情報処理推進機構(IPA)は12月25日、情報処理技術者試験の制度改革についての「最終報告書」を発表した。新試験の実施は平成21年度春期からで、現行試験の実施は平成20年度秋期まで。だが、現行試験のうち「初級システムアドミニストレータ試験」のみ、平成21年度春期まで継続実施することを決めた。
IPAではかねて制度改革について議論を進め、今年9月7日に中間報告を行っている(参考記事:「初級シスアド」消える――情報処理技術者試験が大改革へ)。今回の最終報告では、中間報告直後に募集したパブリックコメントの内容も踏まえて検討を行った結果をまとめている。
情報処理技術者試験改革の最大の目的は、高度IT人材の育成を目指して経済産業省が進める「共通キャリア/スキルフレームワーク」におけるレベル判定の尺度に利用できるようにすること。そのため新試験は、ITSS(ITスキル標準)、ETSS(組込みスキル標準)、UISS(情報システムユーザースキル標準)の各スキル標準に対応した1〜4のレベルに分けられている。同時に試験区分の整理も行われている。
新試験区分の名称、現行試験との対応関係、各試験のレベルは以下の図のとおりだ。
最も受験者に影響が大きそうなのは、「初級システムアドミニストレータ試験」の名称廃止・変更だろう。「広く社会人・職業人に向けた、IT社会の登竜門」(IPA)である新設の「ITパスポート試験」に吸収される。9月募集のパブリックコメントには、「すでに取得している資格はどうなるのかという問い合わせ、中でも初級システムアドミニストレータ試験に関する不安感が高かった」(IPA 情報処理技術者試験センター長 川口修氏)といい、影響の大きさを感じさせる。
IPAは「試験制度が改正されても、以前合格した事実は何ら変わるものではない」「初級システムアドミニストレータ試験は、ITパスポート試験のレベルを包含する」としながらも、影響を考慮して初級システムアドミニストレータ試験の延長を決定。現行試験の実施は平成20年度秋期まで、新試験の実施は平成21年度春期からだが、初級システムアドミニストレータ試験のみ平成21年度春期まで継続実施することにした。
情報処理技術者試験のCBT方式での提供の可能性も示唆した。ITパスポート試験は、平成21年度春期の開始当初はペーパー方式で実施するが、平成23年度をめどにCBT方式の導入を目指す。川口氏は「うまく使えるなら他試験にも広げたい。長期的に考えて、ITパスポート試験だけで終わらせたくない」とし、そのほかの試験区分のCBT化についても可能性を検討する考えを示した。
今後の課題は、新試験の普及を目指した広報活動だという。「特に中小・中堅企業、地方企業への働き掛けが必要だ。IPA、経済産業省ともに活動を行い、各地で説明会を開催するなどしたい」(川口氏)と、積極的な広報活動への意欲を示した。
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