ストレージ仮想化技術の応用ストレージ仮想化入門(2)(1/3 ページ)

サーバをはじめ、さまざまな仮想化技術が注目されるようになってきた。しかしストレージの仮想化はいまひとつイメージしにくく、認識が十分に浸透していないのが現状だ。本連載ではストレージ仮想化技術についての基礎を分かりやすく解説する

» 2009年09月07日 00時00分 公開
[小菅芳道日本アイ・ビー・エム株式会社]

 前回は、ストレージ仮想化の定義や、その有用性を述べ、ストレージ仮想化の仕組みやそのバリエーションを説明しました。今回は、ストレージ仮想化技術の機能を用いた運用や、ストレージ仮想化環境への移行、またストレージ仮想化環境からの移行について説明します。

データ移行機能

 ストレージ仮想化技術が最も威力を発揮するのは、このデータ移行機能です。サーバへは仮想的なLUNを提供し、仮想的なLUNと物理的なLUNとの間の変換はストレージ仮想化装置が行っているため、サーバからの仮想的なLUNへのアクセスを妨げることなく、データを格納する場所を自由に変更することが可能になります。

データ移行機能の仕組み

 データ移行の最中、サーバからは全くそれを認識することはできませんが、SVCは内部的に以下の処理を行っています。

ステップ1:仮想ディスクのある1つのブロックへのサーバからのアクセスを一時的にサスペンドする。

ステップ2:そのブロックのポインタが指す移行元のエクステント(小容量のディスクブロック群)のデータを、移行先のエクステントに移動する。

ステップ3:そのブロックのポインタを、移行前のエクステントから移行後のエクステントを指すように変更する。

ステップ4:仮想ディスクのそのブロックへのサーバからのアクセスを再開する。

ステップ5:ステップ1から4を仮想ディスクの全てのブロックに対して行う。

 図1は、ディスク装置Aで構成される管理対象ディスクグループAからディスク装置Bで構成される管理対象ディスクグループBへ、仮想ディスクを移行させている様子を表しています。

図1 仮想ディスクグループAからBへの仮想ディスクの移行 図1 仮想ディスクグループAからBへの仮想ディスクの移行

 黄色のエクステントが移行前の状態で、緑のエクステントが移行後の状態を表しています。そして、赤のエクステントが移行中の状態を表しています。サーバからの赤のエクステントへのアクセスは一時的にサスペンドされます。その間にデータを管理対象ディスク A1から管理対象ディスク B1に移動するとともに、仮想ディスクのポインタも管理対象ディスク A1から管理対象ディスク B1を指すように変更します。この作業が完了するとサーバからの赤のエクステントへのアクセスが再開されます(緑のエクステントになります)。

 データの移行はこのような仕組みで行われるので、データの移行中でもサーバは業務を中断することなく仮想ディスクにアクセスし続けることができます。以下に、業務を中断することなく実行可能なデータ移行の例を述べます。

データ移行の例1

目的:最新のデータは頻繁にアクセスされるので高速なディスク装置に置いておきたいが、古くなったデータは使用頻度が低いので、廉価なディスク装置に置きたい。

 これは、図2において、ディスク装置Aが高速なディスク装置で、ディスク装置Bが廉価なディスク装置である場合と考えることができます。アクセス頻度が低くなった仮想ディスクを管理対象ディスクグループAから管理対象ディスクグループBへ移行することで、目的が達成できます。

図2 アクセス頻度が低くなった仮想ディスクを、管理対象ディスクグループAからBへ移行する 図2 アクセス頻度が低くなった仮想ディスクを、管理対象ディスクグループAからBへ移行する

データ移行の例2

目的:古いディスク装置を新しいディスク装置でリプレースしたい。

 エクステントは管理対象ディスクグループ内でも管理対象ディスクグループ間でも移行できます。従って、1つの方法として、リプレース対象となるディスク装置Aが構成している管理対象ディスクグループAとは別に、リプレース先となるディスク装置Bが構成する新たな管理対象ディスクグループBを作成する方法があります。図1において、ディスク装置Aがリプレースされる古いディスク装置、ディスク装置Bがリプレースする新しいディスク装置である場合と考えることができます。業務で使用中の仮想ディスクを管理対象ディスクグループAから管理対象ディスクグループBへ移行し、移行が完了した時点でディスク装置Aを撤去することができます。

 また、別の方法として、リプレースされる古いディスク装置Aが構成している管理対象ディスクグループに、リプレース先の新しいディスク装置Bを追加し、その後、古いディスク装置Aから提供されている管理対象ディスクを管理対象ディスクグループから削除する方法があります。管理対象ディスクグループから管理対象ディスクを削除すると、削除される管理対象ディスクに含まれる全ての使用中のエクステントは、同じ管理対象ディスクグループ内の未使用のエクステントに自動的に移行されます。

 図2において、ディスク装置Aがリプレースされる古いディスク装置、ディスク装置Bがリプレースする新しいディスク装置である場合と考えることができます。管理対象ディスク A1と管理対象ディスク A2を削除すると、管理対象ディスク A1と管理対象ディスク A2で使用されている黄色のエクステントは管理対象ディスク B1と管理対象ディスク B2に自動的に移行されます。赤のエクステントは移行中の状態を表しています。移行が完了した時点でディスク装置Aを撤去することができます。

データ移行の例3

目的:管理対象ディスクグループ内の管理対象ディスク間での使用容量のアンバランスを解消したい。

 ここまでの説明で気が付かれたかもしれませんが、例えば、管理対象ディスクグループの空き容量が少なくなり、この管理対象ディスクグループに新たな管理対象ディスクを追加すると、その管理対象ディスクグループ内の管理対象ディスク間で使用容量のアンバランスが発生します。つまり、特定の管理対象ディスクに対する使用率が上がる可能性があります。この状態を解消するために、管理対象ディスクグループ内でエクステントの移行が可能です。図2において、管理対象ディスク A1の使用率が高まったため、その一部の赤いエクステントを管理対象ディスク B1に移行している場合と考えることができます。

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