ライブ・マイグレーションの運用フェイズで役立つノウハウを解説。実用的なPowerShellスクリプトなども紹介する。
これまで第1回 Hyper-V 2.0のライブ・マイグレーションの基礎知識、第2回 Hyper-V 2.0のライブ・マイグレーション設計のポイント、第3回 Hyper-Vライブ・マイグレーションの構築手順と、3回にわたってHyper-V 2.0ライブ・マイグレーションを解説してきた。今回は、本連載の最終回として運用フェイズで役立つライブ・マイグレーションの勘所を紹介する。
ライブ・マイグレーションやクイック・マイグレーションは、管理者が実行を指示して初めて処理が開始される「手動実行型」のオペレーションである。しかし、実際の運用では手動だけではなく、自動的に処理してほしいケースがあるだろう。
実際の運用シーンに例えるなら、Hyper-Vホストの障害が想像しやすい。ハードウェア障害などでHyper-Vホストが突然ダウンしてしまうと、その上で動作していた仮想マシンもすべてダウンしてしまう。そのホストで10台の仮想マシンが動作していたら、10台分の業務サービスが停止してしまうわけであり、ユーザーからは一刻も早い復旧が望まれることになる。障害は夜間に発生することもあるため、管理者は相当なプレッシャーを強いられてしまうだろう。従って、実運用ではこのような突然のホスト・ダウンに自動で対応するHA(High Availability)機能の導入が求められる。
■仮想マシンのHAフェイルオーバー
実はライブ・マイグレーション環境、つまり仮想マシンを「Windowsフェールオーバー・クラスタ(WSFC)」で管理している場合、Hyper-Vホストがダウンしても、自動的に仮想マシンを別ホストで再起動してくれる機能が備わっている。VMware HAやXenServer HAと同じ「仮想マシンのHAフェイルオーバー」機能だ。他製品のように特別な名称は付けられていないが、仮想マシンのHAフェイルオーバー機能はHyper-V 1.0からきちんと対応されている。
但し、ライブ・マイグレーションと違い、実行中だったアプリケーションはホスト・ダウンによって途中で強制終了されているため、突然の電源断が発生した場合と同様にデータのロスやロールバックを引き起こす可能性もある。
■仮想マシンのハートビート
Hyper-VのHA機能はこれだけではない。アプリケーションの不具合などでゲストOSがハングアップしてしまった場合、その仮想マシンを自動的にリセットしてくれるハートビート機能にも対応している。
この機能は、ホストが各ゲストOS上で動作している「Hyper-V Heartbeat」サービスと疎通できなくなった場合に、WSFCに通知して疎通不可となった仮想マシンを強制リセットするものだ。仮想マシンはリセット・スイッチを押された状態となり、同じホスト上で強制再起動が行われることでハングアップの解消を試みる。
ハートビート機能はライブ・マイグレーションを利用できる環境の場合、仮想マシン・リソースのプロパティ画面の[仮想マシンでのハートビート モニタリングを有効にする]にチェックを入れるだけで利用可能だ。
管理者の運用負荷を抑えるこれらの機能は、第3回で説明したライブ・マイグレーションとまったく同じ手順でセットアップする。つまり、ライブ・マイグレーション環境を構築するだけで、同時に下記についても実現できるということだ。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.