「ネットワークが遅い=帯域不足」「Wi-Fi障害に手動対応」「CLIで問題特定」――その常識はもう古い?ネットワーク運用の“当たり前だったこと”を見直す(1/2 ページ)

「ネットワークが遅い」と言われたら帯域を確認する。「Wi-Fiがつながらない」と言われたら原因を調べる。障害が起きればCLIをたたいて問題を切り分ける――。ネットワーク運用で長く続いてきたこうした“当たり前”は、一部の運用現場では必ずしも常識ではなくなりつつあります。

» 2026年09月23日 08時00分 公開

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 「ネットワークが遅い」「Wi-Fiがつながらない」「Web会議が途切れる」。企業のIT部門やネットワーク担当者にとって、こうした問い合わせは珍しいものではありません。

 問題が起きれば原因を調査し、帯域が足りなければ回線を増強する。無線LANに問題があればアクセスポイント(AP)の設定を調整し、ネットワーク機器に問題がありそうならCLI(コマンドラインインタフェース)を使って状態を確認する。こうした方法で企業ネットワークは運用されてきました。

 しかし、クラウドサービスやWeb会議が日常的に利用され、無線LANにつながる端末も増えています。さらにAIの活用も広がる中、企業ネットワークを流れる通信や、その利用形態は変化しています。

 従来のネットワーク運用の何が変わろうとしているのでしょうか。@ITで紹介した記事を参照しながら考えます。

「遅いなら帯域幅を増やす」だけでは解決しない

 ネットワークが遅ければ、まず「帯域幅(通信路容量)が足りないのではないか」と考えるかもしれません。しかし、ユーザーが感じる「遅さ」の原因は、必ずしも回線の帯域幅にあるとは限りません。

 その問題は以前からありましたが、より顕著になっている背景には、企業におけるネットワーク利用の変化があります。コロナ禍を経てクラウドサービスやWeb会議が定着しましたが、オフィス回帰が進みつつある2026年現在は、多数の従業員がオフィスから同時にクラウドサービスへアクセスするようになっています。

 記事では、例えばオフィスアプリケーションやWeb会議のクラウドサービスを利用する場合、1台の端末が常時20〜100の通信セッション、数百kbps〜数Mbpsの通信を発生させることがある状況を取り上げました。数百〜数千台の端末が一斉に利用すれば、回線だけでなく、通信経路にあるセキュリティ機器などがボトルネックになる可能性もあります。

 ユーザーから見える現象と実際の原因が一致するとは限りません。

 「Web会議が遅い」という問い合わせ一つを取っても、端末の負荷、無線LAN、スイッチやルーター、DNSの応答、セキュリティ機器、インターネット接続、さらにはSaaS側の処理など、原因となり得る場所は多数あります。

 そのため、高速・広帯域な回線を用意するだけではなく、ユーザーからクラウドサービスまでの通信を可視化し、「どこで遅くなっているのか」を把握することが重要になります。必要に応じて通信経路を変えたり、Web会議など遅延の影響を受けやすい通信を優先したりする考え方も必要です。

 クラウドサービスの利用が広がる中、ネットワークの性能だけでなく、アクセス制御にも新たな課題が生まれています。従来のオフィスネットワークでは、「誰がアクセスしているのか」を確認する認証は実装されていても、「その人が何にアクセスできるのか」という認可までは厳密に設定されていないケースがあります。記事では、こうした課題を踏まえ、「ID中心の認証・認可に基づくセキュリティ」の必要性についても取り上げました。

「Wi-Fiが遅い」の問い合わせ、人が毎回対応しなくてもいい?

 原因の切り分けに加えて変わり始めているのが、問題が発生した後の対応です。

 家具小売企業のRoom & Boardは約1100人の従業員を抱え、ショールームや配送センター、倉庫など34拠点を展開しています。一方、ネットワーク担当のエンジニアはわずか3人です。

 同社が目指したのは、ネットワーク担当者が日常的に状態を確認し、その都度判断して設定を変更する作業をできるだけ減らすことでした。

 例えば無線LANでは、周囲の利用状況などに応じたチャネルや電波出力の調整をAIに任せています。以前は、混雑する店舗の無線LANを安定させるため、担当者が設定変更に何時間も費やす場合がありました。

 もう一つ興味深いのが、同社が「mean time to innocence(無実を証明するまでの平均時間)」を重視していることです。

 ユーザーから「Wi-Fiが遅い」と問い合わせがあったからといって、無線LANが原因とは限りません。同社は問題発生時のパケットを自動取得し、APと端末の間だけでなく、APから先の有線区間も確認できるようにしています。これによって「無線LANで問題が起きているのか」「ネットワーク以外に原因があるのか」を迅速に切り分けます。

 一方、何でも自動化できるわけではありません。同社の倉庫では、保管されたマットレスなどが電波を遮っていました。この問題には指向性APを使って通路方向に電波を届かせるという物理的な対策を取っています。

 日常的な調整や分析はできるだけ自動化し、物理環境など人が判断すべき問題に担当者の時間を使う。「Wi-Fiの問題が起きるたびに人が調査、調整する」という運用そのものを減らそうとしている点がポイントです。

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