マニュアルのないファイルを「だましだまし」運用 6割超が「前任者の謎マクロ・関数」に苦労:「担当者が休むと業務が回らない」 個人の努力や工夫は限界

NTTデータビジネスブレインズは、営業事務担当者221人を対象にExcelやスプレッドシートの属人化に関する調査結果を発表した。誰が作ったか分からないマクロや複雑な関数の解読に苦労した経験を持つ人は6割を超えた。

» 2026年09月29日 11時00分 公開
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 NTTデータビジネスブレインズは2026年8月18日、営業事務における「Microsoft Excel」(以下、Excel)や「Google スプレッドシート」(以下、スプレッドシート)の属人化に関する調査結果を発表した。調査は、営業事務の経験が3年以上ある全国の実務担当者221人を対象に、2026年7月3〜4日にインターネットで実施した自社調査で、有効な回答だけを集計したものだ。

 日常の営業事務作業でExcelやスプレッドシートを使うかを聞いたところ、「ほとんど使用している」(48.4%)「一部は使用している」(43.4%)を合わせて9割を超えた。「使用していない」は8.2%にとどまる。

 見積書・請求書の作成や受発注処理、顧客データの入力・管理といった業務がExcelやスプレッドシートに支えられており、「裏を返せば不具合や属人化が生じると業務全体に影響が及びやすい構造だ」とNTTデータビジネスブレインズは指摘する。

6割超が謎のマクロや複雑な関数の解読に苦労

 現在使用しているファイルで、誰が作ったか分からない謎のマクロや複雑な関数の解読や修正に苦労した経験があるかどうかを聞いた設問では、「たまにある」(52.1%)「よくある」(12.1%)を合わせて64.2%となった。「あまりない」は26.3%、「全くない」は9.5%だった。

 異動や退職で担当者が入れ替わるたびに、誰が何のために組んだのか分からない数式やマクロだけが残り、後任者が手探りで解読することになる。修正すれば動かなくなるかもしれないという恐怖から、誰も手を付けられないまま残り続けるファイルも少なくないという。

謎のマクロや複雑な関数の解読や修正に苦労した経験(提供:NTTデータビジネスブレインズ) 謎のマクロや複雑な関数の解読や修正に苦労した経験(提供:NTTデータビジネスブレインズ)

 前任者が残したマニュアルのないファイルを「だましだまし」使い続けている状況についても、「たまにある」(49.5%)「よくある」(12.6%)を合わせて約6割に上った。

 マニュアルのないファイルは正しい使い方が分からないまま運用されがちで、入力ルールが統一されないまま蓄積されたデータは、後から集計や分析をしようとした際に大きな手直しの負担を生む原因になる。

52.3%が「自分が休むと業務が回らない」と感じる

 特定の業務やファイルの管理が自分または特定の担当者に集中し、その人が休むと業務が回らないと感じるかどうかを聞いた設問では、「時々感じる」(43.7%)「常に感じる」(8.6%)を合わせて52.3%となった。「あまり感じない」は31.5%、「全く感じない」は16.2%だった。

 その人にしか分からないファイルや業務が存在すると、急な休みや退職の際に業務が滞るリスクを常に抱えることになる。属人化は特定の担当者の負担を増やすだけでなく、組織全体の業務継続性を脅かす問題でもあるとしている。

自分または特定の担当者が休むと業務が回らないと感じるか(提供:NTTデータビジネスブレインズ) 自分または特定の担当者が休むと業務が回らないと感じるか(提供:NTTデータビジネスブレインズ)

 より効率的な方法があるはずだと思いながら、日々の定型業務に忙殺されて改善に着手できないジレンマについては、「やや感じる」(56.5%)「強く感じる」(15.5%)を合わせて約7割が抱えていた。

 今のやり方に問題があると気付きながら、改善に着手する時間的・心理的な余裕を持てずにいる状態が続く限り、非効率な業務フローは温存され続ける。

複数人での共有・編集で最も多い不便は「読み取り専用」

 複数人で同じファイルを共有・編集する際に不便に感じること(複数回答)では、「『読み取り専用』になり作業が中断する」(33.2%)が最も多く、「最新版がどれか分からなくなる」(30.6%)「関数が入っているセルがわかりにくい」(28.6%)「コピペで書式が崩れる」(25.0%)が続いた。「特に不便を感じることはない」は15.8%にとどまる。

 同時編集に対応していないファイルでは、誰かが開いている間は他の人が編集できず、作業が止まる。メールやチャットでファイルをやりとりするうちに、どれが最新版か分からない状態に陥ることも珍しくないという。

複数人での共有・編集時に不便に感じること(提供:NTTデータビジネスブレインズ) 複数人での共有・編集時に不便に感じること(提供:NTTデータビジネスブレインズ)

半数超がフリーズや強制終了に時間を奪われる

 データ量が多くファイルが重過ぎることで、フリーズ待機や強制終了からの再起動、やり直しに時間を奪われる頻度を聞いた設問では、「月に数回」(23.7%)、「週に数回」(21.1%)、「ほぼ毎日」(8.8%)を合わせて半数を超えた。

 案件数や取引先が増えるほどファイルサイズは肥大化し、フリーズ待機や再起動によるやり直しは単なる時間のロスにとどまらず、直前まで入力していたデータが失われるリスクも伴う。

 Excelやスプレッドシートの作業が原因で1カ月当たりに発生する残業や持ち帰り作業の時間を聞いた設問では、「発生していない」(43.8%)が最も多かったものの、「1〜5時間未満」(20.8%)、「5〜10時間未満」(18.2%)、「1時間未満」(12.5%)、「10時間以上」(4.7%)を合わせると半数を超えた。

 月に5時間以上を要している層も2割を超えており、定時内に終わらない作業のしわ寄せが担当者個人の負担として蓄積している可能性がある。

 複数のファイルやシステムからデータを手作業でコピペ、転記、集計する作業や、表記ゆれの手直し、壊れた関数の修復、エラーの原因究明に1カ月当たりに費やす時間は、「1〜5時間未満」が28.3%で最も多く、「作業は発生していない」(25.0%)、「1時間未満」(24.5%)、「5〜10時間未満」(17.9%)、「10時間以上」(4.3%)が続いた。

 7割以上が何らかの形でこうした作業に時間を費やしている。分散したデータを人力でつなぎ合わせる作業はミスが起きやすく、原因究明にも時間がかかるため、見えにくいコストとして積み重なっていく。

 NTTデータビジネスブレインズは「誰が作ったか分からない関数やマクロ、マニュアルのないファイルの運用、特定の担当者への業務集中、複数人での共有時の不便さは、いずれも個人の努力や工夫だけでは根本的に解決しづらい構造的な課題だ」と指摘した上で、「改善の必要性を感じながらも着手できないジレンマを多くの担当者が抱えている今こそ、ファイルではなくデータベースとして業務を管理する仕組みへの転換を検討するタイミングだ」と結論付けている。

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