RFC 2518では、WebDAVプロトコルの「Authoring」のみが規定されている。WebDAVの「V」の部分であるVersioningについては、現在DeltaVプロジェクトが出しているInternet Draftがあるのみだが、これとは別にWebDAVのVersioningの実装がリリースされている。それがSubversion(http://subversion.tigris.org/)である。
Subversionは、mod_davのバックエンドとして動作するバージョン管理エンジン(Versioning Provider)である。図7にmod_davとSubversionの関係を示す。
Subversion自身のバージョンは、現時点ではPre-Alphaというものであるが、tarアーカイブとして取得が可能になっている。プロトコル的にDeltaVを知ることは大事であるが、使える実装があるということ、そしてそれを利用できることも重要である。
なお、SubversionはVersioningプロトコルとしてはDeltaVの仕様をサポートしている。また、2001年10月1日にhttp://www.webdav.org/で公開されたアナウンスによると、DeltaVのステータスはIETFのProposed Standardになったとのことである。
1.インストールの前提条件
Subversionをインストールするには、以下の条件を満たす必要がある。
CVSスナップショットから取得可能なApache 2.0がDSO利用可能な状態でインストールされていること
理由は以下のとおりである。
なお、筆者は以下のスナップショットを利用した(注)。
apr-util_20010915041912.tar.gz
apr_20010915041901.tar.gz
httpd-2.0_20010915041212.tar.gz
注:なお、Subversionについても同時期にリリースされたアーカイブを利用している。
Subversionを利用するうえで注意してほしいのは、これはあくまで開発版であり、インストールしたから使えるという保証はどこにもないことである。また、既存の環境に影響を及ぼさないとも限らないため、これらの作業を行うマシンは環境が壊れても問題ないものであることが望ましい。
2.アーカイブの入手
まず、http://subversion.tigris.org/よりSubversionのソースコードを入手する。筆者はsubversion-M3-r88.tar.gzを入手した(注)。ちなみに、Subversionの最新スナップショットを入手する方法として、Subversionのクライアントを作成し、それを用いることもできる。
注:subversion-M3-r202.tar.gzというアーカイブもあるが、こちらを使うとリポジトリ操作が妙に遅いという問題がある。
また、サーバモジュールのコンパイルにはBerkeley DBの最新版(2001年9月15日時点で3.3.11が最新)が必須である。筆者は、http://www.sleepycat.com/からdb-3.3.11.tar.gzを入手した。
3.アーカイブの展開からインストールまで
まずsubversion-M3-r88.tar.gzを展開し、作成されたディレクトリの直下にdb-3.3.11.tar.gzを展開する(注)。
注:手順は、アーカイブを展開すると生成されるnotes/dav_setup.txtというファイルに記述があるので参考にしてほしい。
その後、
$ mv db-3.3.11 db $ configure $ make # make install
と実行する。また、/etc/ld.so.confにdb-3.3.11のライブラリが格納されている場所を追加して、
# ldconfig
を実行しておくと後々ラクである。逆にいうと、これを実施しておかないとSubversionのモジュールを追加したApacheの実行時に、Berkeley DBの共有ライブラリが見つからないというエラーが出る。
インストールが終わったらとりあえず実行……といきたいところだが、実行に当たっては以下の準備が必要となる。
1.リポジトリの用意
バージョン管理を行うためのリポジトリの用意は、Subversionをインストールしたコンピュータ上で実施する。
$ svnadmin create /home/svn/sample
とすることで、/home/svn/sampleディレクトリ下にファイル/ディレクトリ構造が準備される。
/home/svn/sampleディレクトリ下は、以下のようなディレクトリ構造が生成されている。なお、これらのファイルはApacheのuserディレクティブで指定されたユーザー/グループの権限になるので、このディレクトリ配下を当該ユーザーで操作できるように設定しておく必要がある。
# ls -R /home/svn/sample /home/svn/sample: README conf/ dav/ db/ hooks/ locks/ /home/svn/sample/conf: /home/svn/sample/dav: /home/svn/sample/db: __db.001 __db.003 __db.005 nodes revisions transactions __db.002 __db.004 log.0000000001 representations strings /home/svn/sample/hooks: post-commit.tmpl read-sentinels.tmpl write-sentinels.tmpl pre-commit.tmpl start-commit.tmpl /home/svn/sample/locks: db.lock
2.Apacheの設定
make installを実行した時点で、httpd.confには
LoadModule dav_svn_module modules/libmod_dav_svn.so
という行が追加されていることと思うが、さらにhttpd.confの一番下(ドキュメントにはこう記述がある)に、以下のような記述を追加する。
<Location /svn/repos> DAV svn SVNPath /home/svn/sample ←リポジトリの格納場所 </Location>
3.Apacheの起動と動作確認
ここまできたら、普通にApacheを起動する。これで、Subversionが利用できるようになる。
ちゃんと機能が利用できるかを確認するには、OPTIONSコマンドを発行するのが手っ取り早い。結果として、以下のような行が出力されれば問題ない。
$ telnet localhost 80 Trying 127.0.0.1... Connected to localhost. Escape character is '^]'. OPTIONS /sample HTTP/1.1 Host: localhost HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 10 Oct 2001 06:05:19 GMT Server: Apache/2.0.26-dev (Unix) DAV/2 SVN/M3 DAV: 1 DAV: version-control,checkout,version-history,working-resource DAV: merge,baseline,activity,version-controlled-collection DAV: <http://apache.org/dav/propset/fs/1> MS-Author-Via: DAV Allow: OPTIONS,GET,HEAD,POST,DELETE,TRACE,PROPFIND,PROPPATCH,COPY,MOVE Content-Length: 0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-8859-1
インストールも困難だが、実は利用するのも一苦労である(注)。理由は簡単、ドキュメントがあまりそろっていないのである。主要なコマンドのリファレンスは、コマンド実行時のヘルプくらいしかないというのが現状である。
注:実は、筆者もかなりハマった。コンパイルだけでなく、使い方が分かるまでにもかなりの時間を費やした状態である。
Subversionのインストールによって作成される実行プログラムは、主に以下の3つである。それぞれどこで実行するか、どのような機能を持つかを示しておくので参考にしてほしい。
svnadmin
用途: リポジトリの新規作成および管理
実行場所:リポジトリを作成する(もしくは存在する)コンピュータ上で実行
例: svnadmin create /home/svn/sample
svn
用途: リポジトリの操作
実行場所:クライアント上で実行
例: svn import http://localhost/svn/repos ./sample
svnlook
用途: リポジトリを見る
実行場所:リポジトリを作成したコンピュータ上で実行
例: svnlook /home/svn/sample
また、リポジトリに含まれるコンテンツ一覧を見たりするだけならば普通のWebDAVクライアント(例えばWindowsのWebフォルダ)が使える(PROPFINDメソッドを使用)。内容を取得するのであれば普通のWebブラウザを用いることで実現できる(GETメソッドを使用)。
最後に、Subversionの実行例を挙げる。リポジトリにコンテンツをインポート(import)する場合、
$ svn import http://localhost/svn/repos . Username: ←何も入力せずに[Enter]キー Password: ←何も入力せずに[Enter]キー Adding ./blocksort.c Adding ./huffman.c Adding ./crctable.c Adding ./randtable.c (中略) Adding (bin) ./sample2.rb2 Adding (bin) ./sample3.rb2 Adding (bin) ./sample1.tst Adding (bin) ./sample2.tst Adding ./sample3.tst Commit succeeded.
上記の実行例ではユーザー認証を設定していないため、ユーザー名もパスワードも入力していない。ユーザー認証を有効にしたい場合は、通常のApacheの認証設定を
importも含め、svnのサブコマンドを表7にまとめておいた。参考になれば幸いである。
サブコマンド名
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書式
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機能
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add | add [TARGETS] | 新しいファイルをバージョンコントロール対象に追加する |
unadd | unadd [TARGETS] | ddを無効にする |
co | co REPOSPATH1 [REPOSPATH2 REPOSPATH3...] | 指定したURLにあるリポジトリの内容を作業ディレクトリにチェックアウトする |
ci | ci [TARGETS] | 作業ディレクトリの変更内容をリポジトリにコミットする |
delete | delete [TARGETS] | 指定したファイルやディレクトリをバージョンコントロール対象から外す |
undelete | undelete [TARGETS] | deleteを無効にする |
help | help [SUBCOMMAND1 [SUBCOMMAND2] ...] | ヘルプメッセージを表示する。SUBCOMMAND1(,SUBCOMMAND2) と指定することで、指定コマンドのヘルプを出力する |
import | import REPOS_URL [PATH] [NEW_ENTRY_IN_REPOS] | 指定したファイルもしくはディレクトリツリーをリポジトリにインポートする |
proplist | proplist [TARGETS] | TARGETSで指定したファイルやディレクトリのプロパティ一覧を表示する |
propget | propget PROPNAME [TARGETS] | TARGETSについて、PROPNAMEで指定した名前のプロパティの値を取得する |
propset | propset PROPNAME [PROPVAL | --valfile VALFILE] [TARGETS] | TARGETSについて、PROPNAMEで指定した名前のプロパティに値PROPVAL(もしくはVALFILEに記述された値)を設定する |
propdel | propdel PROPNAME [TARGETS] | TARGETSについて、PROPNAMEで指定した名前のプロパティを削除する |
status | status [TARGETS] | TARGETSについて、作業用コピーファイルやディレクトリの状態を出力する |
diff | diff [TARGETS] | TARGETSについて、ローカルファイルの変更点をdiff形式で出力する |
update | update [TARGETS] | TARGETSについて、リポジトリから作業用のコピーに変更を反映する |
cleanup | cleanup [TARGETS] | TARGETSについて、再帰的に作業用コピーのクリーンアップやロックの除去、そのほか終了していない操作などの後始末をする |
revert | revert [TARGETS] | TARGETSについて、元の作業ファイルを復旧する(ローカルファイルに対するすべての操作をアンドゥする) |
表7 TARGETSはローカルのファイル/ディレクトリ名、REPOSPATHはリポジトリを表すURLである |
WebDAVの標準化は軌道に乗り始めたばかりであり、大きな標準化プロジェクトがいくつか走っている。DASLはリソースの検索に関して、ACLはリソースのアクセスコントロールに関して、DeltaVはバージョン管理についてそれぞれ標準化を行っている。それぞれのプロジェクトのページは、以下のとおりである。
最後に、もっとWebDAVについて知りたいという方のために、参考となるURLや資料を挙げておく(一部再掲)。
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