前節では、基本となる仮想ディスクの作成方法を通して、ディスク仮想化のプロセスを説明しました。本節ではディスク仮想化のさらなる延長である、特殊な仮想ディスクの作成方法について説明します。
前節で説明した仮想ディスクはある特定のブロックに対して、エクステントへのポインタを1つだけ持っていました。つまり、ある仮想ディスクの容量が160MBで、これを作成した管理対象ディスクグループのエクステントのサイズが16MBならば、この仮想ディスクは10個のポインタを持っていることになります。これに対して、ミラーリングされた仮想ディスクはある特定のブロックに対して、2つの異なるエクステントへのポインタを持っています。つまり前述の仮想ディスクがミラーされると、倍の20個のポインタを持つことになります。サーバから仮想ディスクのある特定のブロックにアクセスがあると、そのブロックに対応するエクステントが2カ所存在することになります。図ミラーリングでは、サーバが仮想ディスクの1番目のブロックにアクセスすると、内部的には管理対象ディスク A1と管理対象ディスク B2の2つのエクステントがアクセスされることを表しています。
ディスクをミラーリングする技術は珍しいものではなく、すでにRAID1として広く使用されています。しかし、ストレージ仮想化技術によるディスクのミラーリングは次のような優位性があります。例えば、2台のディスク装置を使用して異なる管理対象ディスクグループを作成し、1つの仮想ディスクがそれぞれの管理対象ディスクグループのエクステントへのポインタを持てば、仮に1台のディスク装置が電源装置の障害などで停止しても、もう1台のディスク装置のエクステントを使用することで仮想ディスクを継続してアクセスすることができます。ディスク装置の機能でのミラーリングでは、ディスク装置の障害が発生した場合はミラーしていても救うことはできません。図ミラーリングでは、仮にディスク装置Aが障害で停止しても、ディスク装置Bが稼働している限り、サーバは仮想ディスクへアクセスし続けることができることを表しています。
前節で説明した仮想ディスクはその容量と同じ容量分のエクステントが必要でした。例えば、ある仮想ディスクの容量が160MBで、これを作成した管理対象ディスクグループのエクステントのサイズが16MBならば、この仮想ディスクはエクステントへのポインタを10個持っていることになります。これは、予め160MB分のエクステントを確保しておくことを意味しています。これに対して、シン・プロビジョニングされた仮想ディスクは、10個のポインタの領域だけを確保しておき、これらのポインタの値は仮想ディスクの容量が実際に必要になった時点で決定します。つまり、エクステントは実際に必要になった時点で動的に確保します。
この機能により、エクステントをあらかじめ確保せずに仮想ディスクを作成することができます。そして、実際に仮想ディスクにデータを書き込む時点で、動的にエクステントを確保し、仮想ディスクにそのエクステントへのポインタの値を設定します。図10では、仮想ディスクの3、5、8番目のブロックにデータが書き込まれたために、それに対応したエクステントが確保されていますが、それ以外のブロックにはまだエクステントが確保されていない様子を表しています。
SVCでは、このシン・プロビジョニングの機能を持つ仮想ディスクのことをSpace-Efficient VDiskと呼びます。
以上では、ストレージ仮想化の定義や、その有用性を述べ、ストレージ仮想化の仕組みやそのバリエーションを説明しました。次回は、ストレージ仮想化技術の機能を用いた運用や、ストレージ仮想化環境への移行、またストレージ仮想化環境からの移行について説明します。
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