茨城県鹿嶋市は「公式Web×Claude」で市民対応をどう変えた? Claude Codeで内製化も人口減少の中「生成AIを使わない手はない」(2/2 ページ)

» 2026年09月03日 05時00分 公開
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構築したAIチャットボットのフロー「メンテナンスで負担が増えれば本末転倒」

 業務負担を減らすためにAIを導入しても、そのシステムの構築や運用、回答に使うデータのメンテナンスなどにかかる手間で負担が増大してしまえば本末転倒だ。鹿嶋市の取り組みでは、いかに構築や運用にかかる負担を抑えるかという点も重視しているという。

セルプロモートの谷内明雄氏

 そのための工夫の一つが、既存のWebサイトやサービスを活用するなどして、AIチャットボットのための仕組みやデータの整備にかかる負担を抑制している点だ。前述の通り、回答の基になる情報には、鹿嶋市の公式Webサイトや子育て支援などのサブサイトで公開済みの情報を利用している。つまり、AIチャットボット専用のFAQや辞書を新たに整備するのではなく、既存のWebサイトを使うことで開発の工数・時間を短縮した格好だ。Webサイトをクローリングして取得した情報は、RAGで参照するナレッジとしてVoiceflowに登録する仕組みとなっている。「バックエンドで独自に開発した部分は1週間ほどで、全体を通しても開発期間は1カ月以内で済んでいる」と、セルプロモートの谷内明雄氏(取締役COO)は説明する。

鹿嶋市のAIチャットボットのフロー 鹿嶋市のAIチャットボットのフロー(提供:セルプロモート)

 なお、「対象となるWebページを週1回クローリングし、取得した情報をチャンク化してRAG(検索拡張生成)で参照する仕組み」と前述したが、週1回という更新頻度も「Webサイトの更新内容を取りこぼす可能性が低いと判断した」ためだという。また、Webサイトを更新すれば、その情報はAIチャットボット側にも反映されるため、職員側でAIチャットボット用の情報を更新する必要がなく、運用負荷を抑えられる。

 住民向けのサービスである以上、回答の正確性も欠かせない。そこで重視した観点の一つがLLMの選定だ。「GPT」や「Gemini」「Claude」などを比較。その中でClaudeを採用した理由について「日本語の長文を読ませた際にハルシネーションが少なく、定型的な質問に対して必要な回答精度を得られた」と谷内氏は説明する。

 回答を生成する際には、回答だけでなく、元情報が記載されているホームページURLも併せて提示。そのURLをクリックすることで、詳しい情報を利用者が自身で探せるようにしている。

「Claude Code」で庁内業務も省力化へ

 鹿嶋市が生成AIに期待しているのは、市民からの問い合わせ対応の効率化だけではない。限られた職員で行政サービスを維持していくため、今後は生成AIを庁内業務そのものの省力化や内製化にも活用していく考えだ。

 その取り組みにも一部では着手しており、同市では2026年8月にAIコーディングエージェント「Claude Code」を使った行政事務改善の検証を開始した。「Microsoft Excel」の集計やデータの照合・突合、データ整理、定型資料の作成などを対象に、生成AIによってどこまで業務を省力化、標準化、内製化できるかを検証する。

ネットワーク分離の課題も

 一方、生成AIの取り組みを進める上では自治体ならではの課題もある。庁内ネットワークが分離されているため、インターネット上の生成AIサービスをそのまま全ての業務で利用できるわけではない。鹿嶋市では2026年8月現在、マイナンバー利用事務系、LGWAN接続系、インターネット接続系の3層を完全に分離したαモデルを採用している。

 こうした制約がある中でも、業務で利用するクラウドサービスが増えていることを踏まえ、鹿嶋市では必要なWebサービスへの接続を段階的に広げることを検討している。「ローカルブレークアウトのような形で、業務環境から必要なWeb環境に接続しやすくする仕組みについても、市のセキュリティポリシーで許容できるものについては検討していく必要があると考えている」と小堀氏は話す。


 生成AIを巡る技術の進化は速い。鹿嶋市の取り組みの背景にも、「AIの発展速度は尋常ではなく、乗り遅れると、その分効果を出すのも遅れてしまう」との危機感がある。既に市民からの問い合わせに対応するAIチャットボットの本格運用、Claude Codeを使った行政事務改善の検証にも乗り出しているところだが、生成AIを行政業務に取り入れるためのノウハウやスキルが、自治体内部に十分蓄積されているわけではない。

 民間企業の知見を取り入れながらも、実際の業務で経験を重ね、今後は自ら生成AIを活用するためのノウハウを蓄積していくことも将来に向けては重要になる。将来的な職員不足を見据えながら、できるところから生成AIの適用範囲を広げていく鹿嶋市の取り組みは、人手不足や業務効率化の課題を抱える他の自治体や企業にとっても、生成AI活用を進める上で参考になる部分があるだろう。

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