FTログの大半はプライマリVMに対するInput情報が占めるため、Input量が多い用途の仮想マシンの場合、FTログのバンド幅も大きなものとなる。仮想マシンの場合、Inputの大半はネットワークからのデータ入力と、ディスクからのデータ読み込みである。他にタイマーイベントなどもInputとして処理されるが、データ量という観点ではネットワーク受信とディスクReadが占める割合が大きい。
FTログのバンド幅の概算は、以下の式で見積もることができる。
FTログのバンド幅=(ディスク読み込みデータ量+ネットワーク受信データ量)× 1.2
1.2倍しているのは、TCP/IPのオーバーヘッドやタイマーイベントの転送などを考慮しているためである。
入力データ量が多い仮想マシンに対してVMware FTを有効化する場合、FT Loggingインターフェイスのバンド幅がボトルネックとなる状況を考慮しなければならない。これに対応する方法は2つある。1つはFT Loggingインターフェイスに10GbEアダプタを割り当てる方法、もう1つはディスクからの読み込みはFTログで転送せず、セカンダリVMに実際に読み込みを行わせるモードで動作させるという方法である。
10GbEアダプタを利用する方法は、10GbE対応のアダプタやスイッチなど、ハードウェア側の準備が必要となるが、比較的シンプルにFTログの帯域を確保することができる方法である。ブレード型サーバなでは10GbEアダプタ利用の敷居が低くなりつつあるため、今後の一般化が期待されている。
ディスクReadのデータはFTログとしては転送せず、セカンダリVMにもディスクReadを実行させるという方法は、ディスクReadのデータ量が大きい仮想マシンでは、このモードを有効化することで性能の向上を期待できる。ただし、ストレージ装置によっては複数イニシエータからのReadに対する性能が高くない機種も存在しているため、この動作モードにすることで常に性能が向上することを保障できない。このため、デフォルトではディスクReadはプライマリVMのみが実行し、そのデータをFTログとして転送する動作モードで動作するようになっている。動作モードを切り替えるには、該当仮想マシンの .vmx ファイルに以下の行を追加する。
replay.logReadData = checksum
詳細はhttp://kb.vmware.com/kb/1011965で解説されているため、参照していただきたい。
最後に、VMwar FTを利用する上でのベストプラクティス、推奨構成などについて紹介する。
プライマリVM、セカンダリVMが動作するホストのCPUクロックの差を400MHz以下にすることが推奨されている。セカンダリVMの性能があまりに低いと、プライマリVMの性能に影響を与える場合があるため注意する。また、ホストのBIOS設定をホスト間で共通にしておく。
クラスタ内のホストのCPUは、同一カテゴリとなるよう構成しておく。またESXのパッチレベルも同一にしておく。データストア、ネットワークへの到達性に関しても、ESX間で差がないように構成しておく。クラスタあたりのホスト数は3以上を推奨する。
単一物理マシン上で、複数のFT仮想マシンを動作させる場合は、FT Loggingインターフェイスのバンド幅に注意する。FT Loggingインターフェイスの帯域がボトルネックになっているようであれば、10GbEの利用を検討する。
仮想マシンのCD/DVDデバイスは、共有データストア上のISOファイルを利用する構成で利用する。
仮想マシンの特性にも依存するが、初めは4個以下で利用を開始し、ログのバンド幅を観察しながらFT仮想マシンの数を加減することが望ましい。
共有ストレージ装置にiSCSIやNFSなどのIPストレージを利用する場合、アクセスには専用の物理NICを用意することが望ましい。
VMware FTが有効化された仮想マシンは、定義されているメモリサイズ分のメモリリザベーションが構成される。
単一FT仮想マシンに構成する仮想ディスク数は、16個以下にすることが望ましい。
最近のLinuxディストリビューションは Clock Tick = 1000Hz でカーネルが動作するものが多いが、FTログの効率を考慮した場合 Clock Tick = 100Hz で動作させることが望ましい。現在はdivider=10 というカーネルパラメータをブート時に指定することで 100Hz で動作させることができるディストリビューションが多いため、基本的にはこのパラメータの適用が推奨されている。
今回はvSphere 4の新機能であるVMware Fault Toleranceについて紹介した。制約はあるものの、一般的なx86サーバを組み合わせることで仮想マシンのフォールトトレランスを実現できる、画期的なテクノロジーと言える。性能へのインパクトも低く抑えられており、現実的な値が得られている。VMware FTのアーキテクチャと性能に関するテクニカルペーパーが公開されているため、興味のある方はぜひご一読いただきたい。
次回はVMwareが提供するバックアップ/リストア機能、VMware Data Recoveryについて紹介する。
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