本記事は2008年に執筆されたものです。CMS全般の最新情報は「リッチクライアント & 帳票フォーラム」総合目次のカテゴリ「CMS/ポータル」や下記連載をご参照ください。
いまやWebサイト立ち上げ期に、Webサイトの内容を効率的に管理する「コンテント管理システム(Content Management System)」は必要不可欠。CMS製品を開発するUEIの清水氏が分類するCMSの3ユーザーと9つの機能とは?
「デザインハック」コーナー
さて今回は、これまでのようなWebオーサリング(Webサイト構築)ツールの話を少し離れて、最近話題に出ることが多くなってきた「CMS」(Contents Management System/コンテンツ管理システム)の紹介をしていきたいと思う。
CMSは、HTML(XHTML)+CSS(+Ajax/JavaScript)などのような、Webページを作成するための専門知識を必要とせずに、Webサイトのコンテンツ管理を実現する仕組みである。今回紹介するような無償のものから、大規模サイトの管理を行うことも可能な数100万円以上のものまで、幅広い価格の製品が存在する。
企業サイトを所有することが当たり前のものになり始めるとともに、「せっかくWebサイトを構築するのであれば積極的に更新して活用したい」というニーズが高まってきた。このニーズに応える形の1つが、クライアント(顧客、ユーザー)に情報を更新してもらおうという「CMS」である。
クライアントはもちろん、実は制作側にとってもメリットがあるCMSだが、まだまだ使ったことのない方も多いと思うので、まずはCMSとはどのようなものかから紹介していこう。
CMSはWebブラウザや専用アプリケーションを使用してWebで公開する情報を更新する仕組みなのだが、その際「ブログと何が違うの?」という質問を受けることが多い。確かに「Webブラウザで情報更新ができる」という点だけはブログと似ているのだが、CMSとブログは似て非なるものである。
まずはブログから解説しよう。ウェブログ(Web Log)の略称、といわれているブログの定義はなかなか難しいのだが、筆者は個人的にブログを以下のように認識している。
「コメント」や「トラックバック」などは、ほとんどのブログが備えているものだがあくまでも機能の1つであり、「Webブラウザ上でページを作り、公開ができるWebサイト」だと思っていればまず間違いない。
ブログが話題になった当初から「ビジネスの中でもブログが使えるのではないか」という質問をクライアントから受けることがあった。「何をしたいのか」によって使えるとも使えないともいえるので、まずはニーズの確認から進めるのだが、そのときのクライアントの回答は、整理すると以下の2つに大きく分類できる。
1つ目はブログの持つコミュニケーション性をビジネスに生かそうという考え方で、2つ目はブログの持つ更新性を生かしたいという考え方だ。1つ目の使い方であればブログ本来の使い方のため、デザインや更新ルールなどを頑張って決めればニーズを達成できる。
編集部注:ビジネス・ブログについて詳しく知りたい読者は、連載「ビジネスブログはじめの一歩」をご参照ください。
しかし、「Webブラウザで更新ができる」といったブログの更新性に着目し、コーポレートサイトを構築するためにブログを使用するのは、非常に骨が折れる作業である。
ブログがコーポレートサイト構築に向かない理由は、ブログは基本的に情報を時系列で管理するが、コーポレートサイトにおいて時系列で管理すべき情報は、「NEWS」や「What’s New」など企業からの一部の情報提供部分程度であることが多く、会社概要など多くの情報は時系列ではない管理が必要なためである。
ブログは、コミュニケーションを活性化させるために最適化が図られているため、コミュニケーションの必要性が低いコーポレートサイトを構築するためには不要な機能が多い。その一方で、ページごとに自由なレイアウトを行うことが難しいなど、コーポレートサイトを構築するためには問題となる制約も多い。
従って、一般的にブログをコーポレートサイトを構築するために使用することは現実的ではない、といえるのだ。
では、クライアントが簡単に情報を更新できるという点についてブログと似ているCMSは、どのようなものなのだろうか。
Webブラウザで更新ができるという意味では、ブログとCMSの差は非常に分かりにくいのだが、CMSは時系列以外の管理も可能で、ページ単位のデザイン変更が可能であるなど、ブログより自由度が高いのが特徴だ。
また、「Webブラウザで更新」と紹介したが、CMSは必ずしもWebブラウザ経由で更新されるものに限定されているわけではなく、アプリケーションタイプのものもある。アプリケーションタイプの代表といえるのが、Adobe Systemsから発売されている「Contribute CS3」だろう。
無償のものではなく本連載の趣旨には合わないので、使い方の説明は省略させていただくが、Webオーサリングツールの代表格であるDreamweaverと共通のテンプレートを使用して、ソースコードを見ることなく(※ソースコードは見ることができない)コンテンツを新規作成・修正し公開できる。
公開自体のアンドゥ機能も用意されているので、たとえ誤って公開してしまったとしても簡単に元の状態に戻すことも可能だ。Contribute内にWebブラウザ機能があるので、確認や編集ページの選択はWebブラウザと同じ感覚で行うことができる。ちなみにContributeは一部のブログ編集を行うことも可能になっている。
ブログ・CMSの違いが分かりにくくなっている原因は、それぞれが機能の充実を図っているためだろう。ブログはデザインやレイアウトの自由度を高める方向へ進んでいる。
また、ブログは携帯電話などから編集できるようになっていることも多いが、PCでの編集についてもWebブラウザだけではなく専用アプリケーションを使用した編集ができるようになっているブログもあり、これまでのブログの枠を超える機能が充実してきている。
専用アプリケーションによるブログの編集が必要かといった、ブログの高機能化に関する是非についてはここでは考えないこととするが、ブログが高機能化することによりCMS的なものになってきていることだけは事実だ。
一方、CMSが機能の一部として「ブログ機能」を持っていることもある。CMSがコンテンツを管理するための仕組みだということが理解できれば、デザインの変更機能やページの時限管理機能と同様にブログ機能があるということは理解してもらいやすいのだが、CMSとは何かという整理ができていない状況で機能を見てしまうと「ブログといったい何が違うの?」ということになってしまうだろう。
次のページでは、あらためて「CMS」とはいったい何なのかを解説し、さまざまなWebブラウザタイプのCMSを紹介しよう。
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