IT企業、新卒採用苦戦の理由は「仕事のイメージが悪い」IPAが調査、理事長は「由々しき事態」

» 2008年01月29日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 情報処理推進機構(IPA)は、人材不足が深刻化する日本のIT業界の現状を調査するため、IT人材についての実態調査を実施し、1月28日に結果を公開した。大学卒、大学院卒の新卒学生がIT企業に興味を持たなくなったともいわれているが、当のIT企業が新卒採用の課題として挙げた答えのトップは「業界の仕事のイメージがよくない」だった。

 調査はIT人材についての総合的な調査の予備調査の位置付け。IT企業とユーザー企業に分けて2007年9月に調査を行った。IT企業は357社が回答。回答企業の65.8%は受託開発ソフトウェア業、12.3%が情報処理サービス業、6.7%がパッケージソフトウェア業など。

 IT企業の今年度の新卒採用については40.9%のIT企業が「ほぼ目標どおり」と回答。ただ、「目標を下回った」という企業も3割以上あり、苦戦は続いているようだ。特にほぼ目標どおりの採用を確保している従業員1000人以上の大企業と比べて、1000人未満の中堅・中小企業は「目標を下回った」という回答が多かった。

 では、各社の新卒採用の課題は何だろうか。上記のように複数回答でIT企業の46.5%は「業界の仕事のイメージがよくない」と回答。2番目は「人材の量的な確保が難しい」(45.1%)、3番目は「企業の知名度が低い」(38.7%)だった。業界の仕事のイメージが悪いことを心配しているのは、特に大企業に多かった。従業員1000人未満の中堅・中小企業では人材の量的な確保の方が課題となっている。

IT企業が考える新卒採用の課題(IPAの報告書から)

 IPA 理事長の藤原武平太氏は、IT業界の仕事のイメージについて「3K、5K、7K、10Kなど私自身は根拠がないと思っていることが、面白おかしく伝わっている。このことが結果を裏打ちしているのだろう。私は由々しき事態と思っている」とコメントした。IT業界のイメージをアップについては「別の調査ではエンジニアの3分の2近くが仕事に意義を感じている。業界として、トップからもそういうことを発信していくべきと思う」と語った。

IPA 理事長の藤原武平太氏

 さらに情報サービス産業協会(JISA)が、学生向けに開発の現場を見せる活動や、IT業界の先輩の話を紹介する活動を行っていることを説明し、「少しずつ(IT業界のイメージは)矯正されていくと思っている」と話した。JISAは会員企業の新卒採用情報を集めた Webサイトを開設している。

 新卒採用だけでなく、人材一般でもIT企業は苦しんでいる。人材の量が「大幅に不足している」というIT企業は回答の28.3%。「やや不足している」の59.1%をあわせると実に9割近くのIT企業が人材不足を感じている。また、人材の質についても23.5%のIT企業が「大幅に不足」と回答。 67.8%の「やや不足している」を合わせると9割を超える。

 IPAがIT人材育成の道標と位置づけるITスキル標準(ITSS)については回答したIT企業の28.3%がすでに利用。利用を検討している企業も 27.5%いて、半数以上のIT企業が利用する意向を示している。特に従業員が1000人以上の大企業では、63.4%がすでにITSSを使っているという。

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