初めは、この管理者ポータルは作業スコープに入っておらず、Mさんが個人的に作っていたようです。
しかし、カットオーバーが見えてきた時期になると、
「今後このシステムを運用、監視していくに当たり絶対必要になる! 必要だと思うから作ってるんだ!」
というMさんの信念のとおり、
「早い時期から着手してくれていて助かった」
とプロジェクト内からの評価と注目度が一気に高まったのです(私が参加したのはこのころです)。
賞賛の嵐の中、Mさんは私に、
「いいか、先を読んで仕事をするって大事なことだ。当たり前のことだけじゃなく、その一歩先っていうのが自分の価値を高めるんだ」
といいました。
私は、Mさんってすごいな、と思うと同時に、私も「先を読んで」仕事に取り組もう、とSEとしての姿勢を決めたのです。
意識し始めても、すぐには管理者ポータルのようなすごい発想は出てきません。
けれど、この意識のおかげで、仕事を頼まれたときには、成果物について「その最終形はどんな感じですか?」と聞き、期待された最終形を少しでも超えるように、もう一歩先を行けるように、仕事に取り組むことになりました。
アーキチームでの経験を語るならば、Nさんの存在も伝えたいです。
NさんはMさんと同じくヒゲのコワモテ上司でしたが、Mさんと違う点は、Nさんはカミナリが発生しない人だということです。
Mさんとともに、最初から一歩先を見て作業をしていたNさんは、
「仕事を楽しくするべし!」
という姿勢を強烈に見せてくれた方です。
私が失敗しても、稚拙な質問をしても、「へへ、まじで?」と笑いながら話を聞いてくれ、一緒にリカバリをしてくれました。
とある日、私が作ったプログラムのミスで、テスト環境のマスタがすべて消えるという惨事が起きました。
私が帰った後の出来事のため、聞いた話から内容を起こすと、
みんな 「あれ? おい。なんだ? マスタ消えてるぞ! だれだ〜〜??」
しばし、原因解析中……。
Mさん 「ん? あ! すいません、うちの檜山ですっ!」
と手を振って大声で謝って、Nさんとともに夜を徹して改修と復旧をしてくれたそうです。
翌朝、その話を聞いた私がNさんのところに行くと、
「へへ、まじ大変だった。けど、しゃーない(笑)」
といってくれました。
Mさんは横で「うむ」とひと言。
2人とも余裕があってこその対応だと思うのですが、この恩を仇で返すようなことがあってはいけない、と奮起したのをいまでも覚えています。
このときの2人の姿を「なりたい上司」として頭に描き、その後自分に後輩ができた際の対応に生かせたこと、2人がプロジェクトを離れたいまも、気に掛けてくれ、相談に乗ってくれることを、本当にありがたく思っています。
やや私信めいた文となってしまいましたが、これが私の運命の出会いです。
大げさではなく、仕事に対する姿勢づくりのきっかけをくれた貴重な経験です。こうしたきっかけがあるからプロジェクトって面白いと思います。
さて次回は、「初めてのスーパーバイザー経験」です。
つまり、いよいよ私が後輩の面倒を見る立場になったときのお話です。お楽しみに。
檜山亜紗美
1982年生まれ。東京理科大学理工学部経営工学科を卒業後、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズに入社。Javaの大規模プロジェクトで開発から運用までを経験、現在はStrategic Delivery Office(社内組織)にて方法論の展開・定着化に取り組む。趣味は幹事(ノンジャンル)。主催から出欠係まで幅広くたしなむ。
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