■プロファイルとテンプレートの利用
次はプロファイルやテンプレートを利用した仮想マシンの作成に移ろう。プロファイルとは、仮想マシンを作成する際にウィザードなどで設定をする項目などを、事前に定義しておくものである。プロファイルを利用することで、同じ作業を繰り返さなくて済むだけでなく、設定や処理の標準化にもつながるため、仮想システム管理には欠かせない機能だろう。SCVMMを利用すると、仮想マシンを作成する際に2種類のプロファイルを利用できる。
1つ目の「ハードウェア・プロファイル」では、プロセッサやメモリといった仮想マシンのハードウェア構成を事前に行うことができる。例えば、「パフォーマンス」という名前の付いたハードウェア・プロファイルにはメモリを4Gbytes、プロセッサを4つ割り当てておく。一方、「スタンダード(標準機)」というプロファイルには、メモリを1Gbytes、プロセッサを2つ割り当てておく設定にする。
そして、図のように仮想マシンVHDファイルと、このハードウェア・プロファイルを組み合わせて仮想マシンを作ることで、定型化された仮想マシンが出来上がるわけだ。仮想マシン作成の作業をするのは1人とは限らないわけだが、メール・サーバはスタンダード、データベース・サーバはパフォーマンスを選択するというルールを社内で作っておけば、誰が仮想マシンを作ったとしても同じ設定になり、運用もシンプルになる。
2つ目の「ゲストOSプロファイル」も、ハードウェア・プロファイルと同様、新しい仮想マシンを作る際に利用するが、設定する項目が異なる。ゲストOSプロファイルでは、コンピュータ名や管理者パスワード、ドメインへの自動参加設定など、仮想マシンとして稼働するOSの設定を事前に定義しておくことができる。
実は、このゲストOSプロファイルを利用して仮想マシンを作成すると、自動的にSysprep(コンピュータ固有の情報をリセットする仕組み)が実行されるようになっている。Windowsマシンはコンピュータ固有の情報をSID(Security ID)として持っているため、VHDファイルを単にコピーしただけでは新しいマシンとしてネットワークに参加させられないのだが、この自動Sysprepの仕組みをうまく利用することで、マシンが持つ固有のIDのリセット作業を意識せずに新しいサーバが作れるというわけだ(関連記事参照)。もちろん、Sysprep済みのマシンを再起動した際、コンピュータ名や管理者の設定などが必要になるが、このゲストOSプロファイルを利用することで、Sysprep後の設定を自動化できる。
そのために、コンピュータ名や管理者パスワード、設定自動化のための定義ファイル「Sysprep.inf」の指定やドメインへの参加設定などが項目として並んでいる。このように、ゲストOSプロファイルを利用して仮想マシンを作成することで、新しいサーバを作成する際に必要となる重要な作業までをSCVMMで行える。
なお、さまざまなOSのSysprepを自動化するために、SCVMMのモジュールの中には複数バージョンのSysprep.exeが用意されている。興味がある人は、%ProgramFiles%フォルダ内のフォルダの中を見てみるとよいだろう。
さて、2種類のプロファイルについて説明をしてきたが、これらを組み合わせて利用すれば、さらなる作業の標準化が可能になる。そこで利用するのがテンプレートという仕組みだ。
図では、Windows Server 2008 x64 Standardで作ったVHDファイルをベースとし、スタンダード設定のハードウェア・プロファイルを利用し、ドメインに自動参加させ、OSが起動したときに1度だけ処理を実行するRunOnceのスクリプトが設定されている。複雑に見えるかもしれないが、これらの設定を誰かが事前に行っておけば、作業者はテンプレートを利用して仮想マシンを作成するだけでよい。
いままでのサーバの標準化といえば、メーカーを合わせるとかスペックを同じにしてドライバの管理や作業を均一化するなど、ハードウェアの発注タイミングから意識する必要があったわけだが、仮想化が進むことによって、これらはプロファイルの作成と利用で置き換えることができるようになる。このような運用の標準化や作業の効率化も仮想化のメリットの1つとしてうまく活用していただきたい。
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