あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。
前回の『エンジニアの不死身力』は、「環境のせいにしない。できることから始める」というお話でした。外部要因に振り回されず、エンジニアの仕事を楽しむために、「目の前で起きていることに向き合うこと」「自分自身に問い掛け、自分の頭で考えること」「いまの自分にできる小さな行動を起こすこと」。そして、小さな行動の例として、「自分の気持ちや、身に付けた技術をブログにアウトプットしてみるのもいい」というお話をしました。
これまで「よし、ブログを書いてみよう! 長く継続するぞ!」とお考えになったことがある人は多いと思います。けれども、いざブログを書こうと思ったとき、
という考えが頭の片隅に浮かんでしまい、尻込みしてしまう人は少なくないでしょう。
アウトプットには、多くのメリットが存在します。また、無理なく上手にアウトプットするポイントを押さえれば、継続的にアウトプットすることは難しくありません。
今回は、エンジニアの仕事を楽しむために、アウトプットをすることのメリットと、そのポイントについて考えてみたいと思います。
アウトプットには、さまざまなメリットがあると著者は考えています。その一例をご紹介しましょう。
同じ体験をしても、1のことしか気付かない人もいれば、10のことを気付く人もいます。「毎日ブログを書ける人は、さまざまな記事のテーマに気付くから書けるんだ」「よく毎日書くテーマがあるな。毎日刺激があるわけじゃないし、自分には絶対に無理だな」――そう思うかもしれません。
でも実は、アウトプットをたくさんできる人は、「気付いたから書いている」のではありません。「毎日書いていると、気付けるようになる」のです。気付くことよりも、書くことのほうが先なのです。
アウトプットをするようになると、「今日のブログは何について書こうかな?」という自分自身へ問いかけが無意識に起こります。その結果、電車の中の広告や新聞、インターネット上の記事など、日常の生活の中で、「あっ、そうだ! これはブログのネタになりそうだ」というさまざまな気付きが起き始めます。
アウトプットを継続することで、気付く力はさらに強化できます。
「あっ、そうだ!」という気付きがユニークなほど、「誰かに教えたい」という気持ちが生まれ、アウトプットも楽しくなってきます。
日常の中からたくさんのことに気付けるようになるとはいえ、書きたい内容がすぐに思いつくわけではありません。時には、書きたいテーマはあるけれど、文章にするのが面倒くさいということもあると思います。
定期的に書き続けるには、それなりの努力も必要です。
ここで逆に考えてみましょう。書き続けられれば、第三者に向けて「継続する力」や「やり遂げる力」を持っていることを示せます。内容が高度だったり、分かりやすくまとめられたりしていれば、「情報力」や「スキル」を持っている証明にもなります。そうして、あなたへの信頼につながっていきます。
「スキルはまだ自信がない」という人でも、「今日はここまでできた」という記録を残していけばいいのです。いま、できないことが、少しずつできるようになり、成長していく。そういう姿に、周りの人は信頼を覚えるのですから。
書き続けることが習慣になってくると、「毎日書ける自分」や、「さまざまな気付きが起きる自分」に成長感を抱きます。
過去の記事を読み返すと、「以前はこんな恥ずかしいことを書いていたのか……」と思うこともありますが、これは以前よりも自分が成長したことを意味しています。
「前よりも、少し成長したな……」という意識は、仕事を楽しむ上で大切な要素の1つです。
アウトプットとは、「頭の中にあることを言葉で表現する」ということですね。アウトプットを繰り返すことで、人に伝える力が身につきます。
エンジニアであれ、コンサルタントであれ、マネージャであれ、自分の考えを周りの人に伝える力は、仕事のさまざまなシーンで役立ちます。
筆者はいま、PCのモニタを見て、アウトプットしたこの文章=自分の考えを目にしています。また、音読しながらこの文章を書いています。つまり、文章を書くということが、五感を通じて何度も自分の考えに触れ、自分自身と向き合うことにつながっているのです。
アウトプットした自分の考えを客観的に眺めてみると、「なんだか、本当にいいたいこととは違う」「もっとうまい表現があるはずだ」という気持ちを抱くことがあります。何度も書き直して違和感がなくなると、自分の考えに自信が持てるようになるでしょう。
アウトプットを繰り返すことで、自分だけのオリジナルコンテンツができます。1回に書く内容は原稿用紙1枚分ぐらいの内容かもしれませんが、それを1年続けると、300以上のコンテンツになります。
ある程度記事がたまったら、タイトルや内容をまとめて整理してみると、自分が得意な分野や、不足している視点が見えてきます。それが、新たに文章を書くきっかけにつながります。
アウトプットを繰り返していると、自分の考えに共感し、コメントをくれる人が出てきます。
「自分の文章を読んでくれる人がいる」――ファンの存在は、文章を書き続ける動機付けにつながります。
インターネットがない時代、一個人が多くの人に自分の意見を知ってもらうチャンスはなかなかありませんでした。ましてや、筆者のように地方に住んでいれば、なおさらです(筆者は現在、新潟に住んでいます)。
けれども、インターネットが登場してから、そのチャンスは誰もが平等に得られるようになりました。
筆者が『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』という本を出版できたきっかけは、筆者が書き続けていたメールマガジンを、出版社の編集者が読んでくれたことでした。「なぜ、こんなボクに本を出版する機会を与えてくれたのだろう」――疑問に思い、編集者に理由をメールで尋ねてみました。
編集者の答えはこうでした。
こうして、本の著者となるチャンスをつかんだ人は数多くいます。
アウトプットを続けることは、さまざまなチャンスをつかむきっかけになります。
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