ややこしい特許制度がなければ、自由なイノベーションが生まれるのか? ビジネスを強固にするためにはどのような特許戦略を取るべきか?
特許というと、難しいものとお考えかもしれませんが、その基本的な考え方はシンプルです。
特許法は「発明の保護」と「利用」のバランスを取ることで、発明を奨励して産業の発達を促進するための制度です。ここで「発明」を、大ざっぱにいうと「技術的アイデア」のことです(特許法の条文上は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されていますが、簡単に「技術的アイデア」と考えておけば十分です)。
特許制度による発明の保護として最も重要なのは、特定の条件(後述します)を満足した発明に、一定期間(約20年間)特許権という「独占権」を付与することです。特許権者は他人がその発明を実施するのを禁止できます。ここで、実施とはビジネスとして製造・販売・使用・広告宣伝・輸出・輸入などをすることを含む広い概念です。禁止できるとは差止め請求、損害賠償請求ができるということです。さらに、場合によっては刑事罰も適用されます。特許権は非常に強力な権利です。例えば、つい先日も、ニューヨーク地裁で、裸眼3D関連特許の侵害により、個人発明家に約29億円の損害賠償を支払うよう任天堂に命じる評決が出たばかりです。
特許制度による発明の利用として最も重要なのは「発明の公開」です。特許制度の基本は「公開の代償として(一定期間の)独占権を付与すること」です。秘密にしながら独占権を得るという虫のいいことは許されません。
例えば、スマホにはおよそ10万件の特許技術が使われています。一般消費者の目には見えにくいかもしれませんが、今日の産業は特許制度なしでは成り立ちません。
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