RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱する
NTTデータ
柏木 恵子
2007年2月14日
コスト削減から新しい付加価値へのシフトが必要
――RFIDの利用周波数帯や標準化など、最近の技術的な動向について
河西 当社は自らチップやデバイスを作っているのではないので、利用周波数帯や標準についてはあくまでも利用する側の立場で、個別の案件ごとに「どれが向いているか」を選択しています。そのため、ユーザー目線で最新動向を追いかけています。
一方、ソリューション提供者の立場として着目している技術動向としては、RFIDのハイブリッド化や複数の取り組みがなされている相互運用接続といった分野です。具体的には、RFIDタグと各種センサーを組み合わせた製品とか、ユビキタスIDとEPCといったコード体系をまたがる相互接続や情報の翻訳、インターフェイスの構築に関する実証実験などです。
私の立場はNTTデータの中でも特殊だとお断りしておきますが、個人的な興味は、1〜2年のスパンでビジネスとして刈り取れるものよりも、将来的にNTTデータとして利を生かせるような技術動向に意図的にシフトしています。
当社も参画した温度センサー付きRFIDタグを活用した生酒の実証実験でも、きちんと温度管理した商品を配送できることが物流業者の付加価値となるのはもちろんですが、店頭でも消費者に商品情報を提供して購買行動に結び付けられるかどうかまで視野に入れていました。繰り返しになりますが、こういったRFID+コンテクスト・アウェアネスやeコラボレーションのもたらす付加価値を、今後当社として差別化の源泉としていきたいと考えています。
【関連記事】 RFIDのハイブリッド化がもたらすブレイクスルー |
RFIDを使うことによって新たなサービスが生まれる
――RFIDが普及するために必要なものは何でしょうか
河西 いろいろな方が、ROI(投資対効果)を出すことが重要といわれています。これは「もっとハードウェアの単価が下がったらROIが出るのに」という意味合いももちろんありますが、それよりもRFID利用ならではの付加価値によってROIが出る形にならなければいけないということをみなさんいわれていると思います。
工場における生産管理などでリライタブルシート型RFIDタグが活用され始めました。RFIDにより、読み取り時間が短縮された分の人件費が削減されるというのが一番の効果ですが、これに加えて、工場という環境では紙の指示書だと汚れたり破れたりすることがあります。
また、使い終わった指示書も廃棄しますが、これが非常に大量になります。セキュリティの観点からも廃棄コストは高くなってきていますし、最近では資源保護の観点からも使い捨ては好ましくないと考えられています。リライタブルシートをリサイクルして使うことによって、これらが解決できるという形でのROIへの貢献もあるなど、考える視点を広くすることは重要です。
もう1つ、海外旅行の手荷物に付けるタグの例を挙げます。最近では、事前に機内預け荷物を自宅から宅配業者に預けてしまって、手ぶらで旅行に行けるサービスがあります。ところが、そのオペレーションをのぞいてみると、宅配業者、空港宅配業者、航空会社は別のコード体系で荷物を管理しているため、空港では、荷物の伝票から氏名や搭乗便名を目視で読み取り、チェックインシステムに手作業で入力する作業が発生しています。
航空会社にとっては、この作業が負担となってサービス拡大のボトルネックの1つになっています。旅行者にとっても、荷物が航空会社に受け取られるまでは、荷物の情報と飛行機の情報をそれぞれの会社の情報提供サービスに問い合わせなければならないという面倒があります。
2007年2月1日に発表した「IDコマース基盤」の実証実験ではバーコードを使用していますが、将来、荷物に付けるタグをRFIDにしてしまって、それぞれの業者で使っているコード体系を共通の基盤で運用できるように連携させてしまえば、コストの削減とともに、ユーザーの利便性を高める新たなサービスの拡充や一層の効率化を実現できるようになると考えています。
こういった、複合的な効果を積み重ねることがROIを高め、それがRFIDの普及を促進することにつながると思います。
JALの協力を得て、機内預け荷物のIDを複数企業間で連携させる実験を実施している(この実験ではバーコードを利用) |
【関連記事】 RFIDプラットフォームの相互接続運用に向けて |
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Index | |
RFID2.0に向けたプラットフォームを提唱するNTTデータ | |
Page1 強みを生かせるのは共通化のための技術開発 |
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Page2 コスト削減から新しい付加価値へのシフトが必要 RFIDを使うことによって新たなサービスが生まれる |
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Page3 静かにフェーズが変わってきている |
RFID+ICフォーラム トップページ |
RFID+ICフォーラム 日本のRFID業界をけん引する人々 |
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