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5分で分かる特許 〜イノベーションを阻害するのか?5分で分かる製作現場(4)(5/5 ページ)

ややこしい特許制度がなければ、自由なイノベーションが生まれるのか? ビジネスを強固にするためにはどのような特許戦略を取るべきか?

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5分−特許戦略とビジネス戦略の整合性

 特許権は他人の使用を禁止するためだけに使われるのではありません。通常は、金銭の支払いに応じて、ライセンスされます。また、特許権を売却することもできます。オープンソースと類似の考え方であるパテント・コモンズを構築し、特許権をオープンにして、一定条件で自由に使ってもらうこともできます。

 もちろん、営利企業が自社の利益のために特許を使っている点は変わらないのですが、コミュニティに特許を開放することで、誰もが利益を得られ、(そして、結果として自社も利益を得られる)という考え方は重要です。

 オープン・イノベーションという考え方も注目を集めています。特許権をもっと自由に流通させることで、イノベーターに適切な対価を提供しながら、産業全体の発展を促す考え方です。このような世界が到来すれば個人やスタートアップ企業が特許を大企業にライセンスして収益化したり、あるいは、大企業の特許をライセンスしてもらって、スタートアップ企業ならではの、斬新なビジネスを行なったりするケースも増えてくるでしょう

 これらの考え方を適用する上で重要なポイントは、ビジネス戦略と特許戦略(さらにいえば知財戦略)の整合性を取ることです。特許はビジネスで活用できなければ価値はありません。自社が得意とするビジネスを推進し、強固にするためにはどのような特許戦略を取るべきかを考え、両者のベクトルをそろえることが重要です。ユーザー・エクスペリエンスを最重要差別化要素にしているアップルがUI関係の特許を数多く取得していることがその典型例といえるでしょう。


著者プロフィール

栗原 潔

テックバイザージェイピー(TVJP)代表取締役 弁理士。技術士(情報工学)。 IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社。 東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。

日本アイビーエム、ガートナージャパンを経て2005年6月より独立。独自の視点で「IT弁理士日記」を執筆中。


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