ファイバチャネル、SAS、SATA、iSCSIなど多様なインターフェイスに対応したRAIDサブシステムの開発・販売で知られるインフォトレンド。日本国内ではまだ知名度は高くないが、汎用品で対応しきれない顧客のニーズに応える機能を、独自ASICの設計で実現して実績を築くなど独自の戦略を展開している。インフォトレンドでアジア・パシフィック地区担当で、インフォトレンドジャパン 代表取締役社長のスコット・ウー(Scott Wu)氏に話を聞いた。
――グローバルと日本とで、それぞれ事業展開の現状を教えてください。
ウー氏 1993年に台湾で創業して以来、各地に子会社を設立しています。1996年にアメリカ、2000年に英国、2001年に中国、そして2003年には日本に拠点を設けました。
中国とアメリカではOEMが事業の中心ですが、日本やヨーロッパでは自社ブランドの製品を販売しています。ストレージ技術はアメリカから始まったもので、技術やマーケットのメインはアメリカですが、今のところアメリカ、ヨーロッパ、アジアの3地域での事業規模はだいたい同じです。グローバル市場では、外付けRAIDで9%のマーケットシェアを持っています。
――日本市場での戦略を教えてください。
ウー氏 日本には日本のベンダだけでなく、アメリカ系のベンダもあって難しい市場です。EMCやデル傘下のイコールロジックなどの強い競争相手とは真正面で戦っても勝てません。こうした強力なブランドとの差別化は、今の段階ではコスト面しかありません。イコールロジック製品はエンタープライズ系を狙っていますが、われわれインフォトレンドは現状ミドルエンドを狙っています。パフォーマンスではイコールロジックに及ばない面もありますが、価格競争力はあります。
現在、仮想化といえばサーバの仮想化がほとんどですがが、今後はストレージ仮想化のニーズも高まります。こうしたニーズに対して、サーバと独立してコマンドベースで柔軟に必要なストレージを切り出せる“ストレージプール”の機能を提供していきます。2009年第1四半期には新たな管理ツールの提供も予定しています。
日本企業は新しい技術に対して興味はあるが普及が遅いという特徴があります。世界的にはiSCSI市場が伸びていますが、日本ではこの市場はまだこれからと考えています。
――国内での採用事例を教えてください。
ウー氏 例えば東京大学の素粒子物理国際研究センターで弊社の「EonStor A16F-G2422」を140台導入していただいた実績があります。1台当たり16台のSATAドライブを搭載し、合計1.1PB(=約1100TB)になる大容量ストレージです。
東大のシステムはCERN(欧州原子核研究機構)が中心となって進める研究プロジェクト「アトラス実験」に参加する1ノードとしてデータの解析を行いますが、このプロジェクトに参加するアメリカ、ロシア、インド、台湾、ヨーロッパなどほかの研究機関でも弊社のストレージを使っていただいているところがあります。
「CSA」(Continuous Streaming Access)という独自機能で導入が決まるケースもあります。CSAは書き込み時のレイテンシを一定以下に抑える技術で、高速なデータストリームでもビット落ちが発生しないという特徴があります。例えば、東芝メディカルシステムズのCTスキャンシステム「Aquilion ONE」では、従来は難しかった、広範囲でのスライス映像のリアルタイム記録が可能となっています。
――CSA技術のライセンス供与は?
ウー氏 CSA技術のライセンスは考えていません。RAIDシステムとして出していく予定です。こうしたニーズに応えて柔軟に対応していくことが弊社の強みです。大手ベンダは80%のマーケットを狙っていますが、われわれは残りの20%、小さい特化したマーケットで成功事例を作っていくことで少しずつブランドの信頼イメージを作っていこうと考えています。
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