これだけは押さえておきたい退職の基礎知識これだけは押さえておきたい退職の基礎知識

手順、書類、人間関係―― 退職活動の「一般教養」を伝授しよう。

» 2006年11月21日 00時00分 公開
[千葉大輔@IT]

 転職活動と切っても切れない関係にある退職活動。しかし、退職という活動を経験する機会はあまりない。退職に当たって何から手を付けていいのか分からないケースも多々ある。特に初めての退職の場合、その作法がまったく分からないこともあるだろう。そのため、退職活動がスムーズに進まない場合もあるようだ。そこで退職活動の一般教養というべき基本的な事項について、人事採用の経験がある、弊社社員 鈴木麻紀氏に話を聞いた。

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退職は手順を守って円満に

 いざ退職をしようとしたとき、まずしなくてはいけないことは何だろうか。それは退職の意思を直属の上司に伝えることだ。そこで上司と退職までのスケジュールを相談し、退職日が決まった後にその日付の退職届を出すのが一般的な流れであり、礼儀とされる。しかし退職の作法を知らないために、この手順を間違ってしまう人がいると鈴木氏は指摘する。「上司への相談もなく突然退職届を出してしまうケースや、退職の意思表示や退職届を直属の上司ではなくその上の上司や人事担当者に伝えてしまうケース、上司よりも先に同僚に話してしまいそれが噂となって上司の耳に入るケースも見られます。中には留守番電話に『辞めます』という連絡がきてそれっきりということもありました」

 事前の相談なしに退職届を提出してしまうと受け取る上司に、あまり良い印象は持たれないのはもちろんのこと、「初めに人事担当者に退職の意思を伝えてしまうと、上司の管理能力が疑われるので迷惑をかけてしまいます。また、人事担当者からも『礼儀を知らない』と悪い印象を抱かれてしまうかもしれません」と鈴木氏は話す。

 ここで「どうせ辞める会社だから、そんな手順関係ない」と開き直ってはいけない。「上司との関係がこじれてしまうと、退職活動そのものがこじれてしまう可能性があります。また、狭い業界ですから今後も退職した会社とご縁が発生する可能性がないとはいえません。場合によっては退職した会社が顧客になることもあります。そのため、できるだけ円満に退職した方がよいのです」と鈴木氏。いくら上司に対して思うところがあったとしても、決して感情を逆なでするような態度を取ってはいけない。きちんとした手順を踏んで上司との関係を良好に保つことが、円満な退職への近道なのだ。

 「上司を自分の退職プロジェクトの味方に付けることが重要です。スケジュールの調整など、上司に協力してもらうことができれば大分スムーズに事が進みます」

 また、退職日を上司と決めるときは、ある程度期間に余裕を持たせよう。「法律上では2週間前までに退職の意思を伝えれば退職できます。しかし、自分の代わりの人をアサインしたり、業務の引き継ぎなどを考えるとある程度の期間は必要です。また、会社の就業規則で退職に関する規定が定められている場合があります。しっかり確認しましょう」。退職は計画的に行おう。

退職理由は「大人のうそ」でクールに伝える

 退職の意思を伝えるときに必ず聞かれる退職理由。退職理由は人によってそれぞれ異なる。鈴木氏もこれまでさまざまな退職理由を聞いたことがあるという。「『病気』『留学』はよく聞きます。女性の場合は『結婚』や『妊娠・出産』という理由もありますね。ほかには『理由をいいたくない』という人やひたすら『ごめんなさい、ごめんなさい』と謝る人、『職場に窓がなくて息が詰まるから』という人もいました」。これらの理由の中には本当のこともあれば、うそもある。上司や人事担当者に退職理由を尋ねられたとき、相手と自分を傷つけないため、ネガティブな理由はいいづらいために困ってしまう場合もあるのではないだろうか。そんなときどうしたらよいのか。

 「『やりたいことがある』などの個人的な理由にするのが無難です。もし転職を機に会社を辞める場合、素直に『転職が決まったから』と伝えるのも1つの手です」と鈴木氏は話す。その場合、転職先については決していわないこと。また鈴木氏は「『起業する』『友人が新しく飲食店を開くのでその手伝いをする』といった理由は、もちろん本当の場合もありますが、上司や人事担当者は『うそかもしれない』と思いつつも、その気持ちを受け止めます。お互い『大人のやりとり』としてこのような理由を挙げる方法もあります」とも。

 そして、気を付けなければいけないのは「決して悪口をいわない」ことだという。「会社の悪口をいうと上司の心証が悪くなります。同様に同僚に対して会社の悪口をいうこともNGです」。自分は辞めるので気軽に会社への不平不満をいってしまうかもしれないが、会社に残る同僚にとってみれば、悪くいわれた環境で働き続けるのでやはりいい気分はしないだろう。

退職届は確実に相手に渡す

 上司と退職日の相談が終わると次はいよいよ退職届を提出する。退職届に書く理由は「一身上の都合」。あとは退職届を上司に渡すだけだが、この退職届の提出においても、退職の作法を知らないためにあまり褒められない方法で提出するケースがあるという。例えば、「電子メールの本文にそのまま書く」や「FAXで会社に送る」、上司の机の上に「クリアファイルに入れて置いておく」といったケースだ。

 「電子メールやFAX、机の上に置いただけではちゃんと相手に渡ったか、ちゃんと見てもらえたか分かりません。渡した渡していないという話になってしまうことや、どっちの責任か追及し合うことはよくありません。見たか聞いたか確認できない手段で退職届を渡すのはやめた方がよいでしょう」

 また「会社のプリンタで退職届を印刷したが、そのまま取り忘れてしまって会社全体に退職が広まった」ケースもあるようだ。くれぐれも退職届の取り扱いには気を付けたい。

そのほか知っておきたい作法

 退職活動で気を付けたいことはほかにもある。「自分の転職が決まったからといって同僚を誘うのはやめましょう」と鈴木氏は話す。自分は内定が出ていても同僚は一から転職活動をすることになる。同僚にも内定が出るとは限らない。もし同僚の転職が成功したとしても、転職先の企業で「こんなはずではなかった」と同僚が思う場合もあるようだ。「こういった場合、あまりうまくいったという話を聞きません」

退職の基礎知識を押さえて幸せな転職を

 退職活動は想像以上にエネルギーを消費する。ちょっとした間違いや不手際で退職活動が長引くとそれだけ負担が掛かる。できるだけ円滑に退職活動を行い、負担の軽減を考えることが必要だ。今回紹介した退職の作法で円満な退職をして、次のステージでの活躍に力を注ぐべきだろう。

円満に退職するための3カ条

(1)退職の手順を守る

(2)上司と良好な関係を築く

(3)退職届は相手に必ず届くようにする


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