■仮想マシンの移動と複製
SCVMMは複数の物理マシンを管理することができる。これを最大限活かすという点で紹介したいのが仮想マシンの移動と複製だ。
図のように、SCVMMの管理コンソールを利用することで、Hyper-V 1からHyper-V 2へ仮想マシンを移動させることが可能だ。SCVMMのジョブを確認すると分かるのだが、この際Hyper-V上ではエクスポートとインポートが行われている。
さて、通常の物理マシン間の移動では、ネットワーク上で仮想マシン・ファイルがコピーされることになる。仮想マシンのファイルは小さいとはいえず、ギガビットのネットワークであってもそれなりにネットワーク負荷も時間もかかることを理解しなければならない。ただし、この作業を数秒から数十秒に短縮する環境が作成可能だ。
それは、Hyper-VのQuick Migration機能との連携で実現できる。Quick Migrationの利用では、SANやiSCSIなどの共有ディスクを複数の物理マシンから利用することになるため、物理マシン間の移動作業時にVHDファイルをコピーする必要がない。よって、仮想システムの高可用性(耐障害性)を実現しながら、物理マシンのメンテナンス時に仮想マシンを移動するといった柔軟なシステム運用も可能になる。
ちなみに、この仕組みを利用するには、SCVMMにホストを追加するタイミングでクラスタ(Quick Migration)環境であることを認識させておく必要がある。移動のウィザードは同じものだが、Hyper-Vがクラスタ環境上にあると認識すれば共有ディスクを利用したQuick Migrationを、単体で動作していると認識すればエクスポートとインポートという作業を行ってくれるわけだ。
また、移動についてはもう1つ触れておきたいことがある。それはパススルー・ディスクを利用している仮想マシンの移動についてである。パススルー・ディスクとは、物理ディスクそのものを仮想マシンに割り当てる仕組みなので、かなり物理環境に依存した仕組みである。パフォーマンスを求めパススルー・ディスクにて仮想マシンを稼働していたとして、いずれはほかの物理マシンに移すこともあるだろう。
この場合は、残念ながらパススルー・ディスクのまま移動はできない。そこでSCVMMでは、パススルー・ディスクをVHDファイルに変換する機能を提供している。パススルー・ディスクを利用した仮想マシンのプロパティを表示すると、バーチャル・ディスクに変換するというチェック・ボックスが用意され、可変/固定VHDのどちらも選べるようになっている。どうしてもほかの物理マシンに移動しなければならない場合には、いったんVHDファイル化した後、移動をするということも覚えておくとよい。
■権限委任とセルフサービス・ポータル
SCVMMには、管理者/代理管理者/セルフサービス・ユーザーという3種類のロール設定が可能である。代理管理者とは、特定のホスト・グループやライブラリ・サーバを管理する人を設定するときに利用する管理者であり、基本的に実行できる作業は管理者と変わらない。ここで伝えたいのはセルフサービス・ユーザー・ロールである。このセルフサービス・ユーザー・ロールを利用すると、Active Directoryで管理しているグループやユーザーに対して限定的な仮想マシンの管理権限を割り当てることが可能になる。
画面を見て分かるとおり、仮想マシンの管理といってもさまざまな作業があるわけだが、それらの作業がチェック・ボックス化されているため、「開始とシャットダウンはできるが、(強制)停止やチェック・ポイント作業は許可しない」といった限定的な権限を一般のユーザーに割り当てられる。
さて、権限を割り当てたとしても一般のユーザーがSCVMMの管理コンソールを触ることはないだろう。そこで出てくるのがセルフサービス・ポータルだ。
画面のように、一般ユーザーである山田太郎氏は、セルフサービス・ポータルを利用して自身が所有者となっている仮想マシンをリスト化し、仮想マシンのコンソールを表示して、自身でマシンの管理ができる。ただし、ほとんどの作業を許可されていないため、仮想マシンに接続してOSの設定や管理はできたとしても、強制停止やチェック・ポイントといったSCVMMの管理者が行う作業はグレーアウト化されている。
このように、SCVMMは仮想システム全体を効率的に管理するだけでなく、いままで個別の部隊で管理していたマシンを仮想化することになったとしても、従来のサーバの管理者に権限を委任し、適切な分散管理環境を実現することが可能である。
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