検索
連載

マクロ編:もう東京の下請けなんて言わせない――東日本大震災から7年目の「仙台」が目指すグローバルITエンジニア U&Iターンの理想と現実(44)(2/3 ページ)

外資系IT企業が、日本本社をあえて仙台にした理由とは?――ご当地ライターが、リアルな情報をつづる「UIターンの理想と現実」。マクロ編第3回は、IT先端エリアの1つ「仙台」を紹介します。

Share
Tweet
LINE
Hatena

IT×ものづくりで仙台に雇用を作る――「ワイヤードビーンズ」

 2011年の東日本大震災直後は、仙台に拠点を構えていながら撤退を決めた企業がありました。しかし震災から7年が経過した今、フットワークの軽いIT企業が仙台に立地し、復興をバックアップしています。


ワイヤードビーンズのオフィス。1000平方メートル超の広々としたフロアには、グラスやカップなどの自社製品が並ぶショールームや製品を使ったカフェ&バルスペース、自社の照明や椅子の並ぶ打ち合わせスペースがあり、バルの向こう側ではIT部門のスタッフが働く姿、手前ではレーザー加工や最終出荷の工程を見られる

 「ワイヤードビーンズ」は、Salesforce.comの公式パートナーとしてSalesforce Commerce Cloud事業で国内1位の実績を持つIT企業です。さらに、職人手作りのヒット商品を次々と生み出すものづくりメーカーでもあります。本社は仙台です。

 仙台出身の三輪寛社長が東京から仙台に戻ってきたのは1998年、30歳のころでした。

 転職先を探す中で、30代の人がキャリアを生かせる勤め先があまりに少ないことを実感し、若手の雇用の受け皿となり、東北のIT業界の明るい光となる会社を作ろうと、2009年に同社を創業しました。

 IT分野では、当時のeコマースのビジネスがいずれ行き詰まることを見抜き、2015年に日本に進出したCommerce Cloud(当時はDemandware社)と提携。わずか3年でAPAC(アジア太平洋)マーケットのシェア3位になりました。

 さらに、百貨店のビジネスモデルがインターネットの普及によって崩壊する様子を見て、「新しい流通網の活用が職人の復興につながる」と考え、創業と同時にものづくり分野にも参入。ITと日本の職人の技術を活用して、現代の住環境に合ったデザインの商品を開発しました。「生涯を添い遂げるグラス」を代表とする商品が続々とグッドデザイン賞に選ばれ、生産が追い付かない状況が続いています。

 これらの実績や事業の可能性、特有のポジションが東北6県の銀行や宮城県、仙台市などにも評価され、2017年12月には経済産業省から地域未来牽引企業の選定も受けています。「同業が何千社とある東京ではなく、仙台で光る会社を作れば、確実に支援者が増えると見込んでいました」と三輪社長は、仙台創業のもう1つの理由を明かします。

 「サービスや製品(モノ)」「銀行の支援(カネ)」がそろった今、今後の発展に欠かせないのが「優秀な人材(ヒト)」です。同社は今後、UIJターンを考えているエンジニアやディレクター、プロジェクトマネジャーを100人規模で採用を進行しており、将来的には、東北の優秀な新卒者の雇用も考えています。

 IT×ものづくりで仙台に雇用を生む同社の挑戦、新オフィスの窓から差し込む日差しよりもまばゆい光が、そこにはありました。

外資系企業が仙台を選んだ理由――「CData Software」


CData Software Japan。グローバル企業は、メンバーもグローバル

 データ連携コンポーネントベンダー「CData Software Inc.」は、企業で利用するシステムやサービスの利用者がストレスフリーなシステム間データ連携を実現するソフトウェアプロダクトを開発し、全世界で販売しています。

 グローバル本社は米国ノースカロライナ州のリサーチトライアングルにあり、欧州と中国にも開発オフィスがあります。同社の日本法人が、仙台に拠点がある「CData Software Japan」です。仙台に日本支社を設立した理由は、「住みよい環境、おいしいご飯が人をよりクリエイティブに、幸せにしてくれると信じたから」とのこと。

 CData Software Japanは、製品のローカライズや日本国内の顧客への販売、サポートだけでなく、日本発のクラウドサービスやシステムとデータ連携できる製品の開発ディレクションも行います。商圏は首都圏を中心とした日本全国はもちろん、中国を除くアジアを視野に入れています。

 CData Software Japanは、「在宅でもどこでも、長期的に高いパフォーマンスを出し続けられる環境が一番」と考えているため、場所にこだわらない働き方を実践しています。

 例えば、宮城県出身で2年前に仙台にUターンした桑島さんは、状況に応じて在宅勤務を行っています、

 通常は、お子さんの登校と一緒に家を出て早めに出社、退社も夕食時間に間に合うようにして、家族との会話の時間を持てるように心掛けているそうです。

 「首都圏より安い家賃で広い部屋に住めるようになって仕事部屋ができたので、仕事量が多いときや海外メンバーと夜にコミュニケーションが必要なときは、家でリモートワークをします。家族との時間でリフレッシュした後に集中して働けるので、パフォーマンスを出せるようになりました」と、にこやかに話してくれました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る