VMware PlayerとLive CDで手軽に試せる


鶴長 鎮一
2007/12/28


ディストロアイコン 2007年のアップデートの方向性

 商用系ディストリビューションに目を向ければ、2年ぶりのメジャーバージョンアップとなる「Red Hat Enterprise Linux 5」が登場し、MIRACLE LINUXの後継「Asianux」が3.0をリリースしています。また、こちらも久しぶりとなる「Turbolinux 11 Server」が、3年ぶりにメジャーバージョンアップを実施しています。

 最近はカーネル2.6が安定して使用されていることもあり、2.4から2.6への移行が急がれた一時期に比べれば、メジャーアップデートのペースは比較的落ち着いています。それでも商用系ディストリビューションには、サポート期間終了日という宿命があるため、一定期間ごとのリリースは不可避となっており、SUSE Linuxもほぼ定例で10.3をリリースしています。

 非商用系に目を向ければ、FedoraやDebian、UbuntuにGentoo Linuxと、こちらも多くのディストリビューションがメジャーバージョンアップを実施しました。半年ごとにバージョンアップされるFedoraやUbuntuはともかく、3.0から数えれば4年ぶりとなるDebianのほかに、Red Hat Enterprise LinuxのクローンといわれるCentOSや、SUSE Linuxのコミュニティ開発版・OpenSUSE、2006年末に4.0をリリースしているVine Linuxを加味すれば、ディストリビューションのバージョンアップが2007年に偏ったかのような様相がうかがえます。

更新内容の傾向

 今年メジャーバージョンアップを果たしたディストリビューションの多くは、カーネルやglibcといった主要コンポーネントの更新という既定路線を踏襲しており、2007年を特徴付けるような新規パッケージの採用や、目新しい機能の実装は限定的です。

 サーバ系では仮想化ソフト「Xen」のサポート強化、デスクトップ系では3Dデスクトップ環境「Compiz」の対応強化あたりが共通しています。リリースが久々となるディストリビューションでは、対応するファイルシテムの追加やファイルシテムサイズの上限拡大といった、カーネルのアップデートの恩恵を得られるものもあります。

デスクトップ環境の傾向

 デスクトップ環境ではGNOMEが優勢です。KDEは選択インストールできるものの、GNOMEをデフォルトにしたディストリビューションが多数を占めています。そもそもインストールメディアにKDEを収録しないケースもあり、KDEを利用するために別のインストールメディアを用意するUbuntu(KDEを標準デスクトップ環境に使用するにはKubuntuを使用)のようなケースも珍しくありません。

 サーバにもデスクトップにも、どちらの用途も満たす汎用的なLinuxマシンを構築するために、収録するパッケージが肥大化する一方、用途に合わせ提供するパッケージを限定するという傾向も見られるようになっています。

オリジナルLive CD作成への期待

 インストールメディアの肥大化に対し、用途に応じてパッケージを限定するというアイデアが、今後支持されることは想像に難くありません。こうした傾向により、派生系も含めたディストリビューションの増加に拍車が掛かることが予想されます。

 むしろ、数種類のディストリビューションに淘汰されるより、職場や教育現場といったローカルな環境に合わせたディストリビューションやLive CDが簡単に作成できることの方が健全と思う向きもあります。

 例えばFedoraには、インストトールメディアやLive CDを自作できるGUIツール「Revisor」が用意されており、Ubuntuでも「Reconstructor」でオリジナルLive CDを自作できます。オリジナルLive CDとしてはKNOPPIXが知られていますが、RevisorやReconstructorでは、KNOPPIXのようにコマンドやスクリプトを駆使する必要がなくGUI操作が可能です。今後は、こうしたオリジナルインストールメディアやLive CDを構築するためのツールが、多くのディストリビューションへ波及していくことが期待されます。

図1
画面6 Live CDを自作できる「Revisor」

インストールだけじゃない、ディストリビューションの利用方法

 ミラーサイトからISOイメージファイルをダウンロードしたり、雑誌の付録DVDを利用したインストールメディアの入手方法に加え、インストール不要のLive CDを提供するディストリビューションも目立っています。

 Ubuntuのように、Live CDを兼ねたインストールディスク でほぼすべての機能が提供されている場合もあります。また中には、VMwareに代表される仮想マシンのイメージファイルを丸ごと提供する例もあり、ディストリビューションを試用するのに、もはやインストール作業も不要になりつつあります。

 大方の個人でのLinuxの用途は、システム管理を学習するための環境作りや、開発環境の一環にLinuxを導入するケースばかりで、Windowsの代わりにオフィス業務に利用することは、依然としてまれです。Windowsが手放せない環境では、複数OSのデュアルブートが必要で、OSを切り替えるたびにPCのシャットダウンを実行しなければなりません。

 ですが仮想マシン環境なら、OS切り替えの煩わしさを低減し、Windowsとの同時使用も可能になります。おまけにインストールが不要となれば、ほとんど労力が掛かりません。

図1
画面7 VMware PlayerでopenSUSEを使用

 仮想マシンを動作させる「VMware Player」はLinuxとWindows用が無料で提供されており、費用も発生しません。仮想マシンを構築し、ゼロからインストールするには「VMware Server」を使用しますが、こちらもWindows版とLinux版が無料で提供されています(注3)。

関連リンク:
参考 VMwareダウンロード
http://www.vmware.com/jp/download/

注3:VMware PlayerおよびServerのMac版は配布されていません。有償のVMware Fusionを利用する必要があります。ただしその場合も、対応はIntel CPUを搭載したMacintoshに限られます。ダウンロードにはユーザー登録が必要です。

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Index
2007年、Linuxディストリビューションの歩みを振り返る
 VMware PlayerとLive CDで手軽に試せる
  Page 1
 リリースラッシュだった2007年
 名称を統合し着実にアップデート「Fedora」
 約3年ぶりにアップデートした「Debian GNU/Linux」
  Page 2
 パッケージ管理システムも見直した「openSUSE」
 2回のアップデートで盛り上がる「Ubuntu」
 RHELと足並みを合わせてアップデート「CentOS」
Page 3
 2007年のアップデートの方向性は?
  Page 4
 VMware PlayerとLive CDで手軽に試す
 選択のポイント
 2008年のLinuxディストリビューションはどうなる?

Linux Square全記事インデックス


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