面接も同様です。企業側は、具体的な数値ではなく、本当に感動したことを素直に伝えてほしいのではないでしょうか。もちろん、どんな内容であっても、話している様子から熱意は伝わりますが、面接官は就職活動で何十人〜何百人と面接をします。熱意だけでは、面接官には印象づけるのは難しいかもしれません。
確かに、いまの時期は「求人が出ている限られた企業から選ばないといけない」という、切迫した気持ちがあるでしょう。しかし、いくつもある企業から「この会社を受けたい」と思うきっかけは、どの学生に聞いても「まったくの偶然」とか「本当にどこでもよかった」ということはあまりないようです。つまり、その企業を選択した時点で、どこかで魅力を感じているはずなのです。その魅力や、若者らしい感動をぜひ言葉にしてほしいと思います。
「入社できるならどこでもいいから」という気持ちがあるのは理解できます。しかし、その志望動機を正直に伝えるわけにはいきません。また、よく考えてみてください。本当にそれが「志望動機」なのでしょうか。その企業に何らかの魅力を感じているから、数ある企業からその企業を選んだのではないでしょうか。
面接では、感動したままを言葉にしてみましょう。そのうえで、書いてまとめてみましょう。企業が作る商品への感動、社員に触れ合った時の感動、企業が歩んできた歴史への感動……。何に感銘を受け、自分は何に貢献したいのか。その部分を軸として考えたうえで、もう一度自分の長所を振り返るといいでしょう。
「企業が商品を開発する技術」と「自分の研究内容」で合う部分はないか、「仕事で求められる態度」と「研究するときの態度」で共通点はあるか、「商品センスを追求する企業の体質」と「自分の趣味や価値観」がどう重なるか……。このような観点で自分の長所を洗い出し、「自分の特性を企業のために役立てたい」とアピールするといいでしょう。
もう、就職成功本や周りの人のまねをするのはやめましょう。誠実に自分の言葉で語ったとき、たとえ格好悪くても破れかぶれでも、伝わるものはあるはずなのです。堅くなりすぎず、手を抜かず、しっかり準備して頑張ってください。
松浦 慶子
臨床心理士・日本カウンセリング学会認定カウンセラー。
国際基督教大学心理学科卒業、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻修了 。大学、専門学校での学生相談や講師、精神科睡眠障害外来での医療相談、EAP機関・ピースマインドにて社員や家族のカウンセリングなど、幅広く相談活動を行っている。
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