最大12万人が「Claude Cowork」を利用するためのシステムを、2週間で構築したNEC。どのような基準で構築手段を選定し、全社利用に必要なセキュリティやガバナンスをどう確保したのか。
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NECは2026年6月1日、Anthropicのデスクトップアプリケーション「Claude Desktop」に含まれるAIアシスタント機能「Claude Cowork」の本番利用を全社員向けに開始した。最大12万人がClaude Coworkを安全に利用できるシステムを、要件定義から2週間で構築したという。
システム構築では、セキュリティとガバナンスを確保するために、推論処理の実行場所とデータの所在を国内に閉じることを最優先の要件にした。社内で利用するSaaSとClaude Coworkを連携させる際、SaaSによってMCP(Model Context Protocol)やOAuthによる連携機能の実装が異なることから、こうした差異を吸収する仕組みも必要だった。
NECはこうした要件を満たしながら、全社でClaude Coworkを利用できるシステムを短期間で構築した。どのような方式を選び、どう構築したのか。
Claude CoworkのAIモデルによる推論処理について、NECはAmazon Web Services(以下、AWS)の生成AIサービス「Amazon Bedrock」で実行する方式を採用した。この構成について、AWSは「Claude Desktop on Amazon Bedrock」と呼ぶ。
推論には、AWSの日本国内のリージョン間で処理を完結させる構成(JP-CRIS)を採用した。Claude Coworkに入力したプロンプトと、その応答は国内にとどまり、リージョン間の通信もAWSが管理するネットワーク内で完結する。
ユーザー認証には、MicrosoftのID・アクセス管理サービス「Microsoft Entra ID」を使い、AWSのアクセス権限管理サービス「AWS Identity and Access Management」(IAM)による認可処理と組み合わせた。その他、システムには監査証跡を記録する仕組みやコストを管理する仕組みも組み込んだ。
推論を国内のリージョンだけで完結させると、海外のリージョンに処理を分散できない。そのためAIモデルごとのTPM(Tokens Per Minute:1分間に処理できるトークン数)に設定されたクオータ(利用上限)が、実質的な処理能力の上限になってしまう。
そこで本番利用を開始する前に、一部ユーザーによるパイロット運用を実施した。実測データを基にAIモデルごとに必要なTPMを見積もり、要件定義から全社リリースまでの工程に性能設計と負荷テストを組み込んだ。
Claude Coworkと社内SaaSとの連携では、MCPやOAuthの実装差異を吸収するために、NEC独自の認可中継サーバを設計・構築した。SaaSによって認証・認可の方式が異なっていても、このサーバを介することで連携できるようにする。
Amazon Bedrockを選んだ理由は、NECが重視したセキュリティとガバナンスの要件を満たせると判断したからだ。Claude Coworkを利用する方式には、Anthropicのサービスプラン「Claude Enterprise」を契約する方法もある。機能によっては、Claude Enterpriseの方が先行して提供されるものや、Amazon Bedrock接続では利用できないものもある。それでもNECは、推論処理およびデータを国内にとどめられることを優先して、Amazon Bedrock接続を選択した。
こうしてNECは、最大12万人が利用できるClaude Coworkのシステムを構築し、要件定義から2週間で本番利用を開始した。NECとAWSが連携して作業の優先順位やタスクの範囲を定め、進行状況を共有しながら次の作業を判断することで、本番利用できるシステムを短期間で構築できたという。
推論処理を国内で完結させた他、システムに認証・認可や監査証跡などの仕組みを組み込んだことで、全社利用を前提としたセキュリティとガバナンスの要件も満たした。2026年7月時点では、Claude Coworkで利用できる各AIモデルのTPMクオータに十分な余裕があり、リクエストを一時的に制限する「スロットリング」も発生していない。
2026年7月18日には独自の認可中継サーバを社内リリースし、SaaSとの連携に利用できるようにした。これによってMCPやOAuthの実装差異を吸収した結果、SaaSとの連携範囲は順次拡大しているという。
NECは今後、今回構築したシステムをさらに発展させて、AIエージェントの本番活用につなげる考えだ。AWSは2026年8月30日、公式ブログ「Amazon Web Servicesブログ」で本事例を公開した。
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