沖縄の技術者がアツい!ハッカソンレポ&代表者に聞いたMade in Javan!地方コミュニティ探訪記(1/2 ページ)

本連載では、代表者に話を聞いたりイベントに潜入したり名産品を食べたりして、Javaを中心に地方のさまざまなコミュニティを紹介していきます

» 2011年12月14日 00時00分 公開
[柴田克己@IT]

沖縄がアツい! 初のハッカソンが開催

 東京に、平年より若干遅めの冬将軍が訪れた11月末。それなりに冬向けの暖かい服を着込んで、羽田空港から飛行機に乗り込んだ私は、約3時間後に思い切り後悔することになった。

 目的地は、沖縄県の那覇空港。常夏の沖縄……は、さすがにいい過ぎだろうが、この時期でも気温は軽く20度を超え、夜になっても大きく下がることはない。東京でいえば、9月末から10月あたりの陽気だ。「半袖持ってこなかった……」と、いささか悲しい気持ちになりつつタクシーに乗り込み、ヤシの植えられた空港前の道路を抜けていく。

 目指すは、那覇の観光地として有名な国際通り。今回、この国際通りにある市営の施設「てんぶす那覇」で、沖縄のプログラマ有志による、沖縄初の「ハッカソン」が行われると聞きつけて、ぜひその様子を見てみたいと思ったのだ。

 ハッカソンの会場となったのは、てんぶす那覇の研修室。すでにハッカソンが行われているガラス張りの会場を外からのぞくと、数名の参加者がそれぞれに、各自で持ち込んだノートPCやMacBookを開き、キーボードに向かっていた。時折、チームを組んでいると思われる参加者同士が、他の人の作業の邪魔をしないよう、小声で打ち合わせをしている。

 このハッカソンは、週末の土曜日と日曜日の2日にかけて行われるという。会場となっている研修室は、土曜日が9〜22時、日曜日が9〜12時で開放され、参加者は自分のペースで自由に会場へ出入りできる。日曜日の14時から琉球大学工学部で、このハッカソンの成果発表会が行われるという。

 参加者はみな、雑談をすることもなく、真剣にモニタに向かっている。何を作っているのかを聞いてみたかったが、どうやら明日の成果発表会まで待った方がよさそうだ。

「Java Kueche」の本質はプログラマの“横のつながり”

 このハッカソンを企画したのは、沖縄県のプログラマコミュニティ「Java Küche」(以降、「Java Kueche」と表記)だ。作業の合間に時間をいただき、Java Kueche会長の平良知広氏と事務局長の古川吉啓氏に、会場近くのカフェでお話をうかがった。

Java Kueche会長の平良知広氏 Java Kueche会長の平良知広氏

 「『Java Kueche』という名前なんですが、Javaというプラットフォームにこだわっているわけではなく、プログラミングに関して幅広いテーマを扱っています」と話すのは、会長の平良氏。浦添市のコンピューターサービス企業「オーシーシー」に勤めるWebサービスの開発者である。

 Java Kuecheは、沖縄県内では初の「プログラムに特化したコミュニティ」として2006年7月に発足した。発足に当たって、JJUG(日本Javaユーザグループ)会長である丸山不二夫氏の「地方にコミュニティを根付かせたい」という趣旨に賛同したメンバーが幹事として尽力。その下部組織として設立したという経緯もあり、名前に「Java」を冠しているが、その趣旨は、言語にこだわらず県内開発者の“横のつながり”を作ると同時に、勉強会を通じたレベルアップを図っていこうというものだ。

 ちなみに「Kueche」は「クッチェ」と発音する。ドイツ語で「台所」の意味を持つが、これは「設立時に最初に会合を開いたカフェが『Cafe Kueche』という店名だった」ことに由来するのだそうだ。現在、サイトに登録している会員は300名強、コミュニティメーリングリストの会員は100名強。年に数回開催される勉強会やイベントでは、県内のIT企業などに協賛を募っている。

 Java Kuecheの活動方針には、「勉強会を通して会社組織の枠を超えた技術者の交流を活発化させ、技術スキルの向上に貢献する」とうたわれていることもあり、その活動の核は、毎回多彩なテーマで行われる「勉強会」となっている。

 これまでの勉強会のテーマは、「Java 5」「JUnit」「JavaFX」「Spring Framework」といったJavaに関連するものから、「Rails」「XP(ペアプログラミング体験)」「iPhone&Androidプログラミング」といったものまで多彩。その時々で開発者が興味を抱きそうなネタを役員で話し合って幅広く取り上げる。この「面白そうなネタ」を軸にした勉強会のテーマ決めが、コミュニティ運営上「一番大変なところかもしれない」と平良氏はいう。

 なお2010年には、開発者が自分の興味のあるテーマを短時間で自由にプレゼンテーションする「ライトニングトーク」を行い、過去最多の参加者を集めた。今回の「ハッカソン」も、従来のセミナー形式に捕らわれず「これまでにやっていなかったことをやってみよう」との思いで企画したという。

沖縄からスター開発者をもっと生み出す土壌を作りたい

 Java Kuecheの今後の目標としては、「沖縄からスター開発者がもっと多く生まれるような土壌を作っていきたい」(平良氏)という。そのきっかけの1つになると考えているのは、勉強会などで、あるテーマに関するキーマンやスタープレーヤーと、沖縄の開発者とが直接交流できる場を作ることだ。

Java Kueche事務局長の古川吉啓氏 Java Kueche事務局長の古川吉啓氏

 「Wagbyなど独自のプロダクトやスマートフォン向けアプリなどの開発でがんばっているところはあるものの、基本的に沖縄のIT企業は本土の下請け的な仕事が多くなってしまい、それをこなすので精いっぱいになりがち。この状況を少しずつでも変えていきたい」(古川氏)

 「Java Kuecheで、沖縄の開発者がスタープレーヤーと交流し、刺激を受ける場を作り続けることで、ボトムアップで何かが生まれてくるのではないかと期待している」(平良氏)

 また平良氏は、勉強会で学ぶだけでなく、そこで学んだ知識を使って実際に作ったものを公開し、フィードバックを受けて次につなげていくサイクルを、コミュニティのメンバーに持ってもらいたいという。今回開催した「ハッカソン」も、そうした考えの表れといえそうだ。

 実際に「自分で作ったものを公開し、それが話題になった」という点では、マイクロソフトの「Kinect」センサを用いて、「Hello, world!」のプログラムを入力するフレームワーク「肉体言語 Tython」や、「世界最速のgrep」といったものもある。これらは、いずれも沖縄の開発者の手によるものだ。こうして見てみると、スターを生み出す素地はすでにあるのかもしれない。

 先述のように、Java Kuecheは名前にJavaを冠するものの、Javaのみに特化したコミュニティというわけではない。実際、勉強会でも、Javaそのものをテーマとして取り上げることは、現在ではそれほど多くないようだ。しかし、歴史と実績のあるプラットフォームであり、Android開発のベースとしても重要な技術であることから、「今後、Javaの世界で新たなスター開発者が生まれれば、より盛り上がっていくのではないか」と平良氏、古川氏は口をそろえる。

 特に、沖縄のSI企業で、独自プロダクトであるJavaによる業務システム開発ツールに長く携わった古川氏は「JavaOneで発表された、Javaのクラウド対応や進化の方向性には、今後も注目している」と語ってくれた。

 次ページでは、「ハッカソン成果報告会&JavaOne報告会」の模様をお伝えしよう。RubyやCoffeeScript、Heroku、Rails 3.1、Facebook、Hadoop、PHP、MySQL、iPhone、vi、jQuery Mobile、Play!、GitHub、そして地獄のミサワが気になる方は必見です。

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