ここではワンセグの技術的な仕様を紹介します。規格をすべて解説していくときりがありません。そこで、ポイントとなる技術をいくつかピックアップして紹介したいと思います。
・ISDB-T(Terrestrial Integrated Services Digital Broadcasting)
デジタルテレビ放送の規格の一種(後述するが、この規格は国や地域によって違う)。以下に述べる映像・音声圧縮技術やメタデータ規格、変調方式を採用している。
・メタデータ記述規格:BML
一番の特徴的な規格がこの「BML(Broadcast Markup Language)」。ワンセグ(固定テレビ向けの地上デジタルも同様だが)は音声と動画だけでなく文字による情報も配信が可能で、その文字データを配信するための記述言語がBML。「ブロードキャストマークアップランゲージ」という名のとおり、マークアップ言語で「XHTML」をベースに、放送向けに動画・音声の制御が拡張されたものとなっている。
・動画規格:H.264/MPEG4-AVC
動画の規格の一種。固定テレビ向けの地上デジタル放送ではMPEG-2が採用されているが、ワンセグでは「H.264/MPEG4-AVC」という違う規格になっている。H.264の特徴は圧縮効率がとても高く、MPEG-2より2倍以上のデータ圧縮が可能といわれている。
・音声規格:MPEG-2 AAC
同じ音質でもMP3よりも1.4倍ほど圧縮効率が高く、固定テレビ向けの地上デジタル放送でも同じ規格が使われている。またオプションでSBR技術という拡張機能を使用すれば、AACの帯域の半分しか使わずに同等の音質が再現できる。ファイル拡張子が「.m4a」「.m4b」「.3g2」「.aac」はMPEG-2 AACを利用しているもの。
・デジタル変調方式:OFDM
「変調」とは、電波に対して情報を載せることを意味する。アナログの変調方式は「AM」「FM」「PM」の3つの種類が存在する。ワンセグの変調方式「OFDM」(orthogonal frequency division multiplex:直交周波数分割多重方式)というデジタル変調方式が使われている。日本やヨーロッパのデジタル放送の規格や無線LANのIEEE 802.11a/gでも使用されている。
・解像度:QVGA 320×240
VGAの1/4の画面サイズ(Quarter=4分の1)であるQVGAを採用。
●海外にもワンセグはあるの?
日本でも始まっているワンセグですが、海外ではどのような状況になっているのでしょうか? 技術的な違いをポイントに見ていきましょう。
・ヨーロッパ
ヨーロッパでもイギリス、ドイツ、フィンランド、イタリアが、携帯電話向けの地上デジタル放送を、現在試験的に放送をしており、本放送は2006年中にイタリアが予定しています。放送規格は日本と違いDVB-H(Digital Video Broadcasting for Handheld)という規格が採用されています(日本は上記に述べた「ISDB-T」)。携帯電話やポータブル機器で閲覧するときのバッテリー持ちを考え、消費電力を抑えた受信方式となっています。
・アメリカ
アメリカでは携帯機器向けのデジタル放送は2つの方式が混在しています(2006年9月現在、どちらも本放送はされていない)。1つはヨーロッパと同じDVB-H。もう1つは米Qualcomm(クアルコム)社が開発した、Media FLOという形式です。
日本のワンセグはUHF帯の幅6MHzの帯域を13に分けて、その1つを使用します。Media FLOはUHF帯の幅6MHz帯域を20に分割し、それらをすべて使用することができます。端的にいえば、日本のワンセグよりも情報量も多く、多チャンネルということです。
・韓国
韓国のモバイル放送サービスはS-DMB、T-DMBという2つの規格があり、どちらも本放送が行われています。S-DMBは衛星を、T-DMB地上波を使ったサービスで、日本のワンセグはT-DMBに近いといえます。
S-DMBは携帯電話会社「SK Telecom」の子会社である「TU Media」1社が運営し、有料放送となっています。一方はT-DMBは無料でテレビ局やケーブル局の6社が放送しています。T-DMBはヨーロッパの規格「Eureka147」をベースにしたもので、1チャンネルの利用帯域が狭いのが特徴的です。
いかがでしたでしょうか。駆け足の説明になってしまったので、もっと詳しく知りたい人は自分で調べてみましょう。正直なところ、ワンセグの技術的はそんなに驚くべきところがありません。では、なぜいまワンセグはここまで騒がれているのでしょうか。次のページではワンセグの登場によって何が変化するのか、考えてみましょう。
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