「自分の人生は自分で決めること」―エンジニアの未来サミット小飼弾×ひがやすを×よしおかひろたか×谷口公一×伊藤直也

» 2008年09月16日 00時00分 公開
[岑康貴,@IT]

 「IT業界は『泥』ばかりじゃないし、いい面ばかりでもない」。9月13日、技術評論社が主催する「エンジニアの未来サミット」が行われた。定員250人の会場は満員となり、注目の高さを伺わせた。

 イベントは2部構成。第1部は「アルファギーク vs. 学生〜エンジニア業界の過去・現在・未来、そして期待と現実」と題して、ディーエイエヌ 小飼弾氏、電通国際情報サービス ひがやすを氏、ミラクル・リナックス よしおかひろたか氏、ライブドア 谷口公一氏、はてな 伊藤直也氏の5人と、学生4人がパネリストとして登壇。第2部は「エンジニア、デザイナーたちの“30代”の生き方・考え方〜あのころの理想と今を熱く語る」と題し、9人のITエンジニアやWebデザイナーが、仕事やライフスタイルについてパネルディスカッションを行った。

 会場の様子はUstream.tvで生中継された。また、Ustream.tvのチャットで書き込まれた言葉が会場のスクリーンにオーバーラップして表示されるという仕掛けが施された。会場からも指定のメールアドレスに投稿することで画面上に言葉を映し出すことができ、セッションの内容に「突っ込み」を入れるというスタイルで進行が行われた。

スクリーン Ustream.tvのチャットや、会場からのメールでの投稿が「ニコニコ動画」のようにコメントとして流れる仕掛け

「IT業界」はひとくくりにできない

 第1部では最初に、ひが氏がイベント開催の経緯を説明。「最近、IT業界に対するネガティブなイメージがメディアで書かれた。IT業界は『泥』ばかりでもないし、かといっていい面ばかりというわけでもないこと、その両方の側面を見せるイベントを開催したいと考えていた。今日はその両面を見せた上で、学生にIT業界に来てほしいというメッセージを出したい」と語った。しかし、小飼氏が会場の客層のデータを見て「20代後半が44%。IT業界に勤めている人はどのくらいいますか」と会場に投げかけたところ、ほとんどがIT業界に従事しており、「客層が当初の狙いと少し違うかも」と苦笑いした。

第1部 左から小飼弾氏、谷口公一氏、伊藤直也氏、よしおかひろたか氏、ひがやすを氏。学生の益子謙介氏、新井貴晴氏、田村健太郎氏、源馬照明氏

 よしおか氏は「IT業界といってもいろいろある、という前提をまず押さえておきたい」として、独自の分類を紹介。「対象(技術)ドメインで分けると、(1)OS、コンパイラ、RDBMSなどの、いわゆる基盤系技術、(2)企業の情報システムなどのエンタープライズ系、(3)勘定系や社会基盤系(電力送電網など)のようなミッションクリティカル系、(4)Webサービス系、(5)組み込み系などがある。一方、ビジネス形態で分けると、(a)ソフトウェア製品開発・販売、(b)SI・受託開発、(c)コンサルティング、(d)運用・サポート、(e)Webサービスというように、こちらもいろいろある。自分は(1-a)」と説明し、IT業界といってもさまざまで、話がすれ違う可能性があることを前提としないといけないと主張した。

小飼弾氏 小飼弾氏

 セッションでは、まず「『10年は泥のように働く』ってどういうことだろう」という小飼氏の問いかけに対し、それぞれが意見を出した。谷口氏は「読んでいないのでよく分からないが、泥というと汚い、嫌なイメージがある。泥まみれで仕事はしたくないという反発があるのではないか。自分は肉体労働で本当に泥まみれで働いたこともあるので問題ないが、人それぞれ、働き方にイメージを持っているので、それを一概に定義してしまっていいのだろうかという疑問はある」と話すと、伊藤氏は「『泥』を強調しすぎている記事だったと思う。あの発言は、プログラマやSEとして技術に優れていても、例えば金融システムを作るには金融業界の業務を知らないといけなかったり、業務フローを知るために下積みがあったりして、10年くらいしないと一人前のプログラマやSEになれないよ、ということをいいたかったのだと思う。一方で学生側は技術力に自信があって、早く活躍したいと思っていた。そこにギャップがあったのではないか」と話した。

 また、「実際に10年かかるかというと、若干そういう感じはなくはないと思う。自分も最初は早くから第一線で活躍したかったが、実際にやってみるとできなかった。なぜかというと、どんなに個人でプログラムが上手に書けても、会社で作るものは大勢で作るものなので、その方法論を学ばないといけない。趣味で書くプログラムと仕事での大規模なシステムではノウハウが違い、そこも学ばないといけない」と主張。「10年は長過ぎるかもしれないが、下積み期間は必要。極めて常識的なことをいっていたと思う」と話した。

 よしおか氏は「IPAの理事長という立場の人間が不用意な発言をしているのが、困っちゃったな、という印象があった。IT業界を十把一絡げにしてしまっているのが問題。細かいセグメントで分けていなかった。メディアは面白おかしく書くのが仕事なので、もうちょっと言葉を選んでほしかった」と少し違った視点で話し、若い人に向けて「ソフトウェア開発の経験値を上げるために、オープンソースは意義がある。必ずしも会社勤めでなくとも、学生でも経験を積むことができる。学生時代から助走期間としてトレーニングを積むという戦略があり得る。会社で思い通りにいかなくても、したたかに生きる戦略は存在する」と語った。

 ひが氏が「学生にも聞いてみましょう」というと、学生からは「まだ実際に仕事をしていないので分からないが、他の業種や職種、例えば営業なども必死に泥のように働くのは変わらないのではないかと思う。なぜこの業界のこの職種だけ取り上げられるのだろうか」「近年、IT業界が注目されるようになったからではないか」などの意見が挙げられた。小飼氏はこれを受けて、「泥というのは、日が当たらないというイメージを内包しているのだと思う。自分のしたことが評価されないということ。そこが問題」と自身の意見を述べた。

「自分の人生は自分で決める」

 さらに小飼氏は「プログラマ35歳定年説」にも言及。「大学を出て10年間下積みがあって、そのあと日が当たるとする。そうなると、35歳まで3年間しか日が当たらないことになってしまう」と語った。ひが氏はこれに対し、「自分がオープンソースにかかわり始めて、プログラマとして世に認知され始めたのが35歳ごろ。35歳定年説はどうでもいいのかなと思う。一般にいわれているのは、管理職になって単価の高い作業をしなければならなくなるのが35歳ごろということだと思う。プログラミングというものにきちんと価値を付けられれば、35歳を超えてもいくらでもプログラムは好きに書ける」と自身の経験を元に話した。よしおか氏も「人のせいにしては駄目。自分の人生は自分で決めること。法律で決まっているわけではないのだから、プログラマをやりたいなら、何歳になってもやればいい」と語った。

谷口公一氏 谷口公一氏

 「比較的早い段階から日が当たっていたというイメージがあるが、実際どうだったか」と小飼氏が伊藤氏と谷口氏にたずねると、伊藤氏は「入社1年目くらいは、泥というと表現が悪いが、下積みはやっていた。自分の作ったプロダクトが外に出て、評価してもらったのが社会人3年目くらい」と話し、「35歳定年説に関係なくプログラマがやれる人は問題ではない。問題は、会社の中にいて、どうしたらひがさんやよしおかさんのようになれるか分からなくて、普通に過ごしている人。そういう人は、『泥』や『35歳』という言葉が見えてしまって、不安に感じていることだと思う」と意見を述べた。自身は「25歳くらいのときに35歳定年説を初めて聞いて、愕然とした。もうすぐ31歳になるが、管理の仕事が増えてきている。それが嫌かというと、意外と管理の仕事も面白いと感じている。必ずしも35歳に近づいて、管理の仕事が増えることは一概に悪いことというわけでもない」というが、「無自覚に、自分がどうしたらいいか分からないまま35歳くらいまでのんびり過ごしていて、そのまま管理職になってしまうと、面白みを感じることができないし、自分で選択した結果ではないので、あまり幸せな結果にはならないと思う」と警鐘を鳴らした。谷口氏は「もともと別業界から入ってきたんですが、コードを書くのが楽しかった。下積み時代があったからこそ、いまがある」と振り返るが、「20代後半で『コードを書くのはもう嫌だ、早く上流がやりたい』という人もいる」と話し、「コードを書くのが嫌な人は35歳までにそこから別のことをする場所に移ることを考えればよいし、35歳以降もコードを書いていたい人は、それを可能にしてくれる環境を自分で選んで進んでいかないといけない」と述べた。

コードは自分のものか

伊藤直也氏 伊藤直也氏

 よしおか氏は「日が当たらない」という問題に対し、「受託開発だと、コードは自分のものではない。オープンソースだと、コードは自分のものとして、自分の名前と同一化できる」と、受託開発とオープンソースの違いについて提起。小飼氏はそれを受けて、すでに起業してCTOを務めている学生に「コードは自分のものという意識はあるか」と尋ねたところ、「自分のものという意識はない。コードそのものにはそれほど興味がない。そこからどんなものができるかが重要だと思う」と回答。小飼氏をはじめとしたパネリスト陣は、考え方のギャップに驚きを見せた。

 伊藤氏はこの回答を受けて、「世の中を変えるようなプロダクトを作るなら、技術を知らないといけない。知らなければ発想ができない」と主張。「知っていることで、逆に発想の限界を感じるのではないか」との学生の意見に対し、よしおか氏は「それは違う。できるかできないかは、やってみないと分からない。できないかも、という限界は自分が決めている」と断言し、「大人は若者の背中を押さないといけない。弾さんもいっていることはよく分からないが、本人は背中を押しているつもり」と会場の笑いを誘った。

プログラマもマネージャも「両方大切」

 よしおか氏は「典型的なシステムインテグレータ(SIer)にいるひがさんだが、多くの人が受託開発のような仕事を延々しているなかで、ひがさんはそうした業務をしつつ、Javaに出合い、自分でフレームワークを作り、それを会社にも認めさせ、ビジネスにした。ある意味、好き勝手できるようなところまで自分で来た。そういう戦略は参考になると思うので、教えて欲しい」とひが氏に質問。ひが氏は「Seasar以前は、普通のSIerにいる人だった。ただし、もともとプログラミングをする方が好きで、人を管理するのは好きではなかった。受託して、それをパートナーに丸投げして、差額をもうけるビジネスは今後絶対に崩壊するといい続けてきた。ちょうど会社自体も、コードが書ける人を育てていかないといけないと変わってきていた時期だったので、オープンソースソフトウェアを出して、コードを書けるよというのを会社に認めさせることができた」と自身の経験を話した。よしおか氏は「それを誰にいわれるでもなく、自分でやったということが重要。多くの人は思うだけで実際に手を動かさないが、少なくとも不可能ではないことをひがさんは証明してしまった」と話し、それに対して小飼氏が「不可能ではないけど、よくあるのは、運が良かっただけじゃないかという話がある」と語ると、「宝くじは買わないと当たらない」とよしおか氏は反論。ひが氏は、「SIerにいて、本当はプログラミングが好きで、SEからマネージャへのキャリアパスが引かれていることが気に入らない人や、できれば変えたいけど仕方がないと感じている人は、たくさんいると思う。そういうときに、年齢を重ねたらマネージャにならないといけないと思うよりは、思い切ってオープンソースなど、プログラミングをきちんとやって、世の中に認めさせるようなことをしないといけない。最初の一歩を踏み出さないと、人生は何も変わらない」と悩んでいる人にエールを送った。

よしおかひろたか氏 よしおかひろたか氏

 一方で、小飼氏は「オープンソースがいいという話が出ているが、実はオープンソースのプロジェクトはマネージャが不足気味になる」と、マネージャの必要性にも言及。伊藤氏も「マネジメントは非常に重要。メンバーの能力を引き出して、製品やビジネスに結びつけるということは、マネジメントの仕事だと思う。この手のカンファレンスでコードを書くのが大事という話になると、管理は適当でいいじゃんという雰囲気になりがちだが、実際は両方大切」と話した。ただし、「マネージャには技術力が必要。技術力がないと、メンバーの能力を判断できない」と付け加えた。よしおか氏も「マネジメントの専門性を育てるのも重要。プロとしての経営者やマネージャを育てる必要がある」語った。

 会場から「学生時代にコードを書く経験がなく、よく分からないままSIerなどに入ってしまう人が多い。そこが一番問題なのではないか」という質問が出ると、「対策はない。自分の人生は自分で決めるもの」(よしおか氏)、「人のせいにするのはやめよう」(小飼氏)と断言。伊藤氏は「少し個人責任論に偏りすぎかなと思う」とフォローしつつ、「自分もプログラムを書くようになったのは、会社の内定をもらってから。入ってみて、技術力がないと大変だと気付き、仕事が終わった後はずっと本を読んで勉強していた。それがいまに生きている。勉強も努力もしないけど、会社にいればスキルが身に付くという業界ではない」と自身の経験を語った。また、「勉強をする暇がないほど忙しければ、思い切って会社を辞めるしかないと思う。辞めても意外とたいしたことはない」と主張した。

下請け構造はなぜできた?

ひがやすを氏 ひがやすを氏

 小飼氏が「SIerというのがよく分からない。外注というのはなぜ始まったのでしょうか」と質問を投げかけると、ひが氏は「いろいろな説があるが、1つは雇用の問題。日本は一度雇用すると、めったに辞めさせることができない。システム開発はずっと続くわけではないので、ユーザー企業は開発要員を社員として囲うのがつらい。だからSIerに外注する」と説明。さらに、「SIerも常に仕事がたくさんあるわけではないので、社員を大量に抱えて仕事を回すのはつらい。だから、仕事の何割かを下請けに回すという、下請け構造が発生した」と業界の構造を解説した。

 学生から「中国やインドは人件費が安く、頭がいいとして注目されている。こういう(下請け構造などの)問題は中国やインドでは起こっていないのか」という質問が上がると、小飼氏は「知っている限りでは、一次受けの会社が何千人規模で非常に大きく、その下がない。一次受けといっても、先進国の企業の下請けになるのだが、その下にはいかない」と実情を話した。「今後、中国やインドでも下請け構造の問題は起こってくるのか」という質問に対しては、よしおか氏は「未来のことなので分からないが、技術に対してどれだけ真面目に取り組んでいるかということだと思う。丸投げに技術へのリスペクトはない。中国やインドの企業は技術に誇りを持っているように思える。それらと日本のSIerは戦わないといけないが、すでに勝負はついている」と主張。また、これは「技術者ではなく、経営の問題」と話し、「技術には価値があると認めさせるギークが日本には少ない。高度な技術に対する対価をきちんと得られるようなビジネスモデルが作れていない。『ギークとスーツ』などと対立させられることが多いが、どちらにとってもお互いが必要」とまとめた。

ブラック企業を選ばないようにするためには?

 IT業界全体に関しては、学生から「自己責任論のような話が出ているが、それができる人はいいとしても、自己責任に耐えうる少数の優秀な人しか集まってこなくて、IT業界が盛り上がらないかもしれない。それは自分は嫌」という意見が上がった。伊藤氏は「自己責任の問題を回避するには、学生さんがいい会社を選べるような情報があればいい。逆に、学生さんはどういう情報があればいい会社が選べるのか」と質問。学生は「求人情報サイトで載っている情報以外は、どう取りに行っていいのか分からない」と問題点を指摘した。伊藤氏は「業界構造が悪いとなると、構造を変える必要がある。構造を変える一番シンプルな手法は淘汰。学生さんが、いわゆる『ブラック企業』を選ばないようにする必要がある。ただ、選ぶには企業側からの情報が必要」と主張した。

 学生は「情報は不足している。文字情報だけでは伝わらない。一番いいのは仕事現場を見ることなので、もっとインターンなどを受け入れて欲しい」と話した。「おっしゃる通り」(よしおか氏)、「自分の会社のことを『出す』のが重要」(ひが氏)と、パネリスト陣も同意した。

「『ひがやすを飲み会』やります」

 全体のまとめとして、小飼氏は「日本の業界をどうする、というよりは、まず自分をどうするかの積み重ねでしかないと思う」と「個人責任論」の重要性を主張。谷口氏は「全体的にマッチョな意見が多くて、聞いていた人はあまり腑に落ちていないのではないか。SIerなどで不満を持っている人は、自分の『売り』に気付いてない人が多いと思う。それを自分で見つけて、自分で動く勇気が必要」と語った。伊藤氏は「学生さんはステレオタイプな情報に毒されている印象がある。それを変えるために自分ができることは、自分の産業や企業を大きくすること」と意気込みを見せた。よしおか氏が「自分の人生は自分で決めるしかない。東京は毎日のようにIT系の勉強会が開かれているし、インターネットもあるので、いくらでも勉強できる。自分が積極的になれば、変えられるチャンスが広がっている」と「行動すること」の重要性を説くと、ひが氏も「まずは行動しろ、というのが一番いいたかったこと。自分も月に1回、『ひがやすを飲み会』というのを開催していこうと考えている。学生でも社会人でも、ぜひ参加してほしい」と宣言した。

 話題が多岐に渡った印象のある第1部だが、「行動することが重要」であり、「自分の責任は自分で取る」という自己責任論が結論らしきものとして見えた。一方で、伊藤氏が提唱した「学生に対してもっと企業の情報を出さないと、自己責任で動くことすらできない。情報の非対称性をなくして、よくない企業に学生が入らないようにするのが重要ではないか」という意見は、自己責任論の前提として非常に重要な視点であるように記者は感じた。

「一緒に作る未来」

左から山田あかね氏、米林正明氏、和田修一氏 左から山田あかね氏、米林正明氏、和田修一氏

 第2部では、エスカフラーチェLLCの山田あかね氏、Abbyの米林正明氏、楽天の和田修一氏、電通国際情報サービスの大谷晋平氏、モバイルファクトリーの松野徳大氏、ロケットスタートの古川健介氏、伊藤忠テクノソリューションズの高井直人氏、アイ・ティ・フロンティアの湯本堅隆氏、グロースエクスパートナーズの庄司嘉織氏の9人がパネリストとして登壇。30代のエンジニアやデザイナーの仕事やライフスタイルについての話した(ただし松野氏は24歳で、本人もそのことを指摘していた)。

左から大谷晋平氏、松野徳大氏、古川健介氏 左から大谷晋平氏、松野徳大氏、古川健介氏

 なぜIT業界に入ったのか、またIT業界の魅力とは何か、という質問に対しては、「古物商をやりながら、余った時間でHTMLやCSSの勉強をしていた。いつの間にかそれが仕事になってしまっていた」(山田氏)、「もともとプログラムが好きだった。ほかの業界に比べて、世界に向けて勝負がしやすいと思う」(米林氏)、「入った理由は特にない。ユーザーの反応がダイレクトに見られるのが一番のモチベーション」(和田氏)、「最初はバイトでコードを書いたり運用監視をしたりしていた。そこから興味を持ってSIerに入った後、好きなことをいろいろやって今に至る」(大谷氏)、「ユーザーと直にコミュニケーションを取れるのが楽しい」(松野氏)、「16歳のころに『呪いのページ』というホームページを初めて作って以来、そのままだらだらとこの業界にいる」(古川氏)、「大学生のころにインターネットが立ち上がってきた。やればやるほど応えてくれる感覚がきっかけ」(高井氏)、「きっかけは『ノリ』。営業になるかエンジニアになるかの2択で、プログラムが書いてみたかったのでエンジニアを選んだ。自分のやっていることがダイレクトに返ってくるので、充実している。それが業界にい続ける理由」(湯本氏)、「家庭の事情でお金が必要だった。一番給料が良かったサポートの仕事をし始めたのがきっかけ。その後、2000年問題でサポートの仕事が激務になり、ほかのもっとクリエイティブなことをしたくなって、プログラマになった」(庄司氏)と、人によってさまざまな回答が出された。

左から高井直人氏、湯本堅隆氏、庄司嘉織氏 左から高井直人氏、湯本堅隆氏、庄司嘉織氏

 また、IT業界のよいところとして「コミュニティ」が挙げられ、庄司氏は「『java-ja』というコミュニティをやっている。ひが(やすを)さんと話をしていて、柔らかいJavaコミュニティが欲しいよねというノリでできた。Javaの人とPerlの人はあまり交流が無かったが、松野さんが遊びに来てくれて、交流が広がった。コミュニティに参加するだけでも、広がりができる」とコミュニティの良さについて語った。大谷氏も「コミュニティがなければ、ここに並んでいるメンバーは会うことがなかったと思う」と話し、出会いが増えていくのがいいところだと話した。ただし、高井氏は「業界内で固まってしまう傾向がある」と問題を投げかけると、古川氏も「もっと別の業界の人とも交流したほうがいい」と主張した。

 「経験上、これをやっておけばよかったと思うことや、若いうちにやっておいてほしいことは何か」という質問に対しては、「人にもっと会っておけばよかった」(大谷氏)、「若いうちは人と会って、遊んでほしい」(米林氏)、「人と会って遊んでおきたかった」(山田氏)など、「人と会う」「遊ぶ」という回答が多く出された。

 また、「今後の業界や学生に向けて」として、各自がキーワードと共に、下記のようなメッセージを掲げた。

名前 キーワード メッセージ
山田氏 プロポーズ 仕事を選択するというのはプロポーズするということ。自分を磨き、自分の選択に責任を持つ。
米林氏 力戦奮闘 すべてに対して一生懸命やるのは大変なので、何か1つのこと(例えばプログラミング)に一生懸命になる。
和田氏 作って育てる Web業界は作ることに注目されがちだが、Webサービスで重要なのは、ユーザーを集めて育てること。
大谷氏 自楽自習 IT業界というマクロな視点よりも、個々人が自分の周りをよくするところから始める。自分が楽するために、また自分が楽しむために、積極的に自分から習っていく。
松野氏 面白いことをやろう 自分でいろいろなことができるのがエンジニア。
古川氏 1人の力 Webは1人の力で会社も世界も変えられる。自分の力を信じて欲しい。
高井氏 いのちだいじに 未来とか業界とかを考えても仕方ない。命あっての物種。
湯本氏 未来は作るもの いまやっていることが自分の明日を作る。自分のやっていることを信じる。
庄司氏 一緒に作る未来 IT業界の未来を明るくしていくので、見ていて欲しい。ネガティブなことばかりいっている人のいうことなんて聞かないで、僕らを見ていて欲しい。折角なので、一緒に明るくしていこう。

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