前回の「いまさら聞けない、“Ajax”とは何なのか?」の説明の中で、Ajaxの定義の1つとして「XHTMLとCSSを使った標準規格のプレゼンテーション」というのがありました。前回の記事では、この部分をしっかり解説できなかったので、今回はこれについて解説をしましょう。
といっても、Ajaxの補足説明が今回の目的ではありません。HTML/XHTMLとCSSを使った「Web標準」について紹介します。
「Web標準」という単語はよく耳にしますが、具体的にどんなものか? HTML/XHTMLとCSSとどのような関係があるのか? さらに、HTML/XHTMLやCSSって何? といった点について見てみましょう。
AjaxやXML、JavaScript…… いままでこの連載で取り上げた技術用語は、知らない人は名前だけ見てもピンと来ないものばかりでした。しかし、この「Web標準」は知識がなくても何を意味するか大体分かりますね。
けれども、「“Web標準”って、Webを標準化することなんでしょう。しかし、Webってそもそも、確かHTMLとかで標準化されているみたいだし、なんでいまごろになってイチイチ“Web標準”なんて出てくるの?」と疑問を持つ人もいるでしょう(するどい!)。確かに、そのような疑問を持つことは当然です。
では、まず「Webを標準化する」ことはどういうことを意味するか、解説しましょう…… とその前に「Web標準に至るまでの歴史」をちょっと振り返りましょう。
実は2000〜2002年ぐらいにかけてまで、Webに関する技術はかなり適当な部分がありました。HTMLの記述は同じでもブラウザによって表示が違っていたり、CSSが対応していないなど、Webページ制作者にとっては非常に大変な時代でした。
なぜそんな事態になったかというと、1990年の後半はNetscape社のNetscape Navigator(以下、NN)とMicrosoft社のInternet Explorerが(以下、IE)どちらか多くのユーザーを獲得するか、熾烈(しれつ)な競争をしていました。これが俗にいう「第1次ブラウザ戦争」というものです。
Webに関する技術は「W3C」という標準化団体があるのですが、NNもIEもお互いに勝利を目指し、W3Cを無視して勝手にHTMLを拡張していきました。そして、その結果としてHTMLの仕様がきちんと標準化されず、ぐちゃぐちゃになってしまいました。いま考えると、かなりむちゃくちゃな話ですね。
「第1次ブラウザ戦争」はIEの勝利で終わりました。しかし、圧倒的なシェアを占めたことが遠因となり、IEのセキュリティホールが多数発見されます。そこで、セキュリティ的にもIEより安全で、RSSリーダーやタブブラウザといった多機能さ、またWeb標準に準じたエンジンを搭載したブラウザ、Mozilla FirefoxやOperaがリリースされ、再びブラウザ間でのシェア獲得合戦が始まりました(これを「第2次ブラウザ戦争」と呼びます)。
この第2次ブラウザ戦争では、W3Cが勧告する「Web標準」にどれだけ準拠しているか? という点も焦点になりました。IE 6はあまりWeb標準に準拠しておらず、よりWeb標準に準拠しているMozilla FirefoxやOperaが、IE 6に比べてアドバンテージを得ました。
まだまだIEのシェアは8割以上を占めているようですが、ヨーロッパを中心にMozilla Firefoxの利用者は急激に増えているようなので、IEもうかうかしていられません。
では、「Web標準」が目指すものはいったい何でしょうか? それは、「ユーザーが平等に情報を得られる環境を作ること」です。これはIE 6では見られるけど、Firefoxでは見られないといった問題をなくすことはもちろん、視覚障害者、聴覚障害者や高齢者なども、健常者と同様に情報が入手できることを目標としています。
例えば、Webを読み上げる音声ブラウザ(視覚障害者向け)を利用してる人に対しても、きちんと情報が伝えられるように、音声や画像にはそれが何を表すのかテキストを付ける、ルビを振る。目が悪い人にも読みやすいフォントや色使いに変更できる、といった具合です。
このようなアクセスのしやすさを「Webアクセシビリティ」といいます(accessibility=利用しやすい)。「Webバリアフリー」といい換えた方がイメージしやすいかもしれません。
いままでのHTMLでは、なかなか「Webアクセシビリティ」に配慮したサイトの構築が難しいものでした。そこでHTML/XHTMLとCSSを使ったWeb標準化の登場です。
次のページでは、HTML/XHTMLとCSSを使ったWeb標準の仕組みやHTML/XHTMLの違いについて解説します。
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