転職時に重視すべきは「仕事」か「会社」か転職活動、本当にあったこんなこと(30)(1/2 ページ)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

» 2009年12月09日 00時00分 公開
[山口孝之アデコ]

 転職活動のとき、求人票や転職サイトの求人情報を見ますよね。皆さんはどこからチェックしますか? 会社名、資本金、従業員数、仕事内容、年収・条件面などでしょうか。

 求人票(求人情報)は大抵の場合、大きく分けて企業情報と仕事情報で構成されています。果たして、どちらに着目して会社選びをするべきなのでしょうか。

 今回は、「どんな仕事なのか」を重視して転職活動をした人と、「どんな会社なのか」を重視して転職活動をした人、2つの事例をご紹介します。

仕事内容で転職した人

 知人の紹介で知り合った山田さん(仮名)は、27歳のプログラマでした。中小規模のソフトハウスに就職し、主に製造業向けのシステム開発に携わっていました。山田さんの会社は大手SIer(システムインテグレータ)などから協力パートナーとしてシステム開発の仕事を請け負うことが多く、自社内での開発の多さが魅力の1つでした。

 初めて会ってから2年後、山田さんと再会する機会を得ました。その時、山田さんは筆者に「一度、転職について相談に乗ってもらえないですか?」といってきたのです。

筆者 「山田さんは確か、ソフト開発の仕事でしたよね。まだ続けてらっしゃるのですか?」

山田さん 「実はいま、フリーランスでやっているのです。以前お会いしたときの会社は、山口さんと会ったすぐ後に辞めたんです。フリーランスになってもう2年になります」


筆者 「フリーで活躍されていたのですね。それで、転職の相談というのは、どういうご事情なのですか?」

山田さん 「もう一度、社員として就職したいなと思いまして。いまのままでは、将来が不安というか、フリーランスが思っていたのと違ったというか……」

筆者 「なるほど。まず、なぜ当時の会社を辞めたのか、から聞いてもいいですか?」

 山田さんが所属していた会社は、小さな会社でしたが、客先に常駐するスタイルではなく、自社内で開発環境を用意し、可能な限り持ち帰りで仕事ができる会社でした。社員同士の仲も良く、人間関係も良好で、仕事は楽しかったようです。しかし、山田さんは退職してしまいました。山田さんが感じていた課題とは何だったのでしょうか。

 話を聞くと、問題は「顧客との距離」だったそうです。大手企業からシステム開発の一部を自社開発で請け負う会社だったので、ユーザーとの接点に乏しかったのです。自身のキャリア形成上、この点を不安に思っていた、と山田さんは教えてくれました。

 そんなときに仕事で知り合ったフリーエンジニアの方に、「フリーになれば仕事が選べる」といわれ、一大決心でフリーランスに転身したとのことでした。

筆者 「フリーになってみて、どうだったのですか?」

山田さん 「最初は良かったのです。仕事を斡旋(あっせん)してくれる会社があって、そこではいくつかの仕事を紹介されました。その中で大手流通系企業の情報システム部門に常駐して基幹システムの運用をする仕事を選びました。仕事内容は思ったとおりで、運用といってもカスタマイズで開発をすることが多く、ユーザー部門との打ち合わせや外注管理も、メインではありませんでしたが、経験することができました」

筆者 「良かったではないですか。思ったとおりの仕事だったのでしょう」

山田さん 「でも、その仕事は長く続きませんでした。その会社ではプロパー社員の不足から、新人社員が仕事を覚えるまでの間、フリーエンジニアを雇うっていう趣旨だったみたいで。半年間の契約が切れると、別の仕事を探さなくてはならなくて……」

筆者 「それで、仕事は見つかったのですか?」

山田さん 「はい。同じくユーザー企業の社内情報システム部門とか、業務ソフトの会社なんてのもありました。でも最近は不景気で、仕事を選んでもいられなくなりまして……。それに……」

筆者 「それに、何ですか?」

山田さん 「いまのままで、思うようなキャリアを歩めるのかが心配で。わがままかもしれませんが」

 確かに、「顧客と接点を持てるような仕事がしたい」という山田さんの希望に沿った仕事ができていました。しかし2年がたち、フリーでは重要な役割を担えなかったり、責任のある仕事に就けなかったりすることに不安を感じるようになってきたのだそうです。

筆者 「分かりました。じゃあ今後は、どのような仕事をしていきたいのか、直近と5年後に分けて話をしていきましょうか」

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