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「契約不適合責任」を盛り込んだ契約書作りのポイント、教えます(サンプル付き)瑕疵担保責任じゃダメですか?(1/4 ページ)

「ユーザーはどこまでも無限に作業を命じてくるのではないか」「受け入れ試験を真面目にやらないのではないか」――改正民法の「契約不適合責任」にまつわるベンダーの不安にお答えしましょう。

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 複雑怪奇なIT“業界”を解説する本連載、第1弾はIT業界にまん延する多重下請け構造と偽装請負について、第2弾は多重下請け構造が起こる仕組みについて、第3弾はシステム開発プロジェクトには複数の契約形態が混在することを、第4弾はユーザーはなぜプロジェクトに協力したらがらないのか、第5弾は「案件ガチャ」が起こるメカニズム、第6弾はベンダーの営業が安請け合いする理由、第7弾ではエンジニアの年収が上がらない理由、では第8弾第9弾では、偽装請負の恐怖、第10弾では、エンジニアが陥りがちな「3つの地獄」について解説しました。

 今回は、民法改正で登場した「契約不適合責任」について解説します。

合意できない「契約不適合責任」

 民法改正が施行されて2カ月経過し、ITシステムの開発や保守、運用に関わる契約書の中に、これまでの「瑕疵(かし)担保責任」に代わって「契約不適合責任」という文字が見られるようになりました。

 皆さんの周囲では、民法改正を元にした契約条項についてユーザーとベンダーがすんなり合意できているでしょうか? 私の周りでは、この「契約不適合責任」の締結をベンダーが拒んで、旧民法の「瑕疵担保責任」のままにしてほしいと要望する例がまだまだ多いようです。

 「契約不適合責任」とは、これまでの「瑕疵担保責任」と異なり、ソフトウェアに不具合があった場合、発注者がそれを発見してから1年以内に受注者に通知すれば、無償の修理や代金の減額、あるいは契約の解除(事前に催告が必要)を求められるというものです。

 これまでであれば、納品したソフトウェアに不具合があっても、納品から1年以上経過した後に発見されたなら、受注者であるベンダーには、無償で修補したり、損害を賠償したりする義務はありませんでした。どのような対処を行うか、有償か無償か、あるいはいつ行うのか、については、発注者と相談の上で決めていたわけです。

 しかし今回の改正では、受注者であるベンダーは最長10年間、いつ不具合が判明しても対処できるように、要員やテスト環境を確保し続けなければなりません。確かにベンダーが嫌がる気持ちも分からないではありませんし、これに対応するならば見積金額を大幅に上げざるを得ないとするベンダーもいます。そうなると「被害」はユーザーに及ぶことになります。

 そんなこともあって実際に結ばれている契約の中には、言葉を契約不適合責任に変えただけで、その実は旧来の瑕疵担保責任と何ら変わらないというものもあります。

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