無線LANを利用する組織において発生しがちな「遅い」「つながらない」といった苦情。家具小売企業の3人のネットワークチームは、細かく介入しない運用としながらも、苦情が発生しにくい環境を実現している。
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無線LANを利用する組織のIT部門では、その運用に関して日常的にさまざまな問題に直面しがちだ。「つながらない」「遅い」といった問い合わせへの対応に加え、原因の切り分けや電波環境の調整など、安定した通信を維持するための作業は少なくない。
家具小売企業Room & Boardも、こうした課題に直面していた。同社は約1100人の従業員を抱え、ショールームや配送センター、倉庫など34拠点を展開する一方、ネットワークを担当するエンジニアはわずか3人だ。
以前は無線LANの安定性に不安を抱え、基本的に有線ネットワークに頼っていた。だが販売担当者がタブレットを利用することなどから、今では無線LANを主要な接続手段としている。その安定利用を支えるために、同チームは頻繁なトラブル対応が発生しにくい利用環境を実現した。
Room & Boardが重視したのは、ネットワーク担当者が日常的に状態を確認し、その都度判断して設定を変更するといった作業をできるだけ減らすことだ。ネットワークの状態をクラウド上で一元的に把握するとともに、一定のルールの下で、無線LANの調整や問題の分析といった作業を自動化している。
具体的には、AIエージェントを使ってネットワーク運用を自動化する「AgenticOps」機能で、AIが実行できる操作の範囲などをあらかじめ設定する。無線LANのチャネルや電波出力の調整には「AI-RRM」(AI強化型無線リソース管理)を利用する。複雑なログの解析にもAI機能を活用する。
ネットワークトラブルが発生した際は、その原因を素早く切り分けることが重要になる。ユーザーから「Wi-Fiが遅い」と問い合わせがあっても、実際には端末やアプリケーションなど、無線LAN以外に原因がある場合もあるからだ。
Room & Boardでは「mean time to innocence」(無実を証明するまでの平均時間)という考え方を重視している。これは問題が発生してから、「ネットワークが原因ではない」と判断できるまでの時間だ。
その判断に、クラウド型ネットワーク管理サービスのダッシュボードを利用している(同社では「Cisco Meraki」を採用)。端末で通信上の問題が発生すると、その時点のパケットを自動的に取得する。無線LANアクセスポイント(以下、AP)と端末の間の無線区間だけでなく、APから先の有線区間のパケットも確認できるため、「無線LANで通信が途切れているのか」「その先のネットワークまでは正常に通信できているのか」といった切り分けができる。
こうしたクラウドベースの管理は、無線LANを導入した後の確認作業にも活用している。Room & Boardでは従来、APを設置した後に担当者が現地でサイトサーベイを実施し、想定通りの通信環境になっているかどうかを確認していた。クラウドベースの管理に切り替えてからは、管理画面からローミングにかかった時間やAP間のハンドオフ(AP間での接続切り替え)、応答時間などを確認することで、接続が不安定な端末や問題が発生している場所を特定している。
無線LANのチャネル(周波数の区分)や電波出力の調整にもAIを活用している。Room & Boardでは以前、混雑する店舗の無線LAN環境を安定させるために、担当者が設定の調整に何時間も費やすことがあった。そこで利用するようになったのがAI-RRMだ。周囲の無線LANの利用状況などに応じて、各APが使用するチャネルや電波出力を自動的に調整する。これによってAPの負荷を抑え、電波出力とチャネルの割り当てのバランスも改善したという。
混雑する時間帯をシステムに学習させ、利用者が多い時間帯に急な設定変更が発生しないようにもしている。ネットワークが安定するまでには数週間かかったものの、その後は安定した状態を維持しているという。
ただし、全ての問題をAIやソフトウェアで解決できたわけではない。倉庫では、高密度に保管されたマットレスなどの商品が電波を遮り、無線LANの通信に影響を与えていた。そこでチームは単純にAPの電波出力を上げるのではなく、特定の方向に電波を飛ばす指向性APに切り替え、約50度の角度を付けて通路方向に電波が届くようにした。
日常的なチャネルや電波出力の調整はAIに任せる一方、建物や什器、商品の配置といった物理的な環境に起因する問題には人が対処する。Room & Boardはこうして人が担う作業を絞り込み、少人数で多数の拠点を運用できる体制を整えている。
同事例についてはCisco Systemsが2026年7月30日(米国時間)、公式ブログで紹介した。
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