VMware PlayerとLive CDで手軽に試せる


鶴長 鎮一
2007/12/28


ディストロアイコン パッケージ管理システムも見直した「openSUSE」

 openSUSEは、openSUSEプロジェクトによって無料で提供されているディストリビューションです。openSUSEプロジェクトはNovellの支援を受けており、FedoraとRed Hatの関係のように、openSUSEプロジェクトの成果は、Novellが有料で提供しているSUSE Linuxに反映されています。

図1
画面3 openSUSEのデスクトップ画面

 ヨーロッパを中心にLinuxディストリビュータとして名をはせたドイツの企業、SUSE LINUX AGをNovellが2004年に買収し、Version 9.1を日本国内で販売したころから、国内での普及が始まりました。Version 9まではSUSEやNovellから有償で提供されていましたが、Version 10以降openSUSEプロジェクトを立ち上げ、コミュニティに開発の場を提供しています。

 SUSE LINUXシリーズでは一貫して管理ツール「YaST2(Yet another Setup Tool)」が採用されており、OSの設定や自動アップデート、ソフトウェア・ハードウェアの調整など、ありとあらゆる設定が1つの管理画面を通して提供されています。ほかのディストリビューションにも管理ツールが提供されていますが、ネットワーク設定にはこのツール、ハードウェア設定にはこのツールといった具合に使い分ける必要があり、YaST2を使った統合設定環境がSUSEの特徴となっています。

関連リンク:
参考 openSUSE
http://ja.opensuse.org/

更新内容

 10月にリリースされた10.3ではDVDインストールメディアに加え、2つのLive CDが提供されています。1つはデスクトップ環境にGNOMEを採用した「CD-GNOME版」、もう1つはKDEを採用した「CD-KDE版」です。

 従来SUSE LinuxではKDEのサポートに重点が置かれていましたが、最近はGNOMEの対応にも注力し、10.3ではYaST2のGTK版が利用可能です。またパッケージ管理システムが大幅に見直され、zypperによるコマンドラインでのパッケージ操作が可能になっています。

 ほかにも、Webページ上で公開しているパッケージのリンクをクリックするだけでインストールを実行できる「1-Click Install」の採用や、起動時間の短縮、3DデスクトップCompizの対応強化、緑を基調にしたデスクトップテーマの刷新などが行われています。

関連リンク:
参考 openSUSE News「Announcing openSUSE 10.3 GM」
http://news.opensuse.org/2007/10/04/announcing-opensuse-103-gm/

ディストロアイコン 2回のアップデートで盛り上がる「Ubuntu」

 UbuntuはDebian GNU/Linuxから派生したディストリビューションです。サーバ版とデスクトップ版が無料で提供されており、デスクトップ版ではGNOMEを使用したGUI環境を備えていますが、サーバ版ではGUI環境が省かれています。デスクトップ版では3Dデスクトップ環境が標準で利用できるため、華やかさでも人気を博しています。

図1
画面4 Ubuntuのデスクトップ画面

 インストールにはLive CDを活用するなど、容易なインストールと使いやすさが実現されており、日本国内でもコミュニティの盛り上がりにより、近年勢いが増しつつあります。2004年10月に最初のリリースが行われてから、メジャーアップデートが半年間隔で6度実施されています。

 UbuntuはCanonical Ltd.の支援により、コミュニティベースのディストリビューションでありながら、定期的なリリースと、迅速で長期にわたるアップデータの提供が約束されています。アップデータの提供期間は通常版で1年半ですが、長期サポートを保証したLTS版(Long Term Support)が定期的にリリースされており、デスクトップ版で3年、サーバ版で5年が保証されています。現在はUbuntu 6.06がLTS版として提供されており、2008年4月にリリースされるUbuntu 8.04が次期LTS版として予定されています。

 なおUbuntuのリリース番号にはリリースされた年と月の組み合わせが用いられ、2008年4月にリリースされる新版には8.04が付与されます。インストールパッケージはCD1枚(700Mbytes)に収められており、パッケージのコンパクトさも特徴の1つです。Ubuntuには公式な派生ディストリビューションがあり、デスクトップ環境をKDEに置き換えた「Kubuntu」、Xfceに置き換えた「Xubuntu」、教育現場での利用を想定した「Edubuntu」が提供されています。

関連リンク:
参考 Ubuntu Japanese Team
http://www.ubuntulinux.jp/

更新内容

 2007年には2回のメジャーアップデートが実施されています。最新版の07.10では主要コンポーネントのアップデートに加え、「Compiz Fusion」がデスクトップ版では標準で有効化されており、3Dデスクトップがより簡単に楽しめます。

 ほかにも「Tracker」によるデスクトップ検索機能が統合されており、ホームディレクトリに保存された文書や音楽ファイル、画像などを、ファイル名や内容でインクリメンタルサーチできます。日本語で作成された文書も、UTF-8で保存されていれば、内容で検索することができます。

関連記事:
参考 プロダクトレビュー Ubuntu 7.10 日本語ローカライズド Desktop CD
http://www.atmarkit.co.jp/flinux/prodreview/ubuntu10/ubuntu10a.html
参考 3Dデスクトップを統合したUbuntu Linux最新版がリリース
http://www.atmarkit.co.jp/news/200710/18/ubuntu.html

ディストロアイコン RHELと足並みを合わせてアップデート「CentOS」

 CentOSは、Red Hat Enterprise Linux(以降、RHEL)との互換を目指した、無償利用可能なディストリビューションです。Red Hatが無償で公開したソースコードから、商標や商用パッケージを含まない形でパッケージを作成し配布しているため、RHELと高い互換性を保ちながら、無償で利用することができます。RHEL同様、yumやup2dateが利用可能で、CentOS専用のミラーサイトが用意されています。

図1
画面5 CentOSのデスクトップ画面

 数多くあるRHEL互換ディストリビューションの中でも多くのユーザーを抱え、コミュニティの活動も活発なため、RHELに及ばないまでも、迅速に更新パッケージが提供されています。またRHELのリリースに合わせた、CentOSのバージョンアップが確実に実施されています。

 CentOSは無償利用が可能ですが、有償でのサポートを提供するベンダもあります。Cent OSの開発や提供にRed Hatは何の関与もしておらず、Red HatにCentOSのサポートを依頼することはできません。CentOSの名前は、「Community ENTerprise Operating System(コミュニティベースのエンタープライズ級オペレーティングシステム)」に由来します。

関連リンク:
参考 CentOS
http://www.centos.org/

更新内容

 RHEL 5.0や5.1のリリースに合わせ、2007年にはCentOS 5.0や5.1がリリースされています。アップデートにより、RHEL同様、カーネルをはじめとするコンポーネントの更新、仮想化環境の強化が実施されています。

 CentOSではRHELにはない試みとして、Live CDの配布が行われています。2007年12月現在ミラーサイトに5.1のLive CDを見つけることはできませんが、5.0は見つけることができます。なおLive CDのrootアカウントにはパスワード(12qwaszx)が設定されているため注意します。

関連リンク:
参考 CentOS 5.1 Release Notes
http://wiki.centos.org/Manuals/ReleaseNotes/CentOS5.1/

2/4

Index
2007年、Linuxディストリビューションの歩みを振り返る
 VMware PlayerとLive CDで手軽に試せる
  Page 1
 リリースラッシュだった2007年
 名称を統合し着実にアップデート「Fedora」
 約3年ぶりにアップデートした「Debian GNU/Linux」
Page 2
 パッケージ管理システムも見直した「openSUSE」
 2回のアップデートで盛り上がる「Ubuntu」
 RHELと足並みを合わせてアップデート「CentOS」
  Page 3
 2007年のアップデートの方向性は?
  Page 4
 VMware PlayerとLive CDで手軽に試す
 選択のポイント
 2008年のLinuxディストリビューションはどうなる?

Linux Square全記事インデックス


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