Analysis Servicesの管理性を向上させるために「集計デザイナ」と「属性リレーションシップデザイナ」が用意されました。
Analysis Servicesの「キューブ」(注)には、事前に多くの集計した値を保持することで、さまざまな軸の組み合わせによる検索結果を素早く返すことができます。
しかし集計を多く保持するとキューブ作成処理に時間がかかるため、ユーザーが検索しない無駄な集計値を作成しないことが重要です。SQL Serverが作成する集計には無駄な集計も含まれているため、集計のチューニングが必要になります。
以前のバージョンまでは、集計のチューニングを行うための使い勝手の良いインターフェイスは提供されていませんでしたが、SQL Server 2008では集計の組み合わせを編集できるGUIが提供されます。
キューブのチューニングで最も重要とされる集計の管理が、習熟した技術者だけでなくユーザーレベルでも行えるようになる、非常に意味のある新機能です。
注:キューブ:Analysis Servicesで用いられる概念。多次元で分析を行い、要約を作成する際に用いる。基本単位「メジャー」と、座標軸「ディメンション」によって構成される。
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またSQL Server 2005よりAnalysis Servicesのディメンションの属性間の関連性を表す属性リレーションシップが登場しました。SQL Server 2005では属性リレーションシップの設定は、ディメンションデザイナの「階層とレベル」画面で行っていましたが、属性間の関連が分かりにくく、使い勝手の良いGUIではありませんでした。
SQL Server 2008では属性間の関連をグラフィカルに表示できる属性リレーションシップデザイナが追加され、より分かりやすく、容易に属性リレーションシップの設定を行えるようになっています。
SQL Sever 2008のReporting Servicesでは、レポートの開発ツールとして従来の「Business Intelligence Development Studio」と「レポートビルダ」に加えて、新たに「レポートデザイナプレビュー」が用意されています。
レポートデザイナプレビューはOffice 2007形式を採用しており、外見だけでなく操作性も普段使用しているOfficeアプリケーションと同じ感覚で操作できます。
レポート開発からWebサーバへの配置までドラッグ&ドロップとプロパティの設定でできますので、Visual Studioのように習熟が必要なツールと違い、ユーザーは少し慣れれば簡単にレポートが作成できます。
ただし、レポートデザイナプレビューは、複雑なレポートを作成するには不向きなため、その場合はBusiness Intelligence Development Studioを使用してレポートを作成することをお勧めします。
SQL Server 2008では次の4項目が追加され、レポートの表現力がより強化されました。
カテゴリ | 機能名 | 概要 |
---|---|---|
表形式 | Tablix | SQL Server 2005までは1つの表内でテーブル形式かマトリクス形式のいずれかしか使用できなかったが、Tablixを使用することで、1つの表内で、テーブル形式とマトリクス形式を同時に表示できるようになった(図6参照) |
グラフ | グラフの追加 | SQL Server 2008からレーダーチャートやピラミッドなどのグラフが追加され、さまざまなニーズに応えられるレポートを作成できるようになった(図7参照) |
グラフ | 2Y軸グラフ | 1つのグラフ内で異なる単位を表示することができる。例えば金額と割合など明らかに単位が異なるデータを1つのグラフ内で分かりやすく表示できる(図8参照) |
ゲージ | ゲージ | 目標値に対する達成率などの比率をグラフィカルに表示することができる。以前のバージョンではBusiness Scorecard Managerなど、ほかの製品を使用しなければならなかったが、SQL Server 2008のReporting Servicesに組み込まれた(図9参照) |
表4 SQL Server 2008で追加されたレポート機能 |
今回は開発者向けおよびBIの主な新機能を紹介しました。SQL Server 2008では開発者にとって実用的な改善が多くなされていることが分かりました。またBIではReporting Servicesの機能が充実しているといえます。
今回の連載ではSQL Server 2008の主な新機能について解説を行いましたが、管理者、開発者、エンドユーザーといったそれぞれの立場で有益な機能が提供されています。
新機能については、その活用方法が徐々に見えてきましたので、6月9日にリリースされたRC版(リリース候補版)を使用してパフォーマンスの観点からの別途検証を行います。
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