不正プログラムの脅威が年々クローズアップされている昨今においては、社員に対するセキュリティ教育の需要も高まっており、不審なファイルはむやみにクリックしないという教育が浸透してきていると感じています。
しかし一方で、ユーザーのクリックによるウイルス感染被害がゼロにならず、企業のセキュリティ管理者を悩ませている事実もあります。この1つの要因として、ユーザーが不正プログラムを“不審なファイル”だと気付かないことが挙げられます。
誰が見ても不審なファイルと見分けられれば、セキュリティ教育を受けたほとんどのユーザーであればクリックしないでしょう。しかし、ウイルス作者もそれを黙って見ているわけではなく、不審なファイルと悟られないようにすべくアイコンを偽装する手法を取った不正プログラムが世に出回っています。
ここで例として、不正プログラムのアイコンがWindows標準のアイコンと同一のもので偽装されていたらどうでしょう。恐らくクリックしてしまうユーザーが数人はいるのではないでしょうか。
セキュリティ関連に従事している人であれば、ファイルをクリックする前に拡張子とアイコンの関連性を確認し、アイコンが偽装されていることを見破れるでしょう。しかし、ウイルス感染の被害に遭うユーザーは、得てして不正プログラムに関する知識が不足している人、また、コンピュータに詳しくない人が多い傾向があります。コンピュータに詳しくない人にファイルの拡張子とアイコンの関連性を確認したうえでファイルを実行しようといってもなかなかできないものです。
今回は、フォルダのアイコンに偽装した不正プログラムを紹介したいと思います。
まずは図3を見てください。ここでは便宜上、フォルダオプションの設定で拡張子を表示していません。また、不正プログラムのファイル名を「WORM_VB.HYB.exe」(ただし、拡張子は非表示)として、本当のフォルダと並べて表示しています。この「WORM_VB.HYB.exe」は実際のウイルスの不正プログラムであり、トレンドマイクロでは「WORM_VB.HYB」として検出いたします。
ここでは不正プログラムのファイル名をウイルス名と同じにしていますが、企業のファイルサーバの共有フォルダ内に、業務に関連しそうな名称でこの不正プログラムが存在していた場合に、皆さんは不正プログラムとして見分けることができるでしょうか。
図4では、フォルダオプションの設定で拡張子を表示するように変更し、表示モードも変更してみました。このように表示形式を変更するだけでも、不正プログラムとして見分けることができるユーザーも増えてくるのではないでしょうか。
フォルダと比較すると、拡張子が「.exe」になっていたり、ファイルの種類が「アプリケーション」となっていたりと違いを確認することができます。コンピュータに詳しい人ならこの状態に違和感を覚え、不審なファイルとして認識できます。
しかし、実際の被害に遭っているユーザーは、コンピュータに詳しくないユーザーが多いのです。Windowsをアイコンなどによって視覚的に直感による操作をしているユーザーにはこれでもまだ不審なファイルとして認識することは難しいでしょう。
このような不正プログラムのアイコンをフォルダに偽装した手口に、どのように対処すればよいのか、Tipsをご紹介したいと思います。
実はこの対処方法の発想はいたって単純なものです。アイコンを偽装する行為では、ウイルス作者が事前に不正プログラムで利用するアイコンイメージをファイル内部に設定する必要があります。そのため、フォルダのアイコンイメージへ偽装する場合には、Windows標準のフォルダアイコンを利用しています。独自のフォルダアイコンにOSをカスタマイズしているユーザーはまれと思いますので、この手口に引っ掛かってしまいます。
裏を返せば、フォルダのアイコンを企業独自のものにカスタマイズしてしまえば、アイコンが偽装されていたとしても不正プログラムを見分けることが可能となるのです。
図5は、弊社のロゴを入れたフォルダアイコンを作成し、Windowsに設定したものです。これならば、「WORM_VB.HYB」が不審なファイルとして見分けることができるのではないでしょうか。事前に社員に対し企業のロゴが入ってないフォルダを見つけた場合には、不審なファイルとしてセキュリティ管理者へ報告するように周知徹底しておけば、ウイルス感染被害を抑えることができます。
すべてのフォルダのアイコンを変更するには、次の手順を実施することで実現できます。
[レジストリキー] \HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\Shell Icons
【注2】
「Shell Icons」キーが存在しない場合には新規に作成します。
例:3 = "C:\Icon\trendmicro.ico" 4 = "C:\Icon\trendmicro.ico"
[アイコンキャッシュファイル] Windows XPの場合 %USERPROFILE%\Local Settings\Application Data\IconCache.db Windows Vistaの場合 %USERPROFILE%\AppData\Local\IconCashe.db
【注3】
キャッシュファイルの削除およびコンピュータの再起動を実施したくない場合には次のマイクロソフト社のサイトで公開しているTweak UIを使用することで、アイコンキャッシュファイルの再作成を行ってくれます。
Microsoft PowerToys for Windows XP
http://www.microsoft.com/windowsxp/Downloads/powertoys/Xppowertoys.mspx
このアイコンを独自にカスタマイズする方法は、ターゲット型トロイの木馬の対応にも応用することができると考えています。特定の企業や団体などを狙うターゲット型トロイの木馬では、ドキュメントファイルのアイコンに偽装した不正プログラムが多いようです。ドキュメントファイルで使用しているアイコンを独自のアイコンに変更しておけば、不正プログラムということを見分ける手助けとなります。
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