第3回 管理者向けの機能製品レビュー 進化したInternet Explorer 9(2/2 ページ)

» 2011年06月16日 00時00分 公開
[打越浩幸デジタルアドバンテージ]
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 IE9を組織で導入・展開する場合、利用するモード(互換表示やSmartScreenフィルタ設定)やネットワーク設定などを統一したり、組織内の独自のリンクやホームページを追加したりして、環境を統一したいことがある。これを実現するにはいくつか方法があるが、グループ・ポリシーを使ってIEの設定を変更するか、IE管理者キット(IEAK)を使ってカスタマイズしたIE9を作成し、それを配布するのが一般的である。管理者向けの情報については、以下のサイトを参照していただきたい。

グループ・ポリシーによる制御

 グループ・ポリシーを使えば、IE9の動作モードや起動時のホームページ、お気に入りバー、ネットワーク設定、セキュリティ設定など、さまざまな項目を組織内でカスタマイズして統一できる。例えばIE8やIE9ではうまく表示できないようなサイトがある場合は(特にイントラネットのサイトなど)、互換表示モードを強制するようにカスタマイズすることもできる。これなら、サイト側のコンテンツを全体的に変更するよりも簡単である。IE9で追加された項目(次の表参照)も含めると、全部で1500以上のカスタマイズ項目がある。

項目
ダウンロードの履歴の削除を禁止する
アドオンのパフォーマンス通知を無効にする
Internet Explorer 8 のシャットダウン動作を許可する
MD2 および MD4 署名テクノロジで署名されたバイナリをインストールする
新たにインストールされたアドオンを自動的に有効にする
SmartScreen フィルター機能の管理を無効にする
アドレス バーからの検索を構成できないようにする
アドレス バーに単一の単語を入力するためイントラネット サイトに移動する
ActiveX フィルターをオンにする
HTML5 メディア要素で別のコーデックを有効にする
追跡防止リストを構成する
アドレス バーの下にタブを表示する
追跡防止しきい値
追跡防止をオフにする
IE9で追加されたグループ・ポリシー
IE9で追加されたグループ・ポリシー項目の抜粋。詳細は「Internet Explorer 9の新しいグループ ポリシー設定(TechNetサイト)」を参照のこと。

 グループ・ポリシーの管理方法や、IE9固有のグループ・ポリシー項目については以下のページを参照のこと。

 IE向けのグループ・ポリシーの一覧は以下から取得できる。

 なお、IE9のグループ・ポリシーを編集するには、IE9をインストールしたコンピュータ上から行う必要がある。

グループ・ポリシーによるIE9の設定例
グループ・ポリシーを利用すると、組織内のActive Directoryに属するInternet Explorerをすべてまとめて設定できる。IE9のグループ・ポリシーを編集するには、IE9をインストールしたコンピュータ上から行う必要がある(IE9のインストールとともに、新しいグループ・ポリシーのテンプレート・ファイるがインストールされる)。全部で1500以上のカスタマイズ項目が用意されている。これはIE9で追加されたグループ・ポリシーの例。ダウンロードの履歴を削除できないようにするポリシー。
  (1)IE9以降のみで利用可能なポリシーの例。

IE管理者キットによるIE9のカスタマイズ

 IE管理者キット9(Internet Explorer Administration Kit 9:以下IEAK9)は、IEのプログラムそのものをカスタマイズして配布用のパッケージを作成するためのツールである。カスタマイズしたIE9を各PCにインストールすることにより、統一されたブラウザ環境を実現できる。グループ・ポリシーによる制御と違い、Active Directoryがなくても利用できるし、すでにIE9をインストールしている場合でも、上書きインストールしてIE9の設定を統一することができる。

 IEAKはIEのバージョンごとに用意されており、IEAK9は以下のサイトからダウンロードできる。

 IEAK9でカスタマイズできる項目には、例えば次のようなものがある。

  • ウェルカム・ページの設定
  • 互換表示、ユーザー・エージェント文字列の設定
  • 検索プロバイダのカスタマイズ
  • アクセラレータのカスタマイズ
  • Web スライスのカスタマイズ
  • 設定できる項目の制限、など

 IEAK9によって最終的に生成されたIE9のインストール・パッケージは、直接実行するほか、共有フォルダに置いて実行したり、展開サービスなどで配布してインストールしたりする。IEAKで作成したベースとなるインストール・パッケージは、プロファイル・マネージャを使ってさらに個別にカスタマイズできる。

IEAK9のウィザード画面の例(1)
IEAK9の「Internet Explorerカスタマイズ ウィザード9」でカスタマイズする項目のグループを選択しているところ。ウィザード形式の画面でカスタマイズ項目を指定していくだけで、最終的にIE9をインストールするためのファイル・セットが作成される。作成されたファイル・セットに対して、さらに個別にカスタマイズするには、IEAK9に含まれる「IEAK プロファイル マネージャー」を利用する。

IEAK9のウィザード画面の例(2)
これはIE9の互換表示モードを設定しているところ。IE7相当での表示を強制するようにカスタマイズすることもできる。

IEAK9のウィザード画面の例(3)
ユーザーが変更可能な項目を限定しているところ。業務に不要な操作などを禁止できる。


 今回はIE9の互換性に関する機能やグループ・ポリシー、IEAKなどについて簡単に見てきた。GPUを駆使したパフォーマンスの改善や、HTML5への対応、ユーザーインターフェイスの改良など、外見や機能は大きく進化したIE9だが、管理者の視点から見るとIE7からIE8に変わったときほどの大きな変革はないようだ。互換表示モードはすでにIE8で導入されていたし、グループ・ポリシーの項目もいくつか増えたが、IE9の機能強化に合わせて追加されたものがほとんどである。IEAKも従来とほぼ同じように使えるし、組織内でのIE9の展開・インストール方法も従来と違いはない。操作性もIE8と大きな違いはないので、ブラウザがIE8からIE9になってもユーザーが困ることはあまりないだろう。

 となるとむしろ問題になるのは、サイト側の対応の方であろうか。WebサイトによってはIE7とIE8で表示がいくらか異なるなど、世の中ではIE8対応すらまだ完全に行われていない(ように思われる)状況なのに、また新たなWebブラウザの登場により、サイト制作者/開発者側の(開発やテストなどの)負担はさらに増えたように思われる。今IE9のHTML5向けにサイトを構築しようとしても、IE9のシェアはまだ小さいし、Windows XPのようなクライアントが残っている環境(会社など)では、IE9だけをターゲットにするわけにもいかないだろう(IE9はWindows XPでは利用不可)。ならば当分の間は社内サイトや社内アプリケーションなどは、とりあえずIE7かIE8までをターゲットとするようにサイトを構築しておくしかない。HTMLページのヘッダなどを適切に設定しておけば、ユーザーや管理者が(手動もしくはグループ・ポリシーなどで)互換表示モードを有効にしたりしなくても、自動的にIE7やIE8モードで表示されるようになる。Windows XPのクライアントPCの台数が十分少なくなってからでもIE9+HTML5対応は遅くないかもしれない。

 ちなみに、すでに次のInternet Explorer 10の開発も着実に進んでいる。現在はPlatform Preview 1版がリリースされているが(関連記事参照)、これはセキュリティ機能などはほとんど何も持っていない、機能チェックのためのバージョンである。まだ開発者が試用する段階に過ぎないが、このIE10も含め、今後はさまざまなWebブラウザやデバイス(スマートフォンなど)が混在する状況になりそうである。積極的にIE9(そしてIE10)を導入する必要はないかもしれないが、管理者としては技術的トレンドだけは押さえておきたい。

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[製品レビュー] 進化したInternet Explorer 9 ―― HTML5準拠、性能向上、新ユーザー・インターフェイス ―― 

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