本連載は、これからプロジェクトマネージャへの転身を考えている方、現在PMBOKベースでマネジメントされているプロジェクトに参加しているメンバーの方などを対象にしています。『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド第3版(日本語版)』(以下、PMBOKガイド)の解説を行いながら、プロジェクトマネジメントの基本を解説していきます。なお、各小見出しの横には、対応するPMBOKガイドの章を記載していますので、PMBOKガイドを学習する際の参考にご利用ください。記事の最後には演習問題を用意しました。復習にご利用ください。
今回は、「プロジェクト品質マネジメント」の知識エリアです。品質という言葉は、日ごろ耳にする言葉ですので難しい言葉ではないですよね。通常は、知識エリアに含まれるプロセスの説明をするのですが、今回は少し寄り道をして、そもそも品質とは何かから見ていきたいと思います。
今回取り扱うテーマは「品質」なのですが、この品質という言葉、実は人によって解釈が異なります。皆さんは、「高品質の自動車」と聞いて、どのような自動車を想像しますか?
例えば、燃費が良い自動車、10年間走行しても壊れない自動車、最新鋭のカーナビや自動運転機能が付いた自動車などなど、人によって答えが異なると思います。これは、皆さんが自動車に何を期待するかが異なるからです。自動車を移動するための道具としてとらえる人、ステータスシンボルとしてとらえる人、趣味の1つととらえる人など、さまざまな人が多様な期待をした結果、異なる品質が定義されることになります。
本連載でベースとしているPMBOKでも、アメリカ品質協会の定義を引用して、「本来備わっている特性がまとまって、要求事項を満たす度合い」と定義されています。この中の「要求事項」が先ほどの「自動車に何を求めるか?」に相当します。
ということは、プロジェクトの品質とは、「プロジェクトのステークホルダーが、プロジェクトに何を期待するか?」に依存するので、プロジェクト・スコープにも密接にかかわりを持っていることが想像できます。また、この要求事項には潜在的なものも含まれるので注意が必要です。
品質の管理を意味する英語には2通りの表現があります。1つは、Quality Management(以下、QM)。もう1つが、Quality Control(以下、QC)です。これまで一般に日本製の製品は品質が高いといわれてきましたが、これは、不良品が少ない・壊れにくいことを指していました。不良品を出さないようにするために、テストを厳しく行ったり、製造の手順を変えたりするような活動をQC(日本的品質管理)といいます。
一方、成果物を生成するプロセスが適切に運用されているかを管理の対象とした品質向上のためのさまざまなプロセス、取り組みをQM(品質マネジメント)といいます。QMは、QCを含んだ品質管理の取り組み全体を指します。PMBOKでの品質管理の考え方は、ISO9000と同じく、品質を維持するためのプロセス全体を含みます。
それでは、プロジェクト品質マネジメントの知識エリアのプロセスの解説に移ります。この知識エリアのプロセスは下記の3つです(図1)。
なし
品質計画(Quality Plan)
品質保証(Quality Assurance)
品質管理(Quality Control)
なし
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