人生100年時代、キャリアを自分で築いていくためにはどうすればよいのでしょうか? エンジニアの主体性と自律について考えます。
皆さんは、「将来のキャリア」について考えることはありますか? ここでいう将来のキャリアとは、「中堅世代になったら○○をしよう」とか、「ベテラン世代になったら□□をしよう」といった、将来に対する計画やイメージです。
もっとも、未来はどうなるか分からないもの。キャリアなんて、そんなに深く考えなくてもいいのかもしれません。キャリアという言葉の語源を調べていくと、ラテン語の“carraria”にたどり着きます。これは、車などの轍(わだち)を意味し、それが転じて「人がたどる人生の経歴や遍歴」を意味するようになったといわれています。
轍がそうであるように、キャリアというのはこれまで歩んできた「過去」に刻まれるもの。そう考えると、その時々で一生懸命仕事をしてさえいれば、キャリアはしっかりと、自分の後ろに刻まれていくものです。
ただ、人生が直線的で、右肩上がりに歩めればいいのですが、実際は紆余(うよ)曲折があるものです。また、近年は人生100年時代といわれ、いままでよりも長く生き、働くっぽい。「いま取り組んでいるこの経験が、将来、本当に役に立つのかな?」と考えると、正直、よく分からないのが実情です。
そう考えると現代は、キャリア的にみても「不透明な時代」だといえそうです。そんな、不透明の時代に、ボクたちはどんなマインドで、どんな道を歩んでいけばいいのでしょうか?
最近幾つかの企業で、中堅、ベテラン世代の「キャリア自律」を支援するプログラムに、メンターのような位置付けで関わらせていただく機会が増えています。いま関わっているのは、技術系の仕事をされている皆さんです。
ここでいうキャリア自律とは、「いままでキャリア形成は会社が支援していたけれども、これからは自分で考え、築いていってくださいね」という取り組みです。
一見すると「え? ひょっとしてオレ(ワタシ)は、会社にとって不要ってこと?」のように、ネガティブに聞こえるかもしれませんが、実際は「ビジネスパーソンとしていかに自律するか?」という取り組みです。会社としても、依存的な人が集まっている集団よりも、自ら考え、行動できる自律的な人が集まっている集団の方が、圧倒的に強いですよね。
実際、これまでにご縁があった皆さんは、「いままで会社で培ってきた経験を社外にも生かせればいいな」「できれば、副業や兼業につながればいいな」「将来のために、いまのうちから準備をしておこう」「改めて自分の強みやできることは何かを棚卸ししよう」のように、ポジティブに捉えていました。
ボクは、こうした「自律を促すキャリア支援」を前向きに捉えています。なぜなら、いままで企業が行ってきた人材、キャリア教育は、年齢や役職による階層別教育が一般的です。若手従業員には手厚いものの、中堅、ベテランになるとマネジメントや組織づくりに関するものばかりで、キャリアに対しては「個人任せ」だったからです。
また、これまで特に大企業で行われてきたのは、キャリア支援とうたいながら、「多めに退職金を支払って早期退職させる」、転職支援といいながら「転職できない名ばかり支援」など、その実態は「体のいい人員整理」であるケースも多くありました。
本当の意味で、長く生き、働くためには、いままでとは違ったキャリア形成が必要です。中堅世代から、いや、何なら若いときから将来のキャリアについて考え、準備をし、長く活躍できるようにするプログラムは、とても良い取り組みだと思っています。
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