DXERは、社内IT環境と従業員の成果に関する実態調査の結果を発表した。動作の遅い端末やツール不足により、従業員1人当たり年間147時間が失われているという。
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DXERは2026年8月19日、「社内IT環境と従業員の成果に関する実態調査」の結果を発表した。同調査は、従業員10人以上でAI・ITを日常的に利用している企業の経営者・役員300人と正社員1000人を対象に、2026年7月21〜22日にインターネット調査で実施したもの。
調査によると、動作の遅い端末やツール不足といった社内IT環境の問題により、従業員1人当たり年間147時間(約18営業日)が失われていることが分かった。人件費に換算すると1人当たり年間約44万円、従業員100人の企業では年間約4400万円に相当するという(いずれも回答者の自己申告に基づく推計値)。
DXERは調査の背景について「生成AIやAIエージェントの導入が加速する一方で、その土台となる社内IT環境の実態が数字で語られる機会はほとんどなかった」と説明する。
「社内IT環境の問題はシステム障害のようにはっきりとは表面化せず、『使いたいツールが導入されない』『PCの動作が遅い』『ヘルプデスクの返答に時間がかかる』といった小さな停滞が日々積み重なるため、業務の成果への影響も見えにくい」と指摘している。
「社内IT環境の問題で、週にどのくらいの時間ロスが発生しているか」という質問に対し、57.4%が週1時間以上、38.0%が週3時間以上と回答した。平均は週2.8時間で、年間換算では約147時間になる。時給3000円で換算すると1人当たり年間約44万円だ。
週6時間以上の時間ロスがある従業員のうち、69.3%が業務成果を損なっていると実感していた。従業員全体では29.9%で、時間を失っている層では実感が2倍以上に跳ね上がる。
「社内IT環境の改善を、会社や上司に要望したいと思うか」への回答では、改善が必要だと感じている従業員は44.2%で、そのうち62.4%は要望を上げていなかった。要望を上げていない従業員は、全体では66.1%に上る。
「したいと思わない」と答えた385人のうち、56.9%は具体的な困りごとを持っており、41.0%には週1時間以上の時間ロスがあった。不満と明言したのは12.5%にとどまる。「特に困っていない」と回答した309人でも、実際に満足しているのは47.6%だけで、49.8%は「どちらともいえない」と答えている。16.8%には週1時間以上の時間ロスがあった。
社内IT環境の満足度で最大のセグメントは、不満層の23.9%でも満足層の34.7%でもなく、41.4%を占める「どちらともいえない」層だった。DXERは「不満の声がないからといって問題がないとは言い切れない」としている。
一方、社内IT環境の改善について経営側にも判断材料がないことが浮き彫りになった。満足度調査をしていない経営者の62.0%は、自社従業員のIT満足度を「判断できない」と回答した。定期的に調査している経営者では13.5%にとどまる。
経営者の投資優先領域の1位は「AI・自動化ツールの導入」で47.3%、最下位は「ヘルプデスク・ITサポート強化」の8.7%だった。従業員の困りごとの1位は「AI活用が進んでいない」の26.8%だが、その下には運用・体験に関する項目が並ぶ。
運用・体験に関する困りごとを1つ以上抱えている従業員は31.4%だった。この314人は週3時間以上のロスが50.0%(全体38.0%)、成果の損失の実感が44.6%(全体29.9%)と、損失が明確に大きい層でもある。
DXERは「経営者の投資優先領域と従業員の困りごとは選択肢体系が異なるため厳密な比較はできないものの、投資関心の順位付けと課題の所在には方向の不一致が見られる」としている。
「社内IT環境は、就職先や転職先を選ぶ際の重要な基準か」という問いには、従業員全体の48.6%が「そう思う」と回答した。時間ロスが週6時間以上の層では75.9%に達し、ロスがほぼない層の32.4%とは2倍を超える開きがあった。
年代別では、20〜30代が最も時間を失っており、週3時間以上のロスが59.7%を占める。最も声を上げられておらず、「要望したいが、できない」が33.3%だった。社内IT環境を転職先を選ぶ基準にしている割合も56.5%と最も高い。
DXERは同調査から3つの示唆を挙げている。
1つ目は、先進的な投資だけでなく、現在の損失を防ぐIT投資から考える視点だ。
AI・IT投資は「これからいくら使うか」という議論になりがちだが、投資しないことによる損失が1人当たり年間約18営業日ほど発生している可能性が調査で示されている。導入費用だけでなく、現状維持することで失われ続ける時間と人件費も含めて判断する必要があるとしている。
2つ目は、能動的に声を拾うことだ。声が上がるのを待つのではなく、年1〜2回でも設問を固定して聞く仕組みを持つことが出発点になるとする。
3つ目は、AI投資の成果が社内IT環境の整備状況に左右される点だ。従業員の困りごとの1位である「AI活用が進んでいない」を挙げた回答者の67.5%は、それ以外の課題も同時に抱えていた。情報の保管、権限、業務フロー、問い合わせ対応など、「総合的な社内IT環境を整えることが重要だ」としている。
DXERの代表取締役CEO向井拓真氏は、「AI・IT投資というと、新しいツールを導入する話に偏りがちだ。今回の調査から見えてきたのは、投資しないことによるコストが、既に従業員の時間や成果として発生しているという実態だった。その損失は従業員から不満や要望として上がってこず、経営側にも効果を測る仕組みがない。改善の必要性は認識されていても、投資判断の根拠になっていないと考えられる」と述べている。
「最初から完成されたROI(投資対効果)モデルをつくる必要はない。まずは、従業員がどれだけの時間を失っているか、どの業務や部署で問題が起きているか、どのような声が届いていないかを継続的に測ることが第一歩だ」(向井氏)
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