GPOが完成したら、コンテナにリンクする。このためには、リンクしたいGPOをリンク先のコンテナにドラッグ&ドロップすればよい。
GPMCのコンソールでリンクを開くと、右ペインには、GPOを開いたときと同じ内容が表示される。その内容については「4.GPOの設定」で解説したとおりである。
右ペインの内容のうち、[リンク]セクションだけがリンクの設定であり、ほかはリンク元のGPOの設定である。[リンク]セクションでの設定は、それぞれのリンクにだけ影響するが(画面中の赤線)、[リンク]セクション以外での設定はリンク元のGPOに影響し(画面中の緑線)、すべてのリンク先に影響する(画面中の青線)。
GPMCのコンソールでリンクを開いて設定するときには、リンクを設定しようとしているのか、GPOを設定しようとしているのか、混同しないように注意したい。GPOとリンクについては、連載第2回「グループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)とリンク」を参照していただきたい。
リンクのアイコンは、そのリンクや、リンク元のGPOの状態を反映している。特に、特殊なリンクを示すアイコンや、何らかの異常を示すアイコンには注意したい。そのようなアイコンの意味を調べるには、マイクロソフトのTechnetサイトにある「グループ ポリシー管理コンソール アイコンのリファレンス」を参照するとよい。
GPMCのコンソールでコンテナを開くと、そのコンテナへのGPOのリンクが表示される。ここでリンクの継承と優先度を確認したり調整したりできる。継承と優先度については、前回の「リンクの継承と優先度」を参照していただきたい。
あるコンテナへの複数のリンクの優先度を確認/変更するには、[リンクされたグループ ポリシー オブジェクト]タブを開く。ここに表示されるのはコンテナへの直接のリンクだけであり、上位階層から継承したリンクは含まれない。
[リンクの順序]が上のリンクが、下のリンクより優先される(GPOが適用されるときの処理順でいえば、下のリンクから先に処理され、上のリンクが後から処理される)。この画面ならば、「営業二課の第一ポリシー」が「営業二課の第二ポリシー」より優先される(処理順でいえば、「営業二課の第二ポリシー」が先に処理され、「営業二課の第一ポリシー」が後から処理される)。
あるコンテナへの直接のリンクだけではなく、継承されたリンクも併せて表示するには、確認したいコンテナの[グループ ポリシーの継承]タブを開く。ただし、サイトから継承したリンクは表示されない。サイトへのリンクは不確定であるためだ(連載第5回「GPOとコンテナとのリンク」参照)。
[優先順位]が上のリンクが、下のリンクより優先される(GPOが適用されるときの処理順でいえば、下のリンクから先に処理され、上のリンクが後から処理される)。
上の画面では、およそ継承と優先度の基本原則に従ってリンクが並んでいる。だが「営業部の強制ポリシー」だけは、基本原則から外れて、最も高い優先度になっている。これは、このリンクが「強制(上書き禁止)」(wi-gpmcicon-special.gif)に設定されているためである。「強制(上書き禁止)」については前回の「上書き禁止(強制)」を参照していただきたい。
上位階層からコンテナへのリンクの継承をブロックするには、コンテナを右クリックして[継承のブロック]を選択する。そのコンテナへは上位階層からリンクが継承されなくなり、コンテナのアイコンに青地の感嘆符が付く。例えばOU(wi-gpmcicon-ou.gif)の場合は、wi-gpmcicon-ouex.gifになる。継承のブロックについては前回の「継承のブロック」を参照していただきたい。
以上のように、GPMCでは、従来いくつかの汎用ディレクトリ管理コンソールを行き来しなければならなかった作業や、難解だった作業が、一貫性のあるコンソールで行えるようになっている。特に、ポリシーの内容の一覧や、リンクの継承の確認などは重宝するだろう。Active Directoryでグループ・ポリシーを運用するに当たって、GPMCは必須といっても過言ではない。ぜひとも活用していただきたい。なお、GPMCの機能のうち、結果のシミュレーションやバックアップなどについては、今後、別記事で取り上げることにする。
本連載では、7回に渡ってActive Directoryにおけるグループ・ポリシーのしくみについて解説してきた。グループ・ポリシーとは何か、Windows NTのシステム・ポリシーとはどう違うのか、グループ・ポリシーで利用される定義ファイルや設定ファイルにはどんなものがあり、どうやってそれがクライアントへ渡され、適用されるのか、そしてグループ・ポリシーの編集方法などについてまとめてきた。管理者によって設定されたグループ・ポリシーの項目がどうやってクライアント・コンピュータに渡され、反映されるのかというしくみを知ることにより、グループ・ポリシーの設定だけでなく、トラブルシューティングなどにも役立つだろう。特に複数のグループ・ポリシーを利用した場合、その優先度やリンク先、継承方法などを理解していないと、その動作が理解しづらい。だが、グループ・ポリシーのしくみを知っていれば、結果を予測、確認したり、トラブルシューティングを行うのは難しいことではない。ぜひ本連載をグループ・ポリシー管理に活用していただきたい。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.