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@IT > サービスの継続性を左右する“サポータビリティ” |
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成長期の企業ではビジネスの成長に比例して、企業内のITシステムも成長する。一般的にサーバ台数が多くなると、その管理の複雑さは飛躍的に増加することになる。これは運用管理者にとっても大きな負担となる。「成長企業のシステム戦略」の第1回、2回でもご紹介したように、長期的な視点でシステム基盤を選び、的確な仮想化技術を取り入れることで、運用面を考慮した計画的なシステム増強が可能になる。一方で忘れてはならないのが、万が一システムに障害が発生したときの復旧、原因究明、再発防止対策である。 そもそも企業システムの規模が大きくなるということは、そのシステムが担っているビジネスもスケールアップしているということを意味する。取引先の数や取引金額が増えているばかりではなく、そのシステムが提供しているサービスが取引先にとって、とても大切なものになっている可能性もある。いわゆる“ミッション・クリティカル”の度合いが増せば増すほど、問題発生時のネガティブインパクトも増すことになるといえるわけだ。 つまり、システムが提供しているサービスの重要度が増すと、障害による損失も大きくなることが予想され、障害原因の特定を迅速に行うことが要求される。そこでポイントなるのが、サポータビリティであり、「顧客から開発元までの一貫した保守プロセス」「適切な人材および技術スキル」「保守性のテクノロジー」といった要素である。
サポータビリティとは、障害の未然防止や障害の解析を迅速に行うために必要なデータ収集、解析に求められる機能など、継続運用・保守に関してシステム全体の信頼性、技術者の生産性を向上を目的とする仕組みのこと。いわゆる保守性の能力である。 こうした体制・仕組みが整備されていれば、システムの可用性が高まり、障害時の復旧時間や原因究明までの時間が短縮されるとともに、恒久対策による障害の再発防止が期待できるわけだ。 一般に企業情報システムの運用は、社内ないしアウトソーシング先にある運用現場と、それを支援するベンダの保守からなる。システムオーナーであるユーザー企業は、システム運用体制において自社(情報システム部門)/運用アウトソーシング/ベンダ保守の区分、守備範囲をどのようにするか、決めなければならない。 自社で行うのであれば、人員を配置してそれらの人々に必要な情報が集まるように体制を整え、教育を施す必要がある。社内に有能な運用管理者がいれば、いざというときに迅速な対応が期待できるのが利点だ。しかし、ミッションクリティカルなシステムをすべてユーザー企業だけで面倒を見ることは現実的ではないし、ハードウェアや各種ソフトウェア製品に関してはベンダの支援なしということは考えられない。 一方、ベンダの側でもさまざまな保守サービスメニューを提示している。どれを利用すべきなのかは、システムが提供しているサービスの重要度で決まってくる。例えば、サービスの中断が時間単位で損失につながるようならば、迅速性の高い支援が必要だろうし、24時間365日提供することが重要であれば、ビジネスを継続するために必要な体制作りが必要だろう。 自社のコア事業に必要なシステム基盤と提供しているサービスの重要度、その上で考えられる障害発生確率や必要な復旧対応の体制を明確にし、それらの要素から導き出される要求に対応できるベンダを選定することが大切なのだ。
第1回、第2回で見てきたように、商用UNIXはハードウェアと密接に結び付いた形で進化してきた。商用UNIXベンダはハードウェアとソフトウェアの双方を手掛け、製品そのものにサポータビリティを向上させるような仕組みを導入可能という立場にある。こうした商用UNIXベンダの具体例として、ヒューレット・パッカード(HP)の場合について見てみることにしよう。 HPでは、HP-UXサポータビリティ向上のために以下のような施策を行っている。
製品の品質や技術力はもちろんだが、周辺ツールや保守体制などを通じて、全体的なサポータビリティを向上させることを1つの目標としていることがHPの特徴である。そのため、迅速な障害解析といった分野においても、これを重要なものと位置付けて技術開発、組織体制、情報公開、エンジニアの育成に力を注いでいる。 ■システムの継続性、迅速な問題解決に向けた仕組み まず、HP-UX自体にサポータビリティを向上させるようなさまざな仕組みが組み込まれている。これらを活用することでシステムの運用性や保守性の能力を向上させることが可能だ。 システムから得られさまざまな情報を解析し、保守を行うためのツールは、HPの保守部門が開発している。製品にも深い技術知識を持ちつつ、システム運用段階で経験のあるエンジニアチームが保守の観点で必要なツールを作り出すことにより、保守性を高め、確実な顧客支援が可能になっているのである。
こうしたツールには、表1のようなものがある。HP-UXがもともと持っているパフォーマンス測定用のプローブを利用して、動作中のシステムの挙動を調べたり、あるいは障害が起きた時点でメモリダンプなどから得られる情報を利用してさまざまな解析が行えるようになっている。 HP-UXは、HP自身が開発したものであるため、コードのソース表示はもちろん、カーネル内部のデータ構造であっても、構造体として表示が可能になる。このため、障害の根本原因を突き止めることが容易に行えるわけである。 このようなツール群が充実しているというのは、実績あるHP-UXならではのアドバンテージである。Linuxは、これから一定の年月を費やし、同様のツールをコミュニティやディストリビュータ、あるいはベンダが開発することになるだろう。 ■ミッションクリティカルに対応したHPの保守体制 HPの保守の特徴に、製品開発を行う開発技術部門と同等の高い技術を持つ保守組織が構成されていることがある。例えば、システムの動作を修正するパッチの作成には高い技術力が必要で、通常は開発技術部門がこれを作成する。しかし、HPでは、緊急性の高いパッチは、保守組織のエキスパートチームが開発を行い、顧客への保守向上に貢献している。日本にもエキスパートのチームが構成されており、パッチ作成を実施し、グローバルのエキスパートチームの一員として活動している。 顧客の視点で問題解決にあたることがミッションとされている保守のエンジニアチームが高い開発スキルを持っているため、極めて迅速なパッチ提供が日本でも可能なのである。その後、緊急に作成されたパッチは最終的に開発技術部門によって一般向けパッチとされる。一般に開発技術部門におけるパッチ開発は、全世界で稼働中のシステムすべてを考慮して行われるため、一定の時間を要するが、品質などのあらゆる面を考慮した確実性を考えると、重要なサービスを提供している運用者としては安心できる。 HPの保守組織には、ツールやパッチの開発までを行うエキスパートチームのほかにも、顧客のシステムを日々管理し、顧客と課題の解決にあたるアカウントチーム、製品に特化したエンジニア、システム全体の観点から問題解決に取り組むスペシャリストなどがいる。こうしたHPの力を結集して総合的な“問題解決”をユーザーに提供しているのである。 これらの役割を担う保守のチームは全世界のHPの拠点で活動しており、その障害事例データベースには世界中で発生した障害と対策が記録されている。このため、類似の障害であれば、迅速な対応が可能だ。万が一、類似のものがない場合でも、高い技術力を持つエンジニア、エキスパートがその対応にあたる。
また、単に障害が起った時の対策のみならず、日々ユーザーやSIなどのパートナーに情報を提供し、必要なパッチなどの配布を行うプロアクティブな活動も実施している。ソフトウェアは原理的にその完全性を証明するのは困難で、どんなソフトウェアでも何らかのバグが含まれている可能性は否定できない。しかし、長期間にわたってメンテナンスを続け、修正を続けていくことで、より完全な状態に近づけることは可能だ。サービス継続を実施するためにも、パッチや修正情報などを関係者と共有しておくことで、計画的なシステム運用が実現する。 HPのWebサイトには、ITリソースセンター(ITRC)のパッチデータベースがあり、ユーザーは自身のシステムを常に最新に保つためのパッチを自身でもダウンロードできる。そのほかにもソフトウェア機能のアップデートやセキュリティ関連、FAQなどの情報も提供されている。また、ユーザー間で知識やアイデア、経験を共有するためのフォーラムが提供されていて、問題解決に役立っている。
HP-UXの最新版ではリリース後、10年という保守期間を提供しており、安心してシステムの長期計画を立てることができる。また、導入後のアップデートに関しても、ユーザーのシステムが新しいバージョンに適合しているかどうかの事前確認やアップデートした場合の影響の調査などを保守契約のオプションとして利用可能だ。 ベンダが提供するさまざまな保守の実績は、いわば看板であり、サポータビリティとはその実力を示すものといっていいだろう。一見、保守サービスメニューがそろっているように見えても、その実力が伴わないのでは問題である。その意味で、ベンダ選択時には、サポータビリティ──いわゆる顧客視点での保守性の能力を考慮する必要があるわけだ。 商用UNIXはハードウェアと一体のものとして進化してきたという背景から、商用UNIXベンダはハードウェア、ソフトウェアを知り尽くしている。特にHPの場合、1980年代から基幹システム向けのビジネスを継続して展開しており、それらの経験を全世界でユーザー/パートナーと共有する体制を整えている。 自社である程度、運用・保守を行うというユーザーも、こうした経験を利用することができるため、運用・保守効率の向上、IT資産の価値向上に繋げることができるだろう。加えていうなら、現在、Linuxを使っている企業もUNIXとLinuxは同根であるため、運用管理担当者のスキルは無駄にならず、要員資産を生かすことができる。 ◇ 成長ステージが見えてきたら、システム基盤を見直す機会といえる。システムが提供しているサービスの重要度とそれを支える社内/社外の運用・保守体制はどうあるべきか──そうした点を含めて、じっくりとシステムのあり方を考えてみてほしい。長期かつ総合的に自社に合ったシステムのあり方を考え直すことをお奨めしたい。
提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年9月30日 |
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