米アマゾンの子会社、Amazon Web Services(AWS)は3月12日、従量制クラウドコンピューティングサービス「Amazon EC2」(Elastic Compute Cloud)に新たな割引オプションを料金体系を加えたと発表した。
「予約インスタンス」(Reserved Instances)と名付けられた料金体系は、料金を一括で支払うことで、1年もしくは3年間にわたって従量課金を割り引くもの。例えば、これまで事前支払いや契約なしに1時間当たり0.1ドルで使えていたデフォルト設定のインスタンス(メモリ1.7GB、32ビット環境の1仮想CPU、160GBのストレージ)が、1年間の“利用予約”として325ドルを一括で支払うことで、1時間当たり0.03ドルで利用できるようになる。同様に3年間の予約の場合は500ドルの一括支払いで1時間0.03ドルとなる。
一括の支払い分を入れて平準化しても、1時間当たりの価格はそれぞれ0.067ドル、0.049ドルと、利用予約をしない場合の0.1ドルよりも安くなる。例えばこれまでの料金体系では24時間インスタンスを起動していた場合、1カ月に72ドルかかるが、1年の利用予約で48.24ドル、3年の利用予約で35.28ドルで利用できることになる。ただし、別途データ転送量に応じて1GB当たり0.1ドル(in)、0.17ドル(out)がかかる。
事前支払いをしても、必ずしもインスタンスを起動しなければならないわけではない。ディザスタ・リカバリ用途でインスタンスを予約しておきたい企業ユーザーや、あらかじめ負荷増大が分かっているサービス運営者などは、必要に応じて予約インスタンスを起動、終了することで、割引価格で従量制サービスを利用できる(インスタンスの料金体系)。AWSでエバンジェリストを勤めるジェフ・バー(Jeff Barr氏)はブログの中で、「一括支払い料金をハードウェア購入費用、従量課金を運用コストに似たものと考えてほしい」としている。
この価格オプションで提供されるサービスは、これまでAmazon EC2で提供してきたものと同じ。ただし、現在のところコマンドラインツールによる利用ができるものの、Webブラウザを使った管理コンソール「AWS Console」からは、まだ予約インスタンスの指定ができない。また、利用できるOSもLinuxとOpenSolarisに限られ、Windowsには対応していない。
EC2は、クラスタリングサーバ上にXenベースの仮想化インフラを構築したホスティングサービスで、任意のOSイメージを必要な数だけ自由に起動して利用できる。OSイメージはAMI(Amazon Machine Instance)と呼ばれるバイナリパッケージで提供されており、LAMP環境、Ruby on Rails環境、Windowsサーバ、Oracleデータベースを含む環境などが含まれるイメージが提供されている。2009年2月にはIBMと共同で、DB2、Lotus、WebSphereなどが利用できるAMIも追加、公開されている。
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