311万5836日 1380台 1.52%
Seagate ST8000NM0055 8TB 1万3232台 94.6カ月 4513万1414日 2404台 1.94%
Seagate ST10000NM0086 10TB 981台 89.9カ月 356万6716日 306台 3.13%
Seagate ST12000NM0007 12TB 983台 31.6カ月 3732万5724日 2297台 2.25%
Seagate ST12000NM0008 12TB 1万8650台 67.2カ月 4301万2820日 2466台 2.09%
Seagate ST12000NM000J 12TB 1087台 18.6カ月 63万2857日 22台 1.27%
Seagate ST12000NM001G 12TB 1万3216台 59.5カ月 2510万6715日 679台 0.99%
Seagate ST14000NM001G 14TB 1万519台 58.4カ月 2002万5909日 756台 1.38%
Seagate ST14000NM0138 14TB 1251台 53.8カ月 276万7654日 438台 5.78%
Seagate ST16000NM001G 16TB 3万4729台 40.7カ月 4406万5062日 820台 0.68%
Seagate ST24000NM002H 24TB 9605台 9.3カ月 277万9100日 220台 2.89%
Toshiba MG07ACA14TA 14TB 3万7263台 62.6カ月 7501万8084日 2114台 1.03%
Toshiba MG07ACA14TEY 14TB 996台 38.4カ月 123万5801日 58台 1.71%
Toshiba MG08ACA16TA 16TB 4万36台 30.4カ月 3790万6446日 1113台 1.07%
Toshiba MG08ACA16TE 16TB 6264台 47.6カ月 954万4691日 325台 1.24%
Toshiba MG08ACA16TEY 16TB 4885台 49.4カ月 803万5780日 519台 2.36%
Toshiba MG09ACA16TE 16TB 506台 6.5カ月 10万1383日 4台 1.44%
Toshiba MG10ACA20TE 20TB 2万451台 11.5カ月 720万6903日 137台 0.69%
Toshiba MG11ACA24TE 24TB 7203台 4.0カ月 86万9474日 10台 0.42%
WDC WUH721414ALE6L4 14TB 8640台 60.6カ月 1634万4031日 231台 0.52%
WDC WUH721816ALE6L0 16TB 2994台 50.0カ月 466万5417日 133台 1.04%
WDC WUH721816ALE6L4 16TB 2万6801台 34.4カ月 2846万3214日 394台 0.51%
WDC WUH722222ALE6L4 22TB 4万5638台 16.1カ月 2247万2050日 360台 0.58%
WDC WUH722626ALE6L4 26TB 3604台 2.5カ月 27万4161日 5台 0.67%
合計 5億2996万8464日 2万212台 1.39%
※2026年3月31日時点で、稼働台数が500台超、累計ドライブ日数が10万日超のHDDモデルが対象。

故障を左右した「電源のオン/オフ」

 今回の分析では、HDDの使用年数だけでは説明できない故障も確認された。

 一部のドライブ群では、「書き込み時に影響する問題」と「電源のオン/オフ時に影響する問題」という2種類の機械的な不具合が発生していた。さらに製造年によって、どちらか一方、両方、あるいはいずれの問題も発生しないといった違いがあり、原因の特定を難しくしていた。

 Backblazeが故障の増加を分析したところ、後者の「電源のオン/オフ時に影響する問題」と故障との間に相関があることが分かった。そこで、該当するドライブを含む「Vault」(ドライブの保管・運用単位)の電源をオン/オフする頻度を減らした。問題が疑われるVaultについては、新たなデータの書き込み先として使用せず、予備として運用する措置も取った。

 こうした対応によって、問題のあるドライブを直ちに全て使用停止にするのではなく、リスクを抑えながら別の用途で利用できるようにした。

 今回の分析が示すことの一つは、HDDの故障を使用年数だけで判断することはできないということだ。ドライブ固有の問題に加え、電源のオン/オフといった運用条件が故障と関係する場合もある。Backblazeは、こうした故障リスクを把握し、運用方法を変えることでリスクを管理している。

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