午前は「知識の有無」を、午後は「知識を活用して事例に対処・分析できる応用」を問う試験と明確な意図が見えます。午前・午後ともに、出題範囲にマネジメント・ストラテジ系分野が加わり、ITユーザー・マネジメント系の方も受けやすくなりました。その反面、開発系エンジニアの方は、マネジメント・ストラテジの対策が負担になると思われます。21年春試験では26.1%と高い合格率でしたが、秋試験ではどうでしょうか。
(午前試験)
出題分野 | 出題比率(%) | 出題数 |
基礎理論 | 10 | 8 |
コンピュータシステム | 20 | 16 |
技術要素 | 22.5 | 18 |
開発技術 | 8.8 | 7 |
プロジェクトマネジメント | 6.3 | 5 |
サービスマネジメント | 7.5 | 6 |
システム戦略 | 10 | 8 |
経営戦略 | 7.5 | 6 |
企業と法務 | 7.5 | 6 |
計 | 100 | 80 |
分野ごとの出題構成は、3分野(テクノロジ:マネジメント:ストラテジ)で49:11:20と基本情報技術者(50:10:20)と同程度。4割弱がマネジメント・ストラテジ系ですから、また3分野23中分類のすべてから1問以上は出題されているように知識項目を満遍なく網羅していますので、従来よりも広く総合的な知識が問われていると考えてください。個々の問題を見ると、手間のかかる事例形式・計算問題はそれほど多くなく、用語や手順に関して正確な知識・理解が求められるものが多い傾向です。また新規問題は3割程度、残りは旧試験問題の再出題・改題ですが、ソフトウェア開発技術者だけでなく旧高度試験の過去問題も利用されています(過去に出題した区分ではなく問題のテーマと難易度で選出していると思われる)。難易度は、春・秋試験は同程度、ソフトウェア開発技術者とも大きな差はありません(表3)。
(午後試験)
午後II試験がなくなったことで受験負担は軽減しました。ただし、マネジメント・ストラテジ系問題も出題対象となり、また必須問題がなく全12問から6問選択解答となったため問題選択が重要になります。
出題内容については、テクノロジ系は各分野のオーソドックスな定番テーマでした。必須でなくなったアルゴリズム問題は、春・秋ともに難易度は高くはありません。選択問題として難易度のバランスをとっているかも知れません。ストラテジ系(問1、3)は、前回がマーケティング分析、今回は2問とも会計関連とガラリと変わりました。ストラテジ系分野では、OR・IEが未だ出題されていませんので、今後出題される可能性もあります(決め打ちは危険ですが)。
また、設問構成が、(1)知識を問う穴埋め(答えやすい)、(2)事例考察(条件を読み取る、計算を必要とする)、(3)記述(原因や対策の考察)、と段階化されており、知識の有無から適用まで、スキルがどの程度であるかを測る意図が見てとれます。記述形式の設問は増えており、問題の理解・解答に手間がかかり、各問題とも満点は取りづらいでしょう。難易度は、テクノロジ系は前回と同程度、マネジメント・ストラテジ系は前回よりも高くなっています。ソフトウェア開発技術者と単純比較は難しいですが、求めるスキル・知識はすこし深くなっているようです。
【対策の指針】
(午前試験)
基本情報技術者以上に、マネジメント・ストラテジ系の影響は大きいです。各分野から満遍なく出題されますので、開発系エンジニアの方も、新分野に対応するために「試験要綱」や「シラバス」に目を通して、掲載されている用語の意味は理解しておきましょう。問題演習に際しては、テクノロジ系定番テーマはソフトウェア開発技術者の、マネジメント・ストラテジ系は高度など他区分の過去問題は有用です。新規テーマについては、問題が不足していますので、最新のオリジナル問題を収録した問題集や模擬試験などの利用が望まれます。いずれにしても、幅広く知識を習得する必要があります。
(午後試験)
全分野から出題、全12問が選択問題(6問解答)です。すべての分野を対策学習するのでは効率が悪いですから、これまで学んできた得意分野、業務経験などを基に、あらかじめ選択する問題のパターンを絞り込むべきでしょう。例えば、
テクノロジ系主体:アルゴリズム、システムアーキテクチャ、ネットワーク、データベース、システム開発、情報セキュリティをメイン。組込みシステム開発、プロジェクトマネジメントを予備。
マネ・スト系主体:戦略、戦略、情報セキュリティ、プロジェクトマネジメント、ITサービスマネジメント、システム監査をメイン。システムアーキテクチャ、データベースを予備。
のようにしておけば、本番で難しい問題が出た際に、予備の問題に切り替えがききます。
午後問題は、用語的な知識を問うのではなく、事例問題を通して知識・技術の応用ができるか、深く理解しているかが問われます。限られた時間で問題文を読んで状況を整理し、原因や対策を簡潔に文章にまとめるトレーニングが必要です。問題演習の際には、知識の確認だけではなく、設問で問われている意図を探りながら解答を導くように留意しましょう。
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