そんなわけで無事、窓際族を卒業した私はアーキ島へ席替え。
「アーキテクチャか……、言葉の響きがすてき」
などとぼんやり浸っていた私。
そこにさっそくMさんから
「これ作って」
とお声が掛かる。
手渡されたのはA4サイズの解読不能な図面、
「何ですか、これ」
と反射的に出た私のあまりに悲しいリアクション。
しばしの沈黙の後、
「あぁ〜〜?!」
Mさんの怒りにも似た悲痛な叫び(語尾上げ調)が部屋全体に響き渡りました(ちなみに、いま思えばあれはクラス図でした)。
そう。実はMさんを筆頭としたアーキチームはコワモテ集団なのです。ヒゲ率も非常に高く、怖いのです(←あくまで主観)。
そして、私は、開発をするのが初めてだったのです。洗い出し作業まではなんとかこなせていたため、これがMさんの最初のカミナリでした。
いよいよ落雷したかとビリビリしつつ、怒りながらもその図面についてすぐに説明し始めてくれたMさんを見て、「ありがたいな」と思いました。
そんな刺激的なスタートを切ったアーキチームでの仕事は、怒とうの知恵熱(文中では、「考えすぎて出る熱」の意味で使用)ラッシュ。
ユースケースにクラス図か、あぁ研修で見たな……。
脳裏をよぎるほんのりとした記憶は、日々のタスクと上司の温かい怒りでかき消され、私は知恵熱をシュッシュと出しながら整合性チェック機能の開発に精を出しました。
考えても考えても答えが見つからなくて、腕組みをして天井をぼんやり見るのが癖になり、周囲からは、
「また天井見てるよ」
と笑われるようになりました。
こうして夢中で作っていた、当たり前のように作っていた、たくさんの機能は、後々「こんなにもコアな部分ばかりだったのか」と実感することとなり、アーキテクチャ領域に携われたことを誇らしく思いました。
こうして開発が進むにつれ、この整合性チェック機能がとあるシステムの一部であることに気付きました。
この「とあるシステム」との出会い。これこそが、私の運命の出会いでした。
とあるシステムは、「管理者ポータル」と呼ばれていて、納品対象のシステムとは別モノです。
実はこの管理者ポータル、Mさんの壮大なビジョンの具現化でもありました。Mさんはカットオーバーが迫るずっと前から、
という目先の目的だけでなく、
を見据え、密かに動き出していたのです。
管理者ポータルには、システム運用をするうえでポイントとなる、
など多数の機能が搭載されていて、納品対象システムを一元管理できる画期的な仕組みとなっていました。システムの全領域を対象とするアーキチームならではの、スケールの大きい発想から生まれたものです。
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