主要サーバ仮想化ソフトウェアであるVMware Infrastructure 3の後継バージョン、「VMware vSphere 4」が登場した。「クラウドOS」をうたい、基本機能を大幅に強化するとともに、重要な機能追加を行った。本連載では、このvSphere 4の主要機能を解剖する
VMwareではシステムの可用性を高めるためのアプローチとして、これまでにも さまざまな機能や製品を提供してきた。物理マシン故障時の フェイルオーバ機構を提供する「VMware HA」、バックアップ業務を効率的な方法で支援する「VMware Consolidated Backup」、効果的な ディザスタリカバリ・ソリューションを提供する「VMware vCenter Site Recovery Manager」などが提供されてきた。「VMware Fault Tolerance」(以下VMware FTと略記)も、可用性を高めるための機能の1つという位置付けで提供されている。本稿ではまずVMware FTの概要と構成方法を紹介する。また、後半ではVMware FTの 仕組みについて技術的な面から解説する。
VMware FTは、物理マシンの故障時における仮想マシンの継続性を実現する機能である。可用性を高める機能として、VMware Infrastructure 3よりVMware HAと呼ばれる機能が提供されているが、故障時の リカバリ方法は仮想マシンをパワーオンからやり直すというものであるため、サービスが回復するまでには一定の時間を要し、またネットワークコネクションなどは継続することができないという制約がある。一方VMware FTは、ホストとなっている物理マシンに故障が発生しても、仮想マシンの実行はそのまま継続されるという特長を 持つ。メモリ上のデータも含め、データロス は発生しない。故障発生時に実行中であったトランザクションやコネクションなども、全て維持される。FT専用に設計されたハードウェアを必要とすることなく、現在市場に流通している一般的なx86サーバ上に、FT化された仮想マシンを構築することができる。
VMware FTを有効化した仮想マシンは、内部的にはプライマリ仮想マシン、セカンダリ仮想マシンのペアにより構成される。仮想マシンの利用者はプライマリ仮想マシンにアクセスし、サービスを利用する。プライマリ仮想マシンが動作中の物理マシンに故障が発生すると、セカンダリ仮想マシンが即座にプライマリ仮想マシンとなり、以降の処理を継続する。このため利用者は物理マシンの故障の影響を受けることなく、サービスを利用し続けることができる。また故障発生後、その仮想マシンは一時的にセカンダリが存在しない状態、つまりVMware FTで保護されていない状態で動作することになるが、システムは自動的にセカンダリ仮想マシンを別の健全な物理マシン上で作成し、同期をとる。このため、その仮想マシンはVMware FT機能で保護された状態まで自動的に再構成される。
VMware FTは、現在市場に流通している一般的なx86サーバと共有ストレージ装置の組み合わせで実現することができる。同一環境上に、通常の仮想マシンとVMware FTで保護された仮想マシンを同居させることができるため、用途や重要性に応じて柔軟な設計を行うことができる。
先述の通りVMware FTは特別なハードウェアを利用することなく仮想マシンのFT保護を実現することができるが、構成する上で幾つか要件や留意点が存在する。以下がその要件である。
それでは個々の条件について解説する。
技術的詳細は後述するが、VMware FTを利用するには物理マシン側が適合するCPUを搭載している必要がある。VMware FTの利用がサポートされるCPUとしては、本稿執筆時点では以下が存在している。
Intel Xeon based on 45nm Core 2 Microarchitecture カテゴリ:
- Xeon 3100 シリーズ
- Xeon 3300 シリーズ
- Xeon 5200 シリーズ
- Xeon 5400 シリーズ
- Xeon 7400 シリーズ
Intel Xeon based on Core i7 Microarchitecture カテゴリ:
- Xeon 3500 シリーズ
- Xeon 5500 シリーズ
AMD 3rd Generation Opteron カテゴリ:
- Opteron 1300 and 1400 シリーズ
- Opteron 2300 and 2400 シリーズ
- Opteron 8300 and 8400 シリーズ
最新情報はhttp://kb.vmware.com/kb/1008027で確認できる。また、Intel VT-xもしくはAMD-Vが必須であるため、BIOSで有効化しておく必要がある。
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