ネットワークの健康状態のチェックポイント:基礎から学ぶネットワーク構築(2)
あなたの部門のネットワークは健康な状態でしょうか? 情報システムが正常に稼働することが、業務で成果をあげるための必須条件であることは、周知の事実でしょう。ネットワークは情報システムの中では、人に例えると「血管」に相当する機能です。どんなに個々の業務システムが高い機能を持っていても、情報を伝達するネットワークが正常に稼働しないと、情報システムは機能しなくなります。ネットワークが健康な状態である、ということは、業務システムが決められた効果をあげることができる状態、と定義することが可能でしょう。
ネットワークが健康な状態を保つためには、幾つかの要件があります。大きなカテゴリで分類するなら、1つは「ネットワーク・マネジメント」であり、もう1つは「ネットワークそのもの」です。ネットワークは多数の機器で構成されており、それぞれの機器は何らかの機能を持っています。「ネットワークそのもの」とは、各機能が正常に機能しているかどうかがポイントになります。一方、「ネットワーク・マネジメント」は、各機能が正常に機能するために必要な管理プロセスです。これら2つのカテゴリが満たされて、初めてネットワークは健康な状態ということができます。
以下にそのチェックリストを掲載しましたので、あなたの部門のネットワークがどうなっているか、確認してみましょう。
- 情報システムへの中・長期計画が立案され、幹部に承認されている。中・長期の拡張計画、現行ネットワークの維持計画が立案/承認されているか。十分な費用が予算化されているか
- 計画の立案に際しては、ユーザー部門との密なコミュニケーションがされている。ユーザー部門のニーズを十分に把握し、情報システムの計画を立案しているか。それが、ネットワークの計画に生かされているか
- システム要件が定義されている。稼働率/ダウンタイム/レスポンスタイムなどのシステム要件がビジネス要件をもとに定義されているか
- 管理・運用がマニュアル化されている。ネットワークの管理方法や、日次/週次/月次などの運用、トラブル時の対処方法がマニュアル化されており、必要なサービスレベルが満たされるようになっているか
- 決めたとおりのタイムスケジュールで計画を実行している。年度計画で決めたスケジュールで、機器の新設/増設、新サービスのリリースなどが実施されているか
- アドホックなユーザーからの要求事項が、タイムリーに評価され、必要なものは実行に移されている。ユーザーから不定期に挙げられる要求事項(例えば、ネットワークへの接続要求など)に対して、必要な検討がなされたうえで、実行に移されているか
- ネットワークの管理用資料が常に更新されている。ネットワーク構成を管理するための資料が、常に最新の状態になるよう更新されているか
- 構成管理をプロアクティブに実施している。何らかの問題が発生したときに構成を調査するのではなく、情報システム部が主体となってネットワークの全体構成を把握する業務を行っているか。IPアドレスは、情報システム部が集中的に管理しているか
- パフォーマンスを情報システム部が定期的に計測している。システム要件に決められた要件が満たされているかを、情報システム部が計測し、判定しているか。満たされていない場合は、改善策を立案しているか
- PCの管理は、ユーザーが実施する範囲と情報システム部が実施する範囲を明確に分けている。アプリケーションのインストールをユーザーが実施できるか、などのルールを情報システム部が定義し、ユーザーに十分説明しているか
- セキュリティ・ポリシーが定義され、ユーザーへの周知徹底がされている。セキュリティに関するルール(例えば、パスワード長、パスワードを変更する周期、ウイルスチェックなど)を定義して、ユーザーへの説明を十分に行っているか
- 障害発生時のベンダとの協力体制が敷かれている。障害発生時にネットワーク機器のSEにすぐに対応してもらえる体制が構築できているか
- ユーザーからの改善要望が、情報システム部にじかに提示される仕組みが確立されている。ネットワークの機能のみならず、日々の運用に対しての改善要望が、ユーザーからじかに情報システム部に提示され、情報システム部がユーザーの要求事項を把握するための仕組みが確立されているか
- 改善要望の処理状況が、提示したユーザーへフィードバックされている。ユーザーから挙げられた改善要望が、どのように処理され、今後の計画に盛り込まれたか、もしくは、盛り込まれなかったかが、その過程も含めてユーザーにフィードバックされているか
- UTPケーブルは、規格を満たしたものを使用している。ISO/IEC11801のカテゴリ3(10BASE-Tの場合)、もしくは、カテゴリ5(100BASE-TXの場合)の規格を満たしているか
- UTPケーブルの総延長が、規格内で収まっている。ハブから機器までのケーブル長、もしくは、ハブ間のケーブル長が、規格で定められた範囲内で収まっているか
- UTPケーブルの敷設は、剥き出しではなく、保護をしている。UTPケーブルが損傷を受けないよう保護を行っているか
- ハブのカスケード接続段数は、規格内で収まっている。ハブのカスケード接続段数は、規格で決められた段数以内で収まっているか
- ルータ/スイッチングハブ/ハブは、トラフィックの特性を考慮して配置されている。イーサネットの特性を考慮し、業務システムのトラフィックパターンに合った配置をしているか
- ネットワーク機器はメンテナンスがしやすい位置に設置されている。ハブなどのネットワーク機器をメンテナンスする際、すぐに手が届く位置に設置されているか
- ネットワーク機器は金具などで固定している。ハブなどのネットワーク機器を設置する際、金具やバンドなどで固定をしている
いかがでしたか? さて、次の章では、実際に現状のネットワーク構成を正確に把握することで、改善ポイントの洗い出しを行っていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.