本連載は、これからプロジェクトマネージャへの転身を考えている方、現在PMBOKベースでマネジメントされているプロジェクトに参加しているメンバーの方などを対象にしています。『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド第3版(日本語版)』(以下、PMBOKガイド)の解説を行いながら、プロジェクトマネジメントの基本を解説していきます。なお、各小見出しの横には、対応するPMBOKガイドの章を記載していますので、PMBOKガイドを学習する際の参考にご利用ください。記事の最後には演習問題を用意しました。復習にご利用ください。
連載第2回「プロセスに着目し、統合マネジメントをイメージする」から、PMBOKの9つの知識エリアの学習が始まりました。前回のプロジェクト・スコープ・マネジメントの知識エリアに続き、今回は「プロジェクト・タイム・マネジメント」の知識エリアを学習しましょう。
第4回 計画命のタイム・マネジメント
今回は、「プロジェクト・タイム・マネジメント」の知識エリアです。タイム・マネジメント=スケジュール・マネジメントと考えると、比較的イメージしやすい知識エリアではないかと思います。この知識エリアのプロセスをまとめると表1のようになります。
表を見て分かるとおりこの知識エリアのプロセスの大半は計画プロセス群に集中しています。少し乱暴ないい方になりますが、タイム・マネジメントとは、しっかりとスケジュールを作成したら、後は進ちょくに合わせてスケジュールに遅れがないか監視していくことであると表現できます。
なし
アクティビティ定義
アクティビティ順序設定
アクティビティ資源見積もり
アクティビティ所要期間見積もり
スケジュール作成
なし
スケジュール・コントロール
なし
それでは、個々のプロセスの特徴を見ていきたいと思います。
この知識エリアの作業は、スコープ・マネジメントの知識エリアで作成したWBS(Work Breakdown Structure)をベースにスタートします。前回の記事「プロジェクト全体の成否を左右する、スコープ」の復習になりますが、プロジェクトのスコープは管理しやすい単位であるワーク・パッケージのレベルまで詳細化され、WBSという形で定義されます。このときの「管理のしやすさ」には、コストの見積もりや作業の責任の所在をはっきりさせるといったことを含んでいます。これに対してPMBOKでは、スケジュール管理のしやすさだけに的を絞り、ワーク・パッケージをさらに詳細化したスケジュール・アクティビティ(以降、アクティビティ)を作成し、これをベースにスケジュールを管理します。そして、タイム・マネジメントの最初のプロセスがアクティビティを定義するプロセスということになります。このプロセスで行う作業は、WBS作成に似ていますので、インプット、ツールと技法、アウトプットは比較的覚えやすいと思います(表2)。
WBS作成(5章3項) | アクティビティ定義(6章1項) | |
---|---|---|
インプット | 1. (略) 2.プロジェクト・スコープ記述書 3. 〜 4. (略) |
1. 〜2. (略) 3. プロジェクト・スコープ記述書 4. ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー 5. WBS辞書 6. プロジェクト・マネジメント計画書 |
ツールと技法 | 1. ワーク・ブレークダウン・ストラクチャーのテンプレート 2. 要素分解 |
1. 要素分解 2. テンプレート 3.〜5. (略) |
アウトプット | 1. (略) 2. ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー 3.WBS辞書 4. 〜 6. (略) |
1. アクティビティ・リスト 2. アクティビティ属性 3.〜 4. (略) |
表2 WBS作成プロセスとアクティビティ定義プロセスの比較(一部省略) |
次に、すべてのアクティビティをどのような順番で作業していくかを決定します。このとき着目するのが、アクティビティ間の依存関係です。依存関係には、「強制依存関係」「任意依存関係」「外部依存関係」の3種類があります。
すべてのアクティビティの作業順序が決まったら、作業の流れを図で表現します。これをスケジュール・ネットワーク図といい、アクティビティ順序設定のプロセスの主要なアウトプットとなります。
このプロセスの役割は、名前から簡単に想像できると思います。このプロセスでは、1つ1つのアクティビティ作業にどのような資源(リソース)がどの程度必要かを見積もります。
見積もる資源には、作業を実施するための機器や物資、人などが含まれます。特にIT系のプロジェクトの場合は人が主要なリソースとなります。このプロセスで見積もった必要資源は、「アクティビティ資源に対する要求事項」としてまとめられます。
今度は、1つ1つのアクティビティ作業に要する時間の見積もりを行います。見積もりの手法には、「類推見積もり」「係数見積もり」「3点見積もり」などがあります(表3)。見積もりの結果は、「アクティビティ所要期間見積もり」となり、アクティビティ属性が更新されます。
アクティビティ所要期間見積りで使用される見積もり手法 | |
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類推見積もり | 過去の類似したアクティビティの実績値に基づいて所要期間を見積もる |
係数見積もり | 単位作業量当たりの所要期間と作業量から所要期間を見積もる。 例えば、10?の壁にペンキを塗るのに30分かかる場合、200?では、0.5×20=10時間と見積もる |
3点見積もり | 最も起こりそうな場合の値(最頻値:m)、最も早く終わった場合(楽観値:o)、最も遅く終わる場合(悲観値:p)の3つの値を使用して所要期間を見積もる。 3つの値の平均から求める場合や、加重平均から求める場合がある。 PERT手法http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/pert.htmlでは、(4m+o+p)/6として見積もる。 |
表3 見積もり手法 |
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