業務への影響を抑えながら、オンプレミスインフラで稼働する業務システムのDBを、クラウドサービスに移行するにはどうすればよいのか。オーケーが実践した“止められないDB”の移行術を見てみよう。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
オーケーは、関東と関西で180店舗以上を展開するディスカウントスーパーマーケットだ。2021年に宅配サービスの「オーケーネットスーパー」を開始するなど、ITを活用した施策を広げる中で、事業を支えるシステムの中核を担う、2つのデータベース(DB)の刷新が課題になった。
1つ目は、オーケーネットスーパーでの商品購入や顧客への提案を支える「ネットスーパーDB」だ。ネットスーパーDBは、オープンソースのデータベース管理システム「PostgreSQL」を中核とし、クラウドサービスで稼働していた。将来の用途拡大を見据えて、トランザクションの増加に応じて処理能力を拡張できるようにしつつ、データインフラの運用コストを抑制する必要があった。顧客一人一人に合った商品をリアルタイムに提案するために、分析ツールやAIでデータを活用しやすくすることも目指していた。
2つ目は、日々の店舗業務を支える「生鮮DB」だ。生鮮DBは、仕入れや棚卸し、販売実績のデータを蓄積し、全店舗からのデータ参照や現場の帳票出力を可能にする。オンプレミスインフラからの脱却を目指していたものの、現場の業務プロセスと密接に結び付いており、一斉停止を伴う全面移行は難しかった。生鮮業務の担当者は、独自のツールで生鮮DBからデータを抽出し、表計算ソフトウェアで集計や状況確認をしていたことから、こうした手作業の効率化も課題だった。
これらの課題を解消するために、オーケーは、この2つのDBを新しいデータインフラに移行した。ダウンタイムを極小化し、将来のデータ活用まで視野に入れられるようになったという。“止められないDB”を、どのような手段で移したのか。
オーケーが2つのDBの移行先に選んだのは、Googleのクラウドサービス群「Google Cloud」のデータベースサービス「AlloyDB」だ。Google Cloudの専用線接続サービス「Partner Interconnect」を利用し、オンプレミスのデータセンターおよび各ベンダーのクラウドサービスから、インターネットを経由せずに、Google CloudおよびAlloyDBに接続できるようにした。移行支援は、Google Cloudの導入や運用の支援実績を持つKDDIアイレットに依頼した。
DBの特性に応じて、異なるデータ移行方法を採用した。停止を許容できたネットスーパーDBでは、他のクラウドサービスで稼働していたPostgreSQLからデータをエクスポートし、PostgreSQLとの互換性を持つAlloyDBにインポートした。停止できない生鮮DBでは、Google Cloudの移行支援サービス「Database Migration Service」(以下、DMS)を使った。DMSで移行元のトランザクションログから差分データを読み取り、移行先に継続的に書き込むことで、移行元を稼働させたまま移行を進め、切り替え時のダウンタイムを抑えた。
オーケーはAlloyDBについて、高可用性構成のSLAで月間稼働率99.99%を定めていることに加えて、約15秒で済むというフェイルオーバー(障害時の切り替え)の迅速さを評価した。既に利用しているGoogle Cloudのデータウェアハウス(DWH)サービス「BigQuery」との連携のしやすさと、移行支援ツールの充実も選定を後押しした。
今回の移行により、オーケーはネットスーパーDBと生鮮DBという、特性の異なる2種類のDBをAlloyDBに移行した(図)。移行後は、Google Cloudのデータ連携サービス「Datastream」により、安全な通信を保ったままAlloyDBからBigQueryに、ほぼリアルタイムでのデータ連携が可能になったという。
生鮮業務の担当者は、従来は手作業で集計していた生鮮DBのデータを、BigQueryに集約して分析できるようになった。天気情報や人流データ、客数予測といった外部データと、生鮮DBに蓄積したデータを組み合わせた分析が可能になったという。店舗の売り上げ情報を即座に反映して、製造の推奨数を算出することで、食品ロスを削減しながら売り上げを伸ばす取り組みも進めている。
職種や部門によってデータ活用やシステム運用のリテラシーが異なることから、オーケーはAIエージェントを構築し、自然言語でデータを活用できるようにする取り組みを始めている。AlloyDBのAI機能群「AlloyDB AI」を活用し、「コレステロールが気になる人向けの油は」といった質問に応じた商品検索や、類似商品の提案を目指す考えだ。Google Cloudの公式ブログが2026年10月5日、本事例を公開した。
取手市が「脱VDI」 “高くて手間の掛かる仮想化”から逃れた先は、まさかの「物理」だった
“すぐに買えない最新GPU”なんて実は要らない――現実解は「再利用」か?
「Windows Server」サポート終了で“ファイルサーバの危機”に直面――ヤマハ系企業はどう乗り越えた?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.